【胸部】TIPS症例36
【症例】70歳代男性
【生活歴】喫煙 20本/日 50年(20-70歳)
画像はこちら
両側肺野にどんな所見がある?
まず胸部レントゲンから見ていきましょう。
肺の下縁と第7前肋骨の交差(正常だと第6前肋骨と交差する)があり、過膨張が疑われます。
また横隔膜のやや平坦化を認めています。
これらは肺気腫を示唆する所見です。
次にCTを見てみましょう。
CTでは両側肺にかなり広範な気腫性変化を認めています。
小葉中心性の気腫性変化と言うよりは、小葉全体が気腫に陥っている汎小葉性の肺気腫の状態です。
その目で見ると、両側上葉の前側から側面にかけてやや傍隔壁型肺気腫を疑う連続した気腫性変化を認めています。
つまり、
- かなり進行した小葉中心性肺気腫
- 傍隔壁型肺気腫
を両側に認めているということになります。
これらはこれまでの症例で見てきたように喫煙に関与し、上葉優位に認めることが多いのでした。
ただし、今回の症例では上葉のみでなく、全肺野に広範に気腫性変化を認めており、かなり進行していることがわかります。
気管支壁肥厚も軽度認めています。
診断:高度肺気腫(進行した小葉中心性肺気腫+傍隔壁型肺気腫)
※呼吸機能検査にて、1秒率 FEV1%=41.57% <70%であり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断され、投薬されています。
処方内容
- テオロング錠100mg 2T分2
- アドエア250ディスカス1日2回吸入
- スピリーバ2.5μg レスピマット 1日1回吸入
関連:COPD(慢性塞性肺疾患)のCT画像診断のポイントは?
その他所見:特になし。
【胸部】TIPS症例36の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
動画が見当たりません…
すいません、追加しました。
「進行した小葉中心性肺気腫+傍隔壁型肺気腫」=汎小葉性肺気腫と考えて良いのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
ほぼイコールでよいと考えますが、汎小葉性になると小葉中心性や傍隔壁型とは認識できないケースも多いと思います。
さすがにここまで派手な所見だと、私でも高度な肺気腫性変化ありと指摘できました。基本的には治らないと思うと辛いですね。
アウトプットありがとうございます。
派手だと気づけることが大事ですね。
ちょっとした傍隔壁型肺気腫や、小葉中心性肺気腫を「肺気腫」とレポートに記載するのはちょっと気が引けます。
そこで「軽度気腫性変化あり」などと記載しますが、今回の症例まで来ると「肺気腫」と書いて問題ないですね。
レントゲンを見て、何となーく、血管陰影がすごく目立つなと思い(下肺野と上肺野の血管陰影のにぎやかさに差がないように見える)、CTを見て、”あ!やっぱり血管陰影が目立つじゃん”と鮮やかに誤読しました。。(悔しいです。。orz)
前にたくさん症例を見たので、せめてCTで”この部分的な肺の低吸収域は肺気腫だ!”と指摘したかったですね。
レントゲンは、異常のないものの中に、血管陰影が目立って白っぽく見えるものから、あまり目立たなくて黒っぽいものまであり、何が原因なのだろう?と思います。(線量は適切だと判断しました。WLやWWが原因なのでしょうか?)
下の参考文献を読むと、”気腫性変化の強い部分では、血管影の狭細化と透過性亢進を見る”そうです。
その眼でもう一度レントゲン写真を見ると、気腫性変化の強かった右下肺野では確かに血管影の狭細化と透過性亢進がありそうです。
あとは、横隔膜の低位かつ平低化等から総合的に判断する必要がありそうですね。。
つくづくレントゲンって難しいなと思いました^^;
参考:
http://www.obayashihp.or.jp/kakuka/pdf/kensi_series4.pdf
アウトプット&補足ありがとうございます。
添付いただいたpdfすごいですね。
多くの肺気腫は上肺野優位でありと記載がありますが、今回はかなりびまん性に気腫性変化を認めている症例ですね。
今回は汎小葉中心性肺気腫+傍隔壁型肺気腫でした。
49/126で両側のブラも合併かとも思いましたが、これは傍隔壁型肺気腫と判断していいのですか。
アウトプットありがとうございます。
同部は確かに肺気腫が進行した結果のブラと表現してもよいと考えます。
いつもありがとうございます。
このような気腫肺では肺野で高吸収の線状のものが目立ちますが、すべて血管陰影で良いのでしょうか。
また、目立つのは気腫の影響で相対的に目立つだけなのでしょうか、何か組織的に血管にも形態変化が起こっているのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>肺野で高吸収の線状のものが目立ちますが、すべて血管陰影で良いのでしょうか。
ではなくて、破壊され癒合した肺胞隔壁も見ています。
血管陰影は追えば中枢側の肺動静脈と連続しています。
>目立つのは気腫の影響で相対的に目立つだけなのでしょうか、何か組織的に血管にも形態変化が起こっているのでしょうか?
COPDに肺高血圧を伴うことがあり、その場合は肺動脈近位部の拡張や右室拡大を認めることがあります。