【胸部】TIPS症例20
【症例】80歳代男性
アスベストばく露の職業歴あり。
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胸部レントゲンでの異常所見とその正体は?
まず胸部レントゲンから見ていきましょう。
すると、両側の中肺野、傍椎体領域や横隔膜穹隆部(ドーム部)に濃度上昇を認めており、骨のように濃度が高く、一部で索状の形態を示していることが分かります。
こういった所見を見たときには、肺内に病変があると考えるのではなく、胸膜に石灰化があるのではないかと考えることが重要です。
また肺気腫傾向にあり、両側の肋骨横隔膜角が鈍化しています。
次にCTを見てみましょう。
するとやはり肺野に腫瘤影や浸潤影が存在するのではなく、胸膜に石灰化があることがわかります。
石灰化のみでなく、局所的な胸膜肥厚を傍椎体領域や中肺野領域に認めています。
そして、その石灰化は肥厚している胸膜のうち外側(すなわち壁側胸膜側)に認める傾向があることがわかります。
また石灰化は、横隔膜穹隆部にも認めていることがわかります。
アスベストばく露歴があり、このような所見を認めた場合に考えなければならないのが、アスベストによる胸膜病変である胸膜プラークです。
診断:(両側)胸膜プラーク
※肺野に軽度線維性変化も認めています。また右下葉肺底部S8にやや壁の厚い嚢胞を認めていますので、r/o LKとしてフォローが必要です。(フォローで壁肥厚は消失しました。)
胸膜プラークは以下の部位に好発することが知られています。
すなわち、
- 肺の真ん中周囲
- 椎体のまわり(傍椎体)
- 横隔膜穹隆部(ドーム部)
に好発します。今回もこれらの好発部位に合致していますね。
また胸膜の石灰化ですが、肥厚した胸膜のうち
- 胸膜プラーク→外側(壁側胸膜)
- 結核性胸膜炎→内側(臓側胸膜)
に認めやすいことが知られています。合わせて押さえておきましょう。
【胸部】TIPS症例20の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
結核も胸膜病変が多いイメージがありますが、胸膜の石灰化する場所が違うのですね。細かいことですが重要な所見だと思いました。
アウトプットありがとうございます。
>結核も胸膜病変が多いイメージがありますが、胸膜の石灰化する場所が違う
そうなんです。
石灰化が厚い場合や胸膜肥厚が目立たない場合はどちらかわからないこともしばしば分かりますが、どっち寄りかわかれば診断に役立ちますね。
好発部位 spareされやすい部位 結核との鑑別(胸膜プラーク→外側(壁側胸膜)結核性胸膜炎→内側(臓側胸膜))がすごく勉強になりました。『肺尖はなぜか強烈な石灰化になりにくいな』と感じ、アスベスト被塵歴ない人なら一番石灰化になりやすいのになと思っていたのですがその傾向があるのですね。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>好発部位 spareされやすい部位 結核との鑑別(胸膜プラーク→外側(壁側胸膜)結核性胸膜炎→内側(臓側胸膜))がすごく勉強になりました。
私も最初にこれを知ったときは目から鱗が落ちました。
是非鑑別にお役立てください(^^)
今回のような所見を認めた場合、(曝露からの年数を加味して)肺癌や中皮腫のリスクがあるため、細かい所見にまで気をつけなければいけないということですね。
アウトプットありがとうございます。
>肺癌や中皮腫のリスクがあるため、細かい所見にまで気をつけなければいけないということですね
おっしゃるとおりです。
肺結節などが出てきたら通常よりもリスクが高いので期間を短くして要フォローですね。
胸膜プラークは見たことがありませんが、分布に差があるとは知りませんでした。勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
>胸膜プラークは見たことがありません
ありませんか。稀なものではないので、多分救急をやっていたら少しは見ていると思います。
わからないものもありますが、石灰化の分布に着目してみてください。
いつもありがとうございます。
気管支壁がやや厚いように思います。
嚢胞もあるので アミロイドーシスの 合併などは 疑う必要はないでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるようにやや気管支壁肥厚があります。
ただ、これと嚢胞でアミロイドーシスは積極的には疑いません。
こんばんは。
いつもご解説ありがとうございます。
本日は胸部X線のだいたいの所見を同定することができました。
ESPRESSOのおかげで上級医の画像所見のディスカッションにすっと入り込めて大変助かっています!
おはようございます。
>本日は胸部X線のだいたいの所見を同定することができました。
よかったです。派手な所見があるので、肺内病変かと思ってしまいがちですが、陰影が濃いのが特徴的ですね。
>ESPRESSOのおかげで上級医の画像所見のディスカッションにすっと入り込めて大変助かっています!
それはよかったです(^^)
勉強になりました。壁側胸膜か臓側胸膜に石灰化があるかで、鑑別の一助になるのですね。
良性石綿胸水という言葉も初めてしりました。あるサイトを見たら、良性だけどフォローしてね、と書いてました。
良性という名前が紛らわしいですねw
アウトプットありがとうございます。
>あるサイトを見たら、良性だけどフォローしてね、と書いてました。
良性という名前が紛らわしいですねw
胸水を認めると常に悪性の可能性も考える必要があり、
悪性胸水の除外が必要となるので、良性石綿胸水と呼ばれますね。
肺野病変の濃度を肋骨と比べてみる、というのは基本的なことでしょうが、わかりやすいことでした。
プラークと石灰化は同意語でしょうか。所見を記載するときは、「胸膜プラークがある」、「胸膜に石灰化がある」どちらでもよろしいでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>プラークと石灰化は同意語でしょうか。所見を記載するときは、「胸膜プラークがある」、「胸膜に石灰化がある」どちらでもよろしいでしょうか。
プラークは石灰化を伴うこともありますが、伴わない場合もありますので同義ではありません。
>所見を記載するときは、「胸膜プラークがある」、「胸膜に石灰化がある」どちらでもよろしいでしょうか。
アスベストばく露歴がある場合は胸膜プラークがあると記載で大丈夫ですが、はっきりしない場合は胸膜肥厚、石灰化と表現した方が無難ですね。
少し今回の趣旨からずれてしまいますが、びまん性胸膜肥厚と胸膜プラークというのはどのようにして画像で判別するのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
厳密な鑑別は難しいこともありますが、
・今回のように厚みがある場合は石灰化の部位
・胸膜肥厚が起こっている部位
・不整な結節、壁肥厚の有無→あれば悪性胸膜中皮腫など
・葉間胸膜に沿った結節の有無→あれば胸膜播種など
を考えます。