【胸部】TIPS症例11
【症例】70歳代男性
【現病歴】1年前に胃癌で当院で手術(腹腔鏡下幽門側胃切除(B-1再建))を受けている。フォローのCTを撮影。
画像はこちら
縦隔リンパ節腫大がある?ない?
造影CTが撮影されています。縦隔条件を見てみましょう。
すると、縦隔で気管の腹側にいびつな形の低吸収域を認めています。
リンパ節腫大でしょうか?
違いますよね。
これは、症例10でみた上心膜腔への心嚢液貯留を疑う所見です。
次に、少し尾側のスライスを見てみましょう。
すると、先ほどとは濃度が異なりやや高吸収な扁平な形の結節を認めています。
これも、上心膜腔への心嚢液貯留でしょうか?
違いますね。
これは液貯留ではなく、濃度も高くリンパ節腫大が疑われます。
最大短径を計測すると1.3cmでした。通常短径が1cm以上で有意な腫大と判断します。
ちなみに腫大しているリンパ節の名前ですが、右下部気管傍リンパ節(#4R)と言います。
リンパ節の番号や名称については、胸部リンパ節画像診断ツール(PCのみで閲覧可能)をご覧ください。
※ただしこの番号や呼び名はあくまで肺癌取り扱い規約に基づいたものです。同じリンパ節でも原発によって呼ばれる名称が異なりますので注意が必要です。
診断:縦隔リンパ節(#4R)腫大あり+上心膜腔への心嚢液貯留
縦隔リンパ節腫大を認め、その後FDG-PETで同部に集積亢進を認めた為、呼吸器外科で鏡視下リンパ節生検が行われましたが悪性所見は認めず、結核性が疑われました。
その後フォローのCTで縦隔リンパ節腫大は消失しました。
関連:
その他所見:
- 肝嚢胞あり。
- 腎のう胞あり。
- 腹膜ネズミあり。
【胸部】TIPS症例11の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
リンパ節の腫大の鑑別がたくさんありますね。メインは生検だとは思いますが、腫れ方や染まり方が結構異なるようで鑑別に役立つこともありそうですね。
アウトプットありがとうございます。
>リンパ節の腫大の鑑別がたくさんありますね。
そうですね。リンパ節だけだと鑑別はたくさんありますね。
>腫れ方や染まり方が結構異なるようで鑑別に役立つこともありそうですね。
そうですね。結核の場合は結構内部が壊死で低吸収のことが多いため、そういった点では今回のは結核ぽくはないですね。
あとは悪性リンパ腫の場合は癒合傾向にあったりしますね。
リンパ節じゃないなら何?という観点で考えてしまいました。
部位により判断が変わるイメージで、たとえば頭頸部なら中心濃度低ければ悪性の判断ですよね。胸部の時は結核が関係していたのですね。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>たとえば頭頸部なら中心濃度低ければ悪性の判断ですよね。
場所により多少鑑別に挙げるべき疾患は変わりますが、頭頚部であっても中心濃度が低ければ結核の可能性もあります。
なのでしばしば悩ましいことがありますね。
今回のリンパ節腫大は、消失のため何らかの反応性ということでしょうか? それとも、自然消失する結核性のリンパ節腫大というのがあるのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>消失のため何らかの反応性ということでしょうか?
そうですね。反応性に腫大していたと考えられます。
結核性であっても自然退縮することはあります。
救急では正直あまりリンパ節まで意識して読影できておらず,この2症例はとても勉強になりました.
治療などの方針に関わることもあり,勉強しておくべきところですね.
アウトプットありがとうございます。
>救急では正直あまりリンパ節まで意識して読影できておらず
そうですよね。肺炎があるのか、心不全があるのか、こちらの方がまずは救急の現場では問われますからね。
+αでリンパ節にも着目してみてください。
頭尾方向に短い気がして有意なサイズでないと判断してしまいました。頭尾方向にも1cm以上ありそうでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
リンパ節の評価は難しいですね。
>頭尾方向にも1cm以上ありそうでしょうか。
横断像のみなのでちょっと微妙ですね。
横断像で認める短径で判断して大丈夫です。
目立つリンパ節の右側にもリンパ節を認めていますので、今回くらいですと引っかけたいところですね。
こんばんは。本日もご解説ありがとうございました。
昨日の症例でリンパ節との鑑別が難しそうだから気をつけなくては…と思っていた矢先の本日の症例だったので、区別して解答することができました。
やはり「形状」と「CT値」が鑑別のヒントになったと感じました。
アウトプットありがとうございます。
>「形状」と「CT値」が鑑別のヒントになった
そうですね。この2点が鑑別に重要ですね。後は特に今回の好発部位ですね。
単純CTだったら楕円形心嚢液をリンパ節腫大と思ってしまいますね。
CT値が測るのが良いと色々な方がコメントしていますが、CT値は心嚢液だと0ぐらいで、リンパ節のCT値は少し高くなるのですか?
アウトプットありがとうございます。
そうですね。リンパ節はやや高吸収になる傾向にあります。
ただし、内部に壊死を伴うリンパ節もあるので注意が必要ですね。
今回も勉強になりました。ありがとうございました!先生が最後の方のコメントで「腫瘍マーカーを」とおっしゃっていたのは少し気になりました。取るべきプラクティスとして、悪性も否定するために腫瘍マーカーを取るというのは望ましくない(現場ではなされていることは多々ありますが・・・)と思いました。画像についてのコメントではなくてすみません。
アウトプットありがとうございます。
>悪性も否定するために腫瘍マーカーを取るというのは望ましくない(現場ではなされていることは多々ありますが・・・)と思いました。
既往歴のない方ならば、その通りなのですが、この方は1年前に胃癌で手術されており、定期フォローされている方です。
定期フォローはCTのみでなく腫瘍マーカーでもされています(外科の同期に聞いてみたら進行癌だったら3ヶ月に1回採血すると言ってました)。
ですので、今回のリンパ節腫大を見て、腫瘍マーカーはどうなっているのかをチェックすることはこれが転移なのかどうかを考える上でも重要と考えます。
上心膜腔への心嚢液貯留のところもその下の本当のリンパ節腫大のところも全部リンパ節腫大としてとらえてしまいました。存在だけでなく、質的診断にまで迫れないといけないですね
アウトプットありがとうございます。
>存在だけでなく、質的診断にまで迫れないといけないですね
そうですね。形状や濃度を参考に判断する必要があります。
内部に壊死を伴っていたりして低吸収なリンパ節もありますので注意が必要ですが。
今回は、前回学んだ”上心膜腔への心嚢液貯留”は、お陰様で自分でも読めました!
で、前回の復習症例かと思い、リンパ節腫脹はないと思ったのですが、
その上を行く症例でした!リンパ節腫脹の見方が少し分かりました。
勉強になりました。ありがとうございました。
写真は大阪城ですね。うちから(病院からも)は、名古屋城が見えま~す。
癒しエピソード、今後もお願いしますm(_ _)m
アウトプットありがとうございます。
>で、前回の復習症例かと思い、リンパ節腫脹はないと思ったのですが、
その上を行く症例でした!リンパ節腫脹の見方が少し分かりました。
それはよかったです!!
>写真は大阪城ですね。うちから(病院からも)は、名古屋城が見えま~す。癒しエピソード、今後もお願いしますm(_ _)m
名古屋城いいですね!
以前、名古屋で学会のときに、朝名古屋城までランニングしました。
癒やされている方はごく一部だと思いますが(^_^;)、引き続き発信していきます。
上心膜腔の液体貯留とリンパ節腫大の合わせ技だったのですね。どちらか一つに目を奪われやすいので注意しないといけないですね。