【胸部】TIPS症例10
【症例】60歳代男性
スクリーニング
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縦隔リンパ節腫大がある?ない?ないならば何がある?
造影CTが撮影されています。
縦隔条件を見てみましょう。
そうすると気管支の右腹側(前側)に類楕円形の結節を認めています。
リンパ節腫大でしょうか?
前後をスクロールすると、この結節は上下方向にある程度長いことがわかります。
そして、低吸収で液貯留が疑われます。
この2点がリンパ節としては非典型的ですね。
これは心嚢水が局所的に貯留したものを見ている正常変異です。
心嚢内には、心膜の折り返りや心嚢を大血管が貫くことにより所々くぼみや陥凹が生じ、そこに貯留した生理的な心嚢液が局所的な液貯留として認められます。
具体的には以下の場所に居所的な心嚢水が貯留することが知られています。
- 上心膜腔(心膜上腔)
- 心膜横洞
- 右・左外側陥凹
- 心膜斜洞
です。
頻度が多いのは、上心膜腔(心膜上腔)で、今回もここに相当します。
基本的にこの場所を押さえておけば問題ありません。
この部位は縦隔リンパ節と間違えられることがあるので注意が必要です。
診断:上心膜腔(心膜上腔)の液貯留
※名前が色々呼ばれていてややこしいですが、局所的な心嚢水であり、正常変異であるということがわかれば問題ありません。
関連:心膜洞(心膜腔、心膜陥凹)の液貯留(心嚢液)のCT画像診断!リンパ節とは異なる!
その他所見:
- 左肺底部小結節あり。良性病変疑いですが、要フォロー。
- 肝血管腫あり。
【胸部】TIPS症例10の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
円形の場合、念のためにリンパ節との鑑別のためにCT値を計測する時が、ごくたまにあります。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。場所と濃度から通常は判別可能ですが、CT値を測定すればより確実ですね。
心嚢水の正常変異を知らなかったので、中縦隔にできる嚢胞性病変があるのかと思いました。胸部TIPSでは知らないことだらけです。
アウトプットありがとうございます。
>胸部TIPSでは知らないことだらけです。
それはよかったです。作りがいもあります(^^)
液体貯留とは思えなかったです.確かに解剖を考えれば,液体貯留しそうですね.勉強になります.
アウトプットありがとうございます。
知らなければリンパ節腫大としてしまいがちなので、是非この機会に覚えておきましょう。
こんにちは、お忙しいところ毎日ご解説ありがとうございます。
心膜腔の液体貯留、なんとか答えにたどり着くことができました。
・本日の液体貯留は楕円形でたしかに腫大リンパ節と区別がつきづらかったです。どちらと判断するかによって、まったくその後の方針が違ってくる所見だと思うので、しっかり覚えておきたいです。
・kenken先生のコメントの通り、CT値の違いを意識して区別したいと思います。今回は割と低吸収だったのでわかりやすかったのですが…。
・今回はありませんでしたが、なかには液体貯留が心膜腔の形状にそって嘴(beak)状となっていることもあり、それがリンパ節腫大との鑑別点になるということを追加で学びました。
・APwindowにも液貯留が生じることがあり、ますますリンパ節と区別がつきにくそうだなぁ、と感じました…
参考:https://www.ajronline.org/doi/full/10.2214/ajr.181.4.1811109
アウトプットありがとうございます。
>CT値の違いを意識して区別したいと思います。今回は割と低吸収だったのでわかりやすかったのですが…。
そうですね。基本低吸収であり、リンパ節にしてはいびつな形をすることが多いので鑑別はしやすいと思います。
頻度は決して低くないので、知っているか知っていないかが非常に重要ですね。
>APwindowにも液貯留が生じることがあり、ますますリンパ節と区別がつきにくそうだなぁ、と感じました…
この場合もCT値と形状が重要となります。
CTで上大静脈と気管の間で中縦隔腫瘍と考え、気管支原性嚢胞、食道嚢胞、リンパ腫などを鑑別に上げ、気管支原性嚢胞と答えてしまいました。中縦隔で嚢胞性のdensityですが 気管支原性嚢胞との鑑別点はあるのでしょうか?なお、自分では気管支原性嚢胞も上心膜腔の液貯留も(あったのかもしれませんが・・・)今まで気がついたことなく、知らないことばかりで勉強になります。
アウトプットありがとうございます。
>中縦隔で嚢胞性のdensityですが 気管支原性嚢胞との鑑別点はあるのでしょうか?
上心膜腔(心膜上腔)の液貯留は非常に頻度が高く、特にこの場所が重要ですね。傍気管嚢胞のように。
気管支原性嚢胞の場合は、気管分岐部周囲に好発します。また、周囲の構造を圧排したりしますが、上心膜腔(心膜上腔)の液貯留の場合はそのようなことがなく、今回のように上下に長く存在するのが特徴ですね。
初歩的な質問かもしれませんが、、
今回の心嚢水貯留とリンパ節腫大ではCT値の違いはどのようになるのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>今回の心嚢水貯留とリンパ節腫大ではCT値の違いはどのようになるのでしょうか?
心嚢水貯留は血性などでない限り、0-10HU前後となります。
一方でリンパ節腫大は、もっとCT値が高くなります。
上心膜腔への液貯留。日常診療でよく見られますが、読影でも指摘されず、なんとなく異常なしとしていていました。
やっと理解できました。ありがとうございます。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように割と日常臨床でも見られます。リンパ節とややこしいこともありますが、連続性と濃度をチェックすれば概ね鑑別可能です。
こんなものがあるとは知りませんでした。一見するとリンパ節と思ってしまいますが、鑑別点も示してくれて、今度出会ったら
「こんにちは」と言えそうです。
アウトプットありがとうございます。
>こんなものがあるとは知りませんでした。
日常臨床でしばしば遭遇しますが、意外と盲点なところですね。
>今度出会ったら「こんにちは」と言えそうです。
近々こんにちはとなるはずです(^^)
いつもありがとうございます。まさに重箱の隅なのですが、スライス54と117の左肺底部外側に小結節影があるように見えます。肺野の結節か胸膜病変かちょっとわかりにくいのですが、どっちでしょう。フォローが必要な陰影でしょうか。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように肺底部に肺結節がありますね。肺内リンパ節など良性病変を疑いますが、フォローの必要はありますね。
追記します。ありがとうございます。
問題の個所は、上大静脈かと思ってました。解剖から、あり得ないですね!低レベル過ぎてすみません(>_<) 勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
上大静脈に隣接していますので、あり得なくはないと思いますよ。
レアではなく割と日常臨床でもみられるものなので是非この機会に覚えておいてください。