【胸部】TIPS症例8
【症例】50歳代男性
健診で異常(肺結節)を指摘されて来院。
画像はこちら
異常(肺結節)はどこにあり、その正体は?
まず胸部レントゲンから見ていきましょう。
右中肺野、左上中肺野に結節影を認めています。
右中肺野の結節が最も目立ち、健診でひっかかったのはこの部位だと思われます。
では次にCTを見てみましょう。
ところが、肺野条件を見ていただくとお分かりのように該当する結節影は肺内には見つかりません。
縦隔条件でもはっきりしません。
では結節に見えた正体は一体何なのでしょうか?
次に骨条件を見てみましょう。
すると右第5肋骨に骨硬化を認めています。
これは骨島(bone island)を疑う所見で、これがレントゲン上で結節影を形成していたと考えられます。
その目でレントゲンを見てみると確かに右第5肋骨上に認めていますね。
※担癌患者の場合は常に転移の可能性も考慮に入れる必要があります。この方はここ数年毎回ここの結節を指摘されていたとのことです。
左上肺野に認めていたものは左第2肋骨の骨島であることがわかります。
また左中肺野に認めていた結節は左第7肋骨の骨島であることがわかります。
さらに第一腰椎にも骨島を疑う骨硬化を認めています。
診断:(右第5、左第2、7)肋骨の骨島
肺結節影と誤りやすい肺外病変1)として以下のものがあります。
- 乳頭(nipple)
- 肋骨の骨島(bone island):今回はこれ
- 肋骨の陳旧性骨折 ←症例3
- 肋軟骨石灰化 ←症例2
- 椎体の骨棘 ←症例6(ただし肺結節影は認めていませんでした。)
- 皮膚結節
- X線束と平行に走行する肺血管
- 肺血管の重なり
- 束ねた髪
- ボタン
合わせて復習しておきましょう。
参考:1)単純X線写真読影のためのキーワード201 P173
【胸部】TIPS症例8の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
bone islandは辺縁形状により悪性との判断が難しいですね。良性のように見えるものでもFDG集積したり悩ましいです。サイズアップを重ねて現状の大きさになったでしょうから良性でもサイズアップしないとは限らないように思いますが、やはりサイズで見てしまいます。ありがとうございました。
ちなみにwindows10でedge(ブラウザ)を初めて使用しましたが動作良好でした。
アウトプットありがとうございます。
>bone islandは辺縁形状により悪性との判断が難しいですね。
おっしゃるとおりです。
特に前立腺癌などが既往にあるときは悩ましいですね。
>ちなみにwindows10でedge(ブラウザ)を初めて使用しましたが動作良好でした。
報告ありがとうございます。
先日edgeで開くとフリーズすると言う報告もありましたので、少しedgeでは不安定?なのかもしれませんね。
私の使用しているPCでもwindows7からwindows10にあげたものは先生のアプリに関係なくフリーズし、調べてみたら頻度高く起こっているようです。windows8からだと大丈夫らしいですが・・・。PCの問題で先生のアプリとの相性じゃないかもしれません。一応報告いたします。
>アプリに関係なくフリーズし、調べてみたら頻度高く起こっているようです。
そうなんですね。貴重な情報ありがとうございますm(_ _)m
肋軟骨石灰化以外の異常所見に気が付きませんでした。XPで見られる硬い結節影が今回のテーマだったわけですね…。CTで確認しても骨島はスルーでした(^^;)
アウトプットありがとうございます。
>肋軟骨石灰化以外の異常所見に気が付きませんでした。XPで見られる硬い結節影が今回のテーマだったわけですね…。
改めて検討しましたが、ちょっとヒントが異常所見だけだと微妙ですね。
せめて異常(肺結節)としないと、他のいろんなところを見てしまいますね。
この点修正します。ありがとうございます。
bone islandは見る頻度もそれなりに高いですが,レントゲンで見つけるとどうしてもCTを撮らざるを得なくなってしまいますね.前回との比較が可能で増大なければ良いのでしょうが.
アウトプットありがとうございます。
>レントゲンで見つけるとどうしてもCTを撮らざるを得なくなってしまいますね
ですね。特に前立腺癌や乳癌の既往があればなおさらですね。
>前回との比較が可能で増大なければ良いのでしょうが.
おっしゃるとおりですね。
私は異常陰影にすら気付けませんでした。ドックでも毎年指摘されているようで、誰が見ても気付くべき陰影なんだと反省しました。骨島がここまで紛らわしいことも知りませんでした。
アウトプットありがとうございます。
>私は異常陰影にすら気付けませんでした。
実際のモニターではない環境ですので、ちょっと厳しいかもしれませんね。
bone islandと骨転移との鑑別をご教示いただきたいです。
アウトプットありがとうございます。
担癌患者の場合は、CTのみで鑑別はできないこともあります(腫瘤性に腫大していたりすれば話は別ですが)。
鑑別するとしたら骨シンチとなりますね。
ただ、肋骨や骨盤骨は骨島の頻度が高いので、担癌患者の場合も境界明瞭で均一な骨硬化の場合は、骨島疑いとしてフォローされることが多いかと考えます。
前立腺癌など転移性骨腫瘍が骨硬化を示すような癌の場合は、スクリーニングで骨シンチがされることも多いですが、施設にもよりますかね。
補足です。
・造骨型の骨転移:病変と周囲との境界が不明瞭で、その吸収値(CT値)がさまざま
・骨島:皮質骨と同程度の極めて高いCT値を示し、均一。周囲海綿骨との境界は明瞭。
という点が鑑別点になると記載がありますが、実際は難しいケースも結構あります。
(参考:画像診断 Vol.30 No.6 2010 P509)
なお、骨転移には、造骨性の骨転移の他に、
・溶骨型
・混合型
・骨梁間型:CTではわからず、MRIやPET-CTで分かる
があります。
骨島との鑑別が問題となるのは、造骨型(および混合型の一部)ですね。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/2117
単純胸部での結節影を気づけませんでした。
参考までに伺いたいのですが、L1の椎体に認める高吸収域も同様に骨島なのでしょうか?
申し訳ございません。動画内でL1の骨島についても言及されておりました。失礼いたしました。
アウトプットありがとうございます。
動画内でご確認いただけたみたいでよかったです。
こんばんは。いつも大変お世話になっております。
CT所見から類推することはできましたが、胸部X線で骨頭を探すのは難しかったです。
本日は「結節ってそもそも大きさはどう定義されているのだろう」と思い、微小結節、結節、腫瘤のそれぞれの定義について確認しました。結節と腫瘤については3cmを境に定義されているのですね。微小結節は定義はさまざまだが3~5mm未満の陰影と記載がありました。
参考:『呼吸器ジャーナル 呼吸器疾患の鑑別診断ー「基本画像パターン」、「病態」、「経過」』p8
ひとつ質問なのですが、単純X線で左第8肋骨の肺門部寄りの領域に存在する高吸収な結節影は肺血管によるものでしょうか?
ゆくゆくは気管支や血管の番号を付けられるように頑張ります!
アウトプットありがとうございます。
>CT所見から類推することはできましたが、胸部X線で骨頭を探すのは難しかったです。
そうですね。特にレントゲン写真は、実際の端末で読影するのとちょっと画質という点でも解離が大きいかもしれません。
>微小結節、結節、腫瘤のそれぞれの定義について確認しました。結節と腫瘤については3cmを境に定義されているのですね。微小結節は定義はさまざまだが3~5mm未満の陰影と記載がありました。
そうですね。肺の場合はそのように定義されています。
>単純X線で左第8肋骨の肺門部寄りの領域に存在する高吸収な結節影は肺血管によるものでしょうか?
後肋骨の肺門部寄りですね。血管によるものですね。
いつもありがとうございます。
何故か PCだと 問題の画像が 見られません。2cmくらいの高さしかありません。
iPadだと 見られます。
このような 意見は 他にありますでしょうか。
IEで見られなかったという方が前回開催時におられました。
chromeなどのブラウザだと見られると思います。いかがでしょうか?
肋軟骨石灰化、肋骨の陳旧性骨折、骨棘、骨島についてまとめてみました。【肋骨の陳旧性骨折】は症例3のように、
“境界明瞭で均一”なレントゲン所見をとることが多いのでしょうか?
肋軟骨石灰化・・・肋骨と軟骨の接合部に石灰化を生じる状態
肋骨の陳旧性骨折・・・骨折部位に、骨硬化(限局性の石灰化)を生じる状態
骨棘・・・骨に過度の負担がかかることで骨の一部が棘状に突出したもの
骨島・・・骨髄腔に残存する正常緻密骨
好発部位 レントゲン所見 その他
肋軟骨石灰化 第一肋骨と胸骨の接合部 比較的高吸収・不均一 下方への突出が多い。
肋骨の陳旧性骨折 肋骨 比較的高吸収・均一・境界明瞭?? 肋骨との連続性・変形が見られる
上下の肋骨の骨折が見られることあり
骨棘 椎体 高吸収・均一
骨島 骨盤骨・肋骨 均一・境界明瞭
アウトプットありがとうございます。
>肋軟骨石灰化、肋骨の陳旧性骨折、骨棘、骨島についてまとめてみました。
おお!!ありがとうございます(^^)
>【肋骨の陳旧性骨折】は症例3のように、
“境界明瞭で均一”なレントゲン所見をとることが多いのでしょうか?
肋骨の骨折については多彩です。
骨硬化を来すことが多いですが、CTで見ないと分からないようなわずかなこともあります。
レントゲンでは骨硬化や肋骨のズレに着目しましょう。
>肋骨の骨折については多彩です。
骨硬化を来すことが多いですが、CTで見ないと分からないようなわずかなこともあります。
レントゲンでは骨硬化や肋骨のズレに着目しましょう。
返信ありがとうございます。
もやもやしていたところがスッキリしました。ありがとうございます(^_^)
(結節影ではありませんが)右第2弓とシルエットサイン陽性の高吸収域が異常かなと思ったのですが、こちらは横隔膜のラインなのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
右第2弓の下の方でしたら、心膜外脂肪塊ですね。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/34976
骨島と言うのですね。初耳でした。
左第7肋骨の骨硬化は気付けたのですが、レントゲンの結節は全く分からず…。
あると分かって見ても、とても難しいです。
パソコンではなく、実際のモニターで見たら、
もしかして分かりやすいのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>パソコンではなく、実際のモニターで見たら、もしかして分かりやすいのでしょうか?
それもあると思いますし、そもそも今回のはサイズが小さくて少し分かりにくかったかもしれませんね・・・。