【胸部】TIPS症例7
【症例】50歳代男性
【主訴】腹部膨満
【現病歴】非代償性肝硬変にて当院かかりつけ
【既往歴】23歳時に輸血あり、胃静脈瘤、食道静脈瘤、脾摘
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このような乳腺を何という?
男性ですが、両側乳頭直下に女性のような乳腺を認めていることがわかります。
名前はそのまま、女性化乳房といいます。
女性化乳房はさまざまな原因で起こりますが今回は肝硬変が基礎疾患にあります。
肝硬変→異化低下→エストロゲン過剰がおこり、その結果
- 女性化乳房
- 手掌紅斑
- くも膜状血管腫
- 睾丸萎縮
- インポテンツ
などが起こることが知られています。
診断:(肝硬変による)女性化乳房
その他所見:
- 肝硬変あり。
- 胸腹水あり。
- 両側腎のう胞あり。
- 右脊柱起立筋に血腫あり。
【胸部】TIPS症例7の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
腹部でも出てくる症例でスムーズに答えられました。復習になってよかったです。
今回はシンプルでしたね。復習になってよかったです。
肝硬変→異化低下→エストロゲン過剰という機序は知らなく良い勉強になりました。前立腺がんのホルモン療法とかが主流かと思い調べてみると多種多様な原因があるのですね。片側もあるのですね。男性乳がんと間違えそうで嫌です。片側の場合フォローもしくはエコーするべきですよね?ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>前立腺がんのホルモン療法とかが主流かと思い調べてみると多種多様な原因があるのですね。
最近泌尿器科クリニックの遠隔読影を始めたのですが、前立腺癌ホルモン療法ですごく多いですね。
もう指摘しなくてもいいのかもしれないというくらい頻度が多いです。
>片側の場合フォローもしくはエコーするべきですよね?ありがとうございました。
そうですね。片側に限らずフォローですね。乳癌のリスクではないということですが。
軟部影が軽度の場合、女性化乳房と言ってよいか迷うことがあります。女性化乳房とする定義はあるのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
具体的にどのサイズがあれば、という定義はないかと思います。
軽度な場合はおっしゃるように書くかどうか悩ましいこともありますね。
意外とそれ以外の所見が派手な人が多い印象なので,注意しなければ見逃して(スルー)いる気がしますね.
アウトプットありがとうございます。
>意外とそれ以外の所見が派手な人が多い印象
おっしゃるとおりですね。
そして、そちらの所見をしっかり取ることの方が重要です。
金属アーチファクトは摘脾の影響でしょうか?それとも胃をクリッピングなどしたのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
そうですね。脾摘の影響と思われます。胃の外のようですね、。
腹水に気を取られて、ヒントなしでは気づけませんでした。
勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
肝硬変による胸腹水も所見として重要ですね。
こんにちは。本日もありがとうございます。
Yotubeチャンネルとあわせてとても勉強になります!
今日は指摘することができました。
女性化乳房はD2受容体遮断薬を飲んでいる精神科の患者さんにも多い印象です。
しかし、右脊柱起立筋の血腫は気づきませんでした…。
左右差をみると、たしかに太くなっていますね…。
「肝硬変→血小板をつくるトロンボポエチン、凝固因子の肝での産生低下→出血傾向」ということなのかな、と推測しました。
アウトプットありがとうございます。
>Yotubeチャンネルとあわせてとても勉強になります!
恐縮です(^_^;)
これが目にとまったのかレジナビなどで有名な?メディカル・プリンシプル社から会員向け動画を作ってくれないかと今日問い合わせがありました。
>女性化乳房はD2受容体遮断薬を飲んでいる精神科の患者さんにも多い印象です。
補足ありがとうございます。
>しかし、右脊柱起立筋の血腫は気づきませんでした…。
左右差をみると、たしかに太くなっていますね…。
今回は乳腺に注目してもらったので、なかなか気づかないかもしれないですね。
>「肝硬変→血小板をつくるトロンボポエチン、凝固因子の肝での産生低下→出血傾向」ということなのかな、と推測しました。
おっしゃるとおりだと考えます。
肝硬変では肝右葉萎縮、左葉腫大が見られると様々な教科書で言われていますが、なぜ右葉が萎縮し左葉が代償性に腫大するのでしょうか。肝硬変患者ではこのような傾向がみられるといった経験的な所見なのか、解剖・生理学的にそうなりやすい理由があるのか、ご教授頂けると嬉しいです。ずっと持っていた疑問で何を調べても解消できませんでした…
アウトプットありがとうございます。
>なぜ右葉が萎縮し左葉が代償性に腫大するのでしょうか。
そういうものだと覚えておくのがよいと思いますが、
門脈右枝と門脈左枝には解剖学的な違いがあることが原因となります。
(※)門脈右枝は肝門部から直接肝右葉に入りますが、門脈左枝は肝外である肝鎌状靱帯部を通ってから肝左葉に入ります。
肝硬変による肝線維化の進行
→肝内門脈枝は圧排され狭窄を来す。
→(※)の理由により、線維化の影響が少ないのは右葉よりも左葉で、相対的に多くの門脈血流が左葉に流れます。
→右葉は萎縮し、左葉は代償性に腫大します。尾状葉も同様です。
ただし、肝硬変でも非代償期や終末期では全体的に強い繊維化が及び左葉も含めて萎縮を来します。