【胸部】TIPS症例3
【症例】50歳代男性
スクリーニング
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胸部レントゲンで右中肺野に結節のようなものがありますがこれは何?また、胸部CTの肺野条件で肺尖部に陰影があるけどこれは何?
まず胸部レントゲンから見ていきましょう。
右中肺野に高吸収な結節影を認めています。
その尾側やや外側にも高吸収な結節があるようにみえます。
「肺癌でしょうか?」
結節部位をちょっと拡大してみてみましょう。
すると結節影は肋骨(右第7肋骨)と連続性があることがわかります。
また肋骨はこの結節の左右でズレて位置していることがわかります。
つまり、肋骨骨折後の骨硬化の変化を見ていることが考えられます。
CTで確認してみましょう。
やはり第7肋骨に骨折線を認めており、やや左右(前後にも)ずれた状態で硬化していることがわかります。
この骨硬化が結節として見えていたということがわかります。
前後をスクロールしますと第6、8肋骨にも骨折線を認めていることがわかります。
ただし、左右や前後への骨のズレ(偏位)は第7肋骨ほど目立ちません。
ですので、第7肋骨ほどの結節影としてはレントゲンでは認識できなかったということです。
ちなみに、このように数本連続して骨折しているのは肋骨骨折ではよくあることです。肋骨骨折を見つけたら、その上下の肋骨にも骨折がないかをチェックするようにしましょう。
CT(横断像)骨条件 49枚目で右肋骨が肥厚・高吸収の所見があるようにみえました。明らかな骨折線はないように見えましたが、気になっています。正常範囲でしょうか。御教示頂けたらと思いいます。
とコメントをいただきました。
確かに、右の第4−6前肋骨に骨硬化(及び一部変形を伴うものもあり)があり、こちらも骨折後の変化が疑われます。
ご指摘ありがとうございます。
さて、次に肺尖部を見てみましょう。
軽度ですが、両側肺尖部に軽度胸膜肥厚を認めています。
冠状断像で見てみましょう。
両側軽度肺尖部に胸膜肥厚を認めています。
肺癌でしょうか?
ではなくて、こちらは加齢性変化といわれています。
日常臨床で頻度が多く見られる正常変異の一つです。
診断:陳旧性肋骨骨折、肺尖部の加齢性変化(apical cap)
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【胸部】TIPS症例3の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
apical capは「長く生きていると、何らかの炎症や虚血による瘢痕が残る」ということですね。
アウトプットありがとうございます。
その理解で大丈夫です。
同僚でゴルフの打ちっぱなしで脇腹痛いということで検査するとほぼ折れていました(ー_ー)!!
それほど多い職場じゃないのに3人くらいいました。
私の統計(n=3)では700球くらいで折れるようです。(引用不可)^o^(信憑性なしです)
筋肉痛程度の痛みプラス、筋肉痛じゃない気がする!!程度で折れていたようです。
肋骨は折れやすいという話の下りでした。関係のない話すいませんでした。
>肋骨は折れやすいという話の下りでした。
そうですね。本人が気づいていないけれど折れていたということも割とありますからね。
仮に肋骨骨折の既往があると分かっていても、一度CTで確認しないと不安ですね。
そうですね。今回のようにレントゲンで明らかにずれているものはいいですが、ずれていない場合は過去画像を確認した上で、変化があればCTでも確認したくなりますね。
今日もありがとうございます。
6、8肋骨骨折はXpだと胸部条件というのもあって難しいですね。ただ連続して骨折があるという事を頭において前後の肋骨も見るようにしたいです。
アウトプットありがとうございます。
>ただ連続して骨折があるという事を頭において前後の肋骨も見るようにしたいです。
そうですね。連続して骨折していることが多いので、一つ見つけたら前後もチェックですね。
肋骨骨折は折れたときのレントゲンを見ることは多いですが,治った後はあまりみたことがありませんでした.
勉強になりました.
アウトプットありがとうございます。
治ったというかずれて癒合しているのでわかりやすいですね。
折れたときは偏位がなければレントゲンではわかりにくいですね。
その点はCTがやはり強いですね。
おはようございます。本日もよろしくお願いいたします。
胸部X線で肋骨を一本ずれて数えてしまい、第6肋骨としてしまいました…。
必ず胸部CTと照らし合わせて同定した部位と矛盾はないか確認する癖をつけたいです!
アウトプットありがとうございます。
レントゲンではたまにわかりにくく数え間違えることがありますね。
その点CTでは間違えにくいので両方撮影されていたら、両方で確認したいですね。
私もレントゲンで第6肋骨と判断してCT見ても思い込みを修正できませんでしたw
前回の症例でも骨島と答えたんですが骨島とはどういうものなんですか?
すいません、調べてから質問してください。
https://www.google.co.jp/search?source=hp&ei=70mEXu_HH-y4mAWV3bqICg&q=%E9%AA%A8%E5%B3%B6&oq=%E9%AA%A8%E5%B3%B6&gs_lcp=CgZwc3ktYWIQAzICCAAyAggAMgIIADICCAAyAggAMgIIADICCAA6BwgAEIMBEAQ6BQgAEIMBOgQIABAEOgQIABAKOgYIABAEECVQ4gpY8CFguCRoBHAAeACAAWeIAbsLkgEEMTcuMZgBAKABAaoBB2d3cy13aXqwAQA&sclient=psy-ab&ved=0ahUKEwiv-6uJ4cboAhVsHKYKHZWuDqEQ4dUDCAg&uact=5
apical capという名前と、悪性ではない、ということは知っていましたが、加齢による変化であるとか、慢性炎症や虚血が影響しているとか、原因まで知ることができてよかったです。
本当にこのシリーズは勉強になります。
有難うございます。
いつもご参加ありがとうございます。
>慢性炎症や虚血が影響しているとか、原因まで知ることができてよかったです。
「よくある変化」で済ませてもいいですが原因までわかるとすっきりしますね。
お世話になります。
CT(横断像)骨条件 49枚目で右肋骨が肥厚・高吸収の所見があるようにみえました。明らかな骨折線はないように見えましたが、気になっています。正常範囲でしょうか。御教示頂けたらと思いいます。
アウトプットありがとうございます。
確かに・・・・・。ありますね。
右4−6の肋骨の前の方にも骨硬化があり、これらも骨折後の変化ですね。ありがとうございます。追記します。
骨折の画像、折れてからの期間は推測できるのでしょうか。
折れたては骨皮質の連続性がなく、皮下に出血が見られることがある
折れてから数週間で仮骨の石灰化がふわふわっと見えるようになって、
そのあととりあえず骨癒合して(石灰化が強い印象)
年単位でリモデリングしていく(元のようになっていく)
といったイメージ(整形素人なので間違っているかもしれません)なんですけど、
この方の場合は折れてからどれくらいなんでしょうか。
あと全く無関係ですが、お腹のカテーテル は腹膜透析カテーテルで合っていますか?先端の部位と皮下トンネルが長いことから推測しましたが、ほとんど患者さんを見たことがなく自信がありません。
アウトプットありがとうございます。
急性期の骨折は、おっしゃるように骨皮質の連続性がなく、かつ周囲に硬化などは認めません。
>骨折の画像、折れてからの期間は推測できるのでしょうか。
これは慢性期か急性期くらいおおまかな推測しかできないと考えます。
明瞭な骨硬化が起こっている場合は慢性期、骨硬化が全くなく、骨皮質が鋭く途絶しているものは急性期で、どちらにも当てはまらない場合はその間ということになりますかね。
また、骨折の仕方によってもその後の変化も変わります。
骨の転位が大きいものは転位を残したまま癒合しますが、転位がないものは骨のズレなく肋骨に骨硬化を残すのみになります。
今回の右の第4−6前肋骨の骨硬化がそれですね。
今回は調べたところ少なくとも1年前には骨折線を認めていますが、今回のような骨硬化認めていなかったので、少なくとも1年以上の経過ということになります。
>お腹のカテーテル は腹膜透析カテーテルで合っていますか?
合っています。
こちらにもチャレンジしてみてください。
https://imaging-diagnosis.com/view/Uz3CZRuV
いつも貴重な症例ありがとうございます。
高齢の患者では、両側性で不整で境界明瞭な胸膜肥厚、いわゆるapical capの厚みが計測によっては10ミリ近い症例を経験します。
apical cap厚と加齢度の相関関係はあるのでしょうか?(調べましたが文献等に出会えませんでした…)
アウトプットありがとうございます。
>高齢の患者では、両側性で不整で境界明瞭な胸膜肥厚、いわゆるapical capの厚みが計測によっては10ミリ近い症例を経験します
おっしゃるように5mmはあくまで目安で、両側性でより厚い症例もありますね。
>apical cap厚と加齢度の相関関係はあるのでしょうか?(調べましたが文献等に出会えませんでした…)
加齢性変化でもありますので、多少は関連すると考えます。
ただし個人差がかなりありますね。高齢でも全くない方もおられます。
胸部レントゲン上では異常影は気管分岐部とほぼ同じ高さと目安をつけて胸部CTを見ましたが、胸部CTでは第7肋骨の骨折部は、気管分岐部よりも1肋骨くらい下にありました。位置がずれる原因は何でしょうか。吸気量の違い、立位/臥位の違い、上肢の上げ下げの違い? よろしくお願いします。
アウトプットありがとうございます。
確かに少しずれていますが、1肋骨まではないようです。
レントゲンとCTの撮影時入射角の違いもありそうです。
今回CTのスカウト画像がないのですが、スカウト画像があれば結節は分岐部よりもやや下にあったかもしれません。