【胸部】症例35
【症例】60歳代男性
【主訴】発熱
【現病歴】一昨日より倦怠感出現、昨日朝より熱感あり近医を受診。抗生剤、解熱薬処方され経過観察していた。今日になっても発熱、倦怠感持続しており当院受診。
【既往歴】大腸癌術後、高血圧、脂質異常症
【内服薬】アムロジピン、リピディル、カンデサルタン
【生活歴】喫煙:20本×40年、飲酒:ビール2本/毎日、職業:クリーニング業、温泉・入浴歴:なし、旅行歴:なし
【身体所見】意識清明、BT 38℃、BP 151/91mmHg、SpO2 95%(RA)、肺音:清、左右差なし、ラ音は目立たない。
【データ】WBC 10400(好中球 95.9%)、CRP 31.43
画像はこちら
まずはレントゲンから見ていきましょう。
右下肺野内側に浸潤影を認めています。
心陰影を追うことができ(シルエット陰性)、下葉に陰影があることが推測されます。
続いてCTを見てみましょう。
右下葉S6、S10を中心に区域性+非区域性に広がる浸潤影を認めています。
一部では非常に濃度が濃く、区域性だけでなく非区域性に肺胞間で広がっていく大葉性肺炎パターンを示している事が分かります。
さて、このような大葉性肺炎パターンを示す原因としては、
- 肺炎球菌
- クレブシエラ
- レジオネラ
がメインでした。
今回は画像から、これらの可能性があるというところまでしか言えず、具体的な菌名までは画像だけではわかりません。
診断:右下葉に大葉性肺炎(肺胞性肺炎)
※尿中レジオネラ抗原陽性と判明し、レジオネラ肺炎と診断されました。抗生剤(LVFX 500mg/day)加療され、入院から16日後に退院となっています。
最終診断:右下葉にレジオネラ肺炎
※急速に広がったり、温泉施設の利用などのエピソードがあればよりレジオネラ肺炎を疑うことはできます。
関連:
【胸部】症例35の動画解説
関連:肺炎の広がり方による分類の解説動画
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
好中球↑というのがヒントかと思ってました。
『ここまでしかわからない』と自信を持っていえたらかっこいいですね。今日で年内最後でしょうか?皆様良いお年を!
アウトプットありがとうございます。
>好中球↑というのがヒントかと思ってました。
もちろんこれもヒントになりますね。
>今日で年内最後でしょうか?皆様良いお年を!
いえいえ。31日まであります(鬼)
この症例は、「①磨りガラス影と浸潤影が混在した大葉性肺炎。②磨りガラス影と浸潤影の境界が比較的明瞭。③浸潤影が気管支に沿って見られる。」などの特徴的な所見がそろっているため、レジオネラ肺炎を第1候補としました。
『新 胸部画像診断の勘ドコロ (MEDICAL VIEW)』より。
アウトプットありがとうございます。
『新 胸部画像診断の勘ドコロ (MEDICAL VIEW)』からの記載ありがとうございます。
>レジオネラ肺炎を第1候補としました。
そうなんですね。なかなかこれだけでレジオネラと言い当てるのは難しいかもしれませんが、
これらの所見を丁寧に拾うとよりレジオネラぽいと言えるわけですね。
肺の画像はなかなか断定が難しいと思っていましたが、きっちりと所見を確認して、レジオネラにたどり着いている方がいる事が驚きです!
やっぱり丁寧な読影が重要なのでしょうね
アウトプットありがとうございます。
実際は難しいと思います。
私も今回のケースでは大葉性肺炎(肺胞性肺炎)とまでしか言えないですね(^_^;)
レジオネラの指摘は全く出来ませんでした。しかし大葉性肺炎やエアブロンコグラムなどから細菌性肺炎っぽいなと思えただけで、初期の自分からしたら大幅な成長だと正直喜んでいます。
アウトプットありがとうございます。
>しかし大葉性肺炎やエアブロンコグラムなどから細菌性肺炎っぽいなと思えた
とりあえずはここまでで十分だと思います。
レジオネラ肺炎はなぜかNaが下がると聞いたことがあります。
もしわかればNaの値を教えてもらえませんか。
アウトプットありがとうございます。
Na 130、K 4.3、Cl 93、Ca 9.0です。
おっしゃるように確かに少し下がっていますね。
レジオネラの症例を見たことがないので今回も勉強になりました、どうもありがとうございます。
尿中抗原検査に関して、2019年2月にレジオネラのすべての血清型を検出できるキットが旭化成ファーマから販売開始されたみたいです。現場でどの程度採用されているかは存じ上げませんが…(>_<)
https://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/news/2018/me190128.html
アウトプットありがとうございます。
>2019年2月にレジオネラのすべての血清型を検出できるキットが旭化成ファーマから販売開始されたみたいです。
そうなんですね!より確定診断に近づけますね。補足ありがとうございます。
お世話になっております。今回の浸潤影は一部メロンの皮様のcrazy paving patternの領域があるようにもみえたのですが、如何でしょうか?
また申し訳御座いませんが、見忘れた動画(33)と復習したい動画(29.30)があります。再度閲覧したいのですが可能でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>今回の浸潤影は一部メロンの皮様のcrazy paving patternの領域があるようにもみえたのですが、如何でしょうか?
おっしゃるようにそのように見えるところもありますね。
baseに気腫性変化があるためだと考えられます。
症例29で見たものにも少し類似しますね。
>見忘れた動画(33)と復習したい動画(29.30)があります。再度閲覧したいのですが可能でしょうか?
解答ページはリンクが切れませんので、回答提出後に来ているメールから確認いただけます。
もし期限切れで回答提出していない場合は、10症例ごとにお渡ししているpdfでご確認ください。
いつもありがとうございます。43,44/142で浸潤影の部分の気管支が蛇行してみえたので牽引性気管支拡張と思ったのですが、如何でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
確かに蛇行して拡張していますので、牽引性気管支拡張と表現して良いと思います。
ただし、間質性肺炎で見られる線維化による牽引性気管支拡張とは異なる病態かもしれません。
経過を追うと元に戻る牽引性気管支拡張かもしれません。
今回の症例も肺気腫がありますので、肺炎部の表現にswiss cheese appearanceあり、としてもいいですか。
アウトプットありがとうございます。
確かに綺麗なコンソリデーションではなく、かつ気腫性変化がありますので、swiss cheese appearanceと表現してもいいと思います。