【胸部】症例31
【症例】50歳代女性
【主訴】咳嗽
【現病歴】2週間前から咳嗽あり、少量の痰を伴うため来院。
【既往歴】6ヶ月前に乳癌にて左乳房部分切除術施行された。4~5ヶ月前に術後照射50Gy施行。
【身体所見】意識清明、BT 37.5℃、BP 113/72mmHg、HR 84bpm、RR 16、SpO2 98%(RA)、肺音:清、腹部:異常所見なし。
【データ】WBC 7100、CRP 3.18
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まず胸部レントゲンから見ていきましょう。
左中肺野に斜め方向の線状の浸潤影を認めています。
これまで見てきたような画像とは少し異なる印象ですね。
また、左下肺野でやや濃度上昇を認めています。左右差を見れば気づけますね。
次に胸部CTを見てみましょう。
左前胸壁直下に胸壁沿いの浸潤影を認めていることがわかります。
分布としては、左上葉から舌区にも認めています。
注目すべきは非常に胸壁沿いの直線的な陰影であるということです。
これまで見てきたような経気道性の分布である、気管支肺炎のパターンや肺胞性肺炎のパターンとは異なりますね。
このような陰影を見た際にまず考えなければならないのが、放射性肺炎(放射性肺臓炎)です。
既往にもありますが、左乳腺に術後の跡があり、温存療法後であることが分かります。
そして、その後放射線治療がされたことが推定されます。
診断:放射性肺炎(放射性肺臓炎)(radiation pneumonitis)
※呼吸器科入院となり、ステロイドによる治療がなされました。
4ヶ月後CTを見てみましょう。
左胸壁沿いの浸潤影は消失し、索状影となり収縮していることがわかります。
軽微ではありますが、放射線線維症(radiation fibrosis)の状態ということができます。
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【胸部】症例31の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
放射線肺臓炎、放射線肺線維症、治療後器質化肺炎を曖昧に認識していました。今回、再確認ができたと思います、ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
整理されたようでよかったです。おっしゃるようにその3つがあって時期によってまた出現の仕方が異なりますね。
今回は接線照射でいかにも放射線が当たったような角度で分かりました。食道などの放射線治療後で間質性肺炎の分布が両側性で幹部とかだと自己免疫や粉塵性と鑑別しにくいケースもありそうですね。
アウトプットありがとうございます。
>いかにも放射線が当たったような角度
そうですね。ここが大事でヒントになりますね。
>食道などの放射線治療後で間質性肺炎の分布が両側性で幹部とかだと
この場合は、前後方向でわかりやすいことが多いですが、ややこしいこともたまにありますね。
放射線治療の線量分布を医師が確認しやすい状況にない施設はジジさんからもあったように食道照射の際は想像で考えないといけないので大変ですね。乳腺や縦隔付近は要注意ですね。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>放射線治療の線量分布を医師が確認しやすい状況にない施設
おっしゃるとおりですね。他院で放射線治療されたケースですとなおさらですね。
やはり、分布は常に意識する必要がありますね。
実際に経験したことがまだないです。病歴に注意しないといけませんね
アウトプットありがとうございます。
>分布は常に意識する必要がありますね
ですね。
>実際に経験したことがまだないです。
乳腺温存療法後の方だとかなりの頻度で、放射線線維症は見ることができますので、また探してみてください。
放射性肺臓炎はたまにあります。
エピソードや既往から放射線治療によるものと推測はできましたが実際の画像を見るのは初めてでした。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>エピソードや既往から放射線治療によるものと推測はできました
分布が照射範囲になっていますので、すごく特徴的ですね。
ただの照射後変化と肺臓炎の違いが難しいです。
照射野外に出ていたら肺臓炎だと思うのですが。
臨床所見と併せて判断でしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>ただの照射後変化と肺臓炎の違いが難しいです。
同じく照射野に形成されますが、肺臓炎を起こしていない場合は通常ここまでコンソリデーションを来しません。
単なる照射後変化にしてはコンソリデーションが目立ちますね。
どこからが肺臓炎なのかという境界は難しいところですが・・・
あるいは照射後変化で症状などを来さないものも、軽度な肺臓炎を理解した方がいいかもしれません。
また照射野外に陰影が出現した場合は、放射線治療後の器質化肺炎を考えます。
いつもおまけをありがとうございます。
胸部レントゲンで左下肺野のすりガラス影というか、濃度上昇はCTではあまり反映されていないようですが、
放射線による肺臓炎が僅かにあると考えていいのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>胸部レントゲンで左下肺野のすりガラス影というか、濃度上昇はCTではあまり反映されていないようですが
CTでも舌区のコンソリデーションはかなり下の方まで認めていますので、レントゲンではそれを反映した濃度上昇と考えることができます。
1)コンソリデーションが目立つということですが、気管支が拡張しているように見えて、これも放射線照射による構造変化でしょうか?
2)放射線治療とは無関係の所にできる陰影の原因に抗酸菌症などを挙げられましたが、これは放射線治療に特徴的という事でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>1)コンソリデーションが目立つということですが、気管支が拡張しているように見えて、これも放射線照射による構造変化でしょうか?
加療後には目立っていないので一時的にそのように見えるだけだと思います。
>2)放射線治療とは無関係の所にできる陰影の原因に抗酸菌症などを挙げられましたが、これは放射線治療に特徴的という事でしょうか?
抗酸菌症ではなく、器質化肺炎や慢性好酸球性肺炎を挙げています。
ただし、女性の場合で中葉舌区に陰影を認めた場合はおっしゃるように非結核性抗酸菌症も考慮します。ここまでのコンソリデーションになることは稀ですが。