【胸部】症例12

【胸部】症例12

【症例】50歳代男性
【主訴】起坐呼吸
【現病歴】本日朝からピンク色の痰が出現し、同時に息苦しくなってきたため、当院救急外来受診。歩いているときに特に症状あり。
【既往歴】拡張型心筋症(10年前に入院歴あり)、心不全NYHA Ⅱs、脂肪肝、高脂血症
【内服薬】コバシル、アーチスト、クレストール、フェブリク、エパデール
【生活歴】喫煙:11-20本/日×35年、飲酒:洋酒2合/日×5日/週
【身体所見】意識清明、表情良好、BT 36.9℃、BP 130/69mmHg、P 103回/min、SpO2 93%(RA)、胸部:S1→S2→S3-S4-、Wheeze crackle聴取せず。四肢:前脛骨部にpitting edemaないが靴下の跡は散見される。足背動脈は良好に触知する。
【データ】WBC 9500、CRP 0.28、BNP 829.5

画像はこちら

8ヶ月前にレントゲンが撮影されていましたのでそれと比較してみましょう。

そうすると共通して心拡大があることがわかります。

ベースに心不全があることが示唆されます。

前回との違いは、両側上肺野の血管陰影の増強がある点、peribronchial cuffingがある点です。
※あとは、前回は右に横隔膜がやや挙上しています。

上肺野の血管陰影の増強は、肺血流の再分布を示唆する所見であり、通常レントゲン画像では下の方が血管陰影が強いのですが、肺うっ血により上の方の血管陰影が目立つようになります。

また、peribronchial cuffingというのは、レントゲンとタンジェントの方向を向いているB3bの気管支の周りの間質陰影が増強する(つまり、気管支血管束肥厚)ことを示唆する所見です

次に、CTを見てみましょう。

両側上葉に小葉間隔壁の肥厚および中枢側に軽度すりガラス影を認めています。

肺門部では中枢側優位なすりガラス影がより明瞭です。

また気管支血管束肥厚、両側胸水を認めています。

心拡大は軽度認めています。

今回はCTの冠状断像が再構成されていますのでそれを見てみましょう。

すると胸膜に達する線状影を認めており、小葉間隔壁の肥厚であることがわかります。

レントゲンで下肺野の外側でこの線を認めた場合、Kerley’s B lineがあるといいます。

この正体は小葉間隔壁の肥厚であるということです。

所見をまとめますと、

  • 小葉間隔壁肥厚・気管支血管束肥厚→間質性肺水腫
  • すりガラス影→肺胞性肺水腫

であり、間質性肺水腫に加えて肺胞性肺水腫も軽度ですが見られるということが画像からわかります。

 

拡張型心筋症があることからも、拡張型心筋症によるうっ血性心不全(心原性肺水腫)を疑う所見です。

 

診断:心原性肺水腫

 

※心エコーでEF 10-15%と著明低下あり。循環器内科に入院となり、加療されました。hANP静注を0.025γにて開始。ダイアート60mg、スピロノラクトン25mgを開始し、体重が4kg減少。体重が落ち着いたところでCAGを施行しましたが、冠動脈に有意な狭窄は認めなかったため、入院2週間後に退院となりました。

 

関連:

【胸部】症例12の動画解説

 

肺水腫の画像所見の解説動画

お疲れ様でした。

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