【頭部】TIPS症例23

【頭部】TIPS症例23

【症例】30歳代女性
【主訴】特になし
【現病歴】7日前に自己転倒し他院受診。頭部CT撮影され異常を指摘され、当院紹介受診となる。転倒後に頭痛が増悪したり、視力障害が生じたりということはない。
【既往歴】慢性頭痛(片頭痛の疑い)
【内服薬】なし
【身体所見】意識清明、BT 36.1℃、HR 69bpm、BP 113/64mmHg、SpO2 98%(RA)、神経学的所見に特記すべき異常所見なし。

画像はこちら

CT

異常所見は?

トルコ鞍内の背側に高吸収域を認めています。

CTの矢状断像の再構成においてもトルコ鞍内の背側に高吸収を確認することができます。

高吸収といえば、出血でしょうか?

出血とすると下垂体に出血を認める下垂体卒中の可能性があります。

臨床症状は、

  • 明らかな神経脱落症状なし。
  • また突然の頭痛・視野障害などの下垂体卒中を疑うエピソードを認めず。

ということでしたが、下垂体卒中の可能性を否定するために、MRIが撮影されました。

MRI

まず下垂体後葉はT1WIの高信号として指摘することができます。(やや骨髄の高信号との境界は不明瞭ですが)

つまり下垂体前葉と後葉の間にこの球形構造は存在していることがわかります。

同部に好発するのが、ラトケ嚢胞(Rathke’s cyst)です。

 

ラトケ嚢胞の内部の信号パターンは様々であり、脳脊髄液と同じようなパターンが多いですが、今回のように、

  • T1WIで高信号
  • T2WIで低信号

であることもあります。

 

診断:ラトケ嚢胞

 

※下垂体腺腫などを除外するために、下垂体ホルモン値も測定されましたが、異常を認めませんでした。また、その後のフォローのCTおよびMRIにおいても嚢胞のサイズに経時的な変化を認めませんでしたので、偶発的に発見されたラトケ嚢胞としてして診断されています。

関連:ラトケ嚢胞のMRI画像診断のポイントは?

 

【頭部】TIPS症例23の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。