先に結論:ラトケ嚢胞のMRI
- ラトケ嚢胞(英語:Rathke’s cleft cyst)は、下垂体ができるときの名残の袋が残ったもので、腫瘍ではありません。下垂体の前葉と後葉の間にでき、多くは無症状で偶然見つかります。大きいと頭痛・視野障害・ホルモンの異常を起こすことがあります
- MRIでは境界のはっきりした丸い袋で、中身の濃さにより信号はさまざまです。中に造影されない小さなかたまり(waxy nodule:T1で白く、T2で黒い)があれば、ラトケ嚢胞にかなり特徴的です
- 壁が厚く造影される・石灰化が多い・充実部分がある場合は、頭蓋咽頭腫や嚢胞性の下垂体腺腫を考えます
- 無症状で小さいものはMRIで経過観察が基本で、症状があるときは手術を検討します
※見えにくさ・視野が狭い感じや、ホルモンの異常を指摘されたときは、脳神経外科・内分泌内科で相談してください。
ラトケ嚢胞(Rathke cyst)
- 腺性下垂体の原基となるラトケ嚢内腔のRathke裂(cleft)が閉鎖せず、出生後も遺残した非腫瘍性の嚢胞。
- 非選択剖検1000例の検討では、3.7%に2mm以上のRathke嚢胞が認められた。
- 一般人口の13〜33%にみられるとされる(Culver 2015)。
- 画像上、辺縁平滑で境界明瞭な嚢胞で、しばしば鞍内から鞍上部へ進展する。
- 無症状が多いが、時に視力・視野障害・神経内分泌不全症状あり。
- 下垂体前葉と後葉の間に存在する、時に鞍上部。剖検例の検討では、正中に位置する2mm以上の偶発病変の87%がRathke嚢胞で、側方に位置する病変の74%は腺腫であった。病変の位置(正中か側方か)も鑑別の手がかりになる。
ラトケ嚢胞のMRI画像所見
- 内部の蛋白濃度に応じてさまざまな信号を呈し、経過観察中に嚢胞の信号変化を認めることもある。内部は不均一なこともある。
- T2強調像では等〜高信号のことが多い(Byun 2000)。
- 嚢胞壁は1層の上皮細胞であり、増強効果はない。辺縁部に増強効果がみられることがあるが、多くは圧排された下垂体に相当する。また慢性炎症の合併など。
- 手術で確かめられた13例中10例(77%)で、内部に増強効果のない嚢胞内結節が認められ(Byun 2000)、T1強調像で高信号、T2強調像で低信号を示す(嚢胞内にT2強調像低信号の物質を認めるのがかなり特徴的。これを充実成分と間違えないように!!Waxy noduleと呼ばれる1))。手術では黄色いろう状(waxy)の固まりで、病理では粘液の塊、主な成分はコレステロールと蛋白質だった(Byun 2000)。Rathke嚢胞に特徴的な所見である。
- 嚢胞壁に石灰化を認めることもある。頭蓋咽頭腫(エナメル上皮腫型)は石灰化の頻度が高く、鑑別点となる。
- 嚢胞壁は一層の上皮細胞で構成、原則として増強効果なし。(逆に嚢胞壁が増強されたら、周囲の正常下垂体組織、慢性炎症の合併を考える。この場合、頭蓋咽頭腫との鑑別は困難なことがある)
症例 40歳代女性

T2強調像の横断像です。
トルコ鞍の後方に類楕円形の嚢胞性病変を認めています。

T2強調画像の矢状断像です。
トルコ鞍内に嚢胞性病変を認めています。

T1強調画像の矢状断像です。
下垂体の後葉はT1強調画像で高信号を示しますので嚢胞によりやや圧排されています。
ラトケ嚢胞を疑う所見です。
トルコ鞍部近傍の嚢胞性病変の鑑別
など
ラトケ嚢胞と嚢胞性下垂体腺腫の見分け方
| 所見 | ラトケ嚢胞 | 嚢胞性下垂体腺腫 |
|---|---|---|
| 嚢胞内結節(waxy nodule) | 多い | 少ない |
| 液面形成(fluid-fluid level) | 少ない | 多い |
| 隔壁 | 少ない | 多い |
| 位置 | 正中 | 正中からずれる |
出典:Park 2015
ラトケ嚢胞でよくある疑問(Q&A)
Q1. ラトケ嚢胞は大きくなりますか?
A. 多くは変わりません。MRIで経過をみた75例では、57%で大きさが変わらず、28%で大きくなり、15%で小さくなりました(Culver 2015)。
Q2. 治療は必要ですか?
A. 無症状で小さいものは、MRIとホルモン検査で経過をみるのが基本です。症状があるときは手術を検討し、再発は一般に少ないとされます(Hacioglu 2025)。
関連記事:下垂体腺腫とは?症状は?MRI画像診断のポイントは?
参考文献:
- 1)Byun WM, Kim OL, Kim D. MR imaging findings of Rathke’s cleft cysts: significance of intracystic nodules. AJNR Am J Neuroradiol. 2000;21(3):485-8. PubMed
- 画像診断 Vol.42 No.11 増刊号 2022 P34-5
- Teramoto A, Hirakawa K, Sanno N, et al. Incidental pituitary lesions in 1,000 unselected autopsy specimens. Radiology. 1994;193(1):161-4. PubMed
- Bonneville F, Cattin F, Marsot-Dupuch K, et al. T1 signal hyperintensity in the sellar region: spectrum of findings. Radiographics. 2006;26(1):93-113. PubMed
- Park M, Lee SK, Choi J, et al. Differentiation between Cystic Pituitary Adenomas and Rathke Cleft Cysts: A Diagnostic Model Using MRI. AJNR Am J Neuroradiol. 2015;36(10):1866-73. PubMed
- Culver SA, Grober Y, Ornan DA, et al. A Case for Conservative Management: Characterizing the Natural History of Radiographically Diagnosed Rathke Cleft Cysts. J Clin Endocrinol Metab. 2015;100(10):3943-8. PubMed
- Hacioglu A, Tekiner H, Altinoz MA, et al. Rathke’s cleft cyst: From history to molecular genetics. Rev Endocr Metab Disord. 2025;26(2):229-260. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

無料講座
腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
