
【頭部】TIPS症例16
【症例】40歳代男性
【主訴】ふらつき
【現病歴】今朝起床時ふらつきがありまっすぐ歩けなかった。回転性のめまいではなかった。耳鳴、難聴はなかった。
画像はこちら
FLAIRで異常信号を認めていますがこれは何?
FLAIRで脳幹腹側や中脳水道〜第4脳室に異常な高信号を認めています。
高信号は第3脳室や両側側脳室前角(モンロー孔に相当する部位)にも認めています。
いずれもくも膜下腔に認めています。
くも膜下腔にFLAIRで高信号を認めた場合は、最も注意しないといけないのは、そう
くも膜下出血
です。
では、これはくも膜下出血でしょうか?
(CTが撮影されておらず、提示できないので恐縮ですが)このような特徴的な部位に高信号を認めた場合、ほとんどの場合は、
髄液の流れによるアーチファクト
です。
※今回FLAIRで側脳室などを見るとわかりますが、完全に髄液の信号が抜けておらず、そういう意味では良い画像とは言えません。その分このアーチファクトがより明瞭になっているのでこの症例を提示しました。
さて、このアーチファクトはT2WIでも認めます。
FLAIRほど明瞭ではないが、T2WIでもこれらの部位に淡い低信号を認めていることが分かりますね。
このような脳幹の腹側や、モンロー孔の部位はこの髄液の流れによるフローアーチファクトが出やすい場所ですので覚えておきましょう。
診断:髄液によるフローアーチファクト
※特記すべき異常所見なし、TIAの可能性は低いとされ、再度同様の症状があれば来院するよう指示し、帰宅となっています。皮膚科で当院にかかりつけとなっていますが、その後神経内科の受診はありません。
関連:
【頭部】TIPS症例16の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
モンロー孔でよく見る気がしますが、その先の脳室でもFLAIR高信号だとややこしく感じます。鑑別相手にSAHが挙がるだけに、しっかりと見極めたいと思います。
アウトプットありがとうございます。
>モンロー孔でよく見る気がします
ですね。しばしば見られます。
脳幹の腹側もその目で見るとよく見られます。
FLAIRでの髄液の流れのアーチファクトはよく見かけます。(正直、ここまでヒドいと再撮影をしてほしいと感じますが…。髄液の流れのアーチファクトは、装置によって設定を変更すると抑制が可能です。)
脳脊髄液の信号上昇に関しては、何らかのパラメータを変更した結果、TRが変わって、TI(Null Point)設定の不良が起きてしまったと想像できます。
とは言っても…検査に追われて、時間がオーバーしている場合など、「この程度のアーチファクトなら…」とそのまま提出してしまう場合がありますので反省したいと思います。
アウトプットありがとうございます。
>(正直、ここまでヒドいと再撮影をしてほしいと感じますが…。髄液の流れのアーチファクトは、装置によって設定を変更すると抑制が可能です。)
(^_^;)ですね。救急の時間帯かで再撮影は行われていませんでした。
>TRが変わって、TI(Null Point)設定の不良が起きてしまったと想像できます。
このあたりは技師さんの方が遙かに詳しいと思いますが、書籍にもTI(Null Point)設定の不良と記載がありました。
CSFによるアーチファクト紛らわしいですね…撮影方法を工夫して自信を持ってくも膜下出血と区別できるように意識したいです。
アウトプットありがとうございます。
>撮影方法を工夫して
そうですね。場合によってはその場の判断で再撮影もしていただけると助かるケース(くも膜下出血を除外するためにあれこれ検査などをしなくて済む)もあるかと思います。
たまに見かけますが、あまり気にしないようにしてました。
SAHはクリティカルな疾患なので、困りますね
アウトプットありがとうございます。
>あまり気にしないようにしてました。
flowと知っての上でならば問題ありません。知っての上でなら・・・・(^_^;
今回のように条件が悪い場合は撮影し直して貰った方がいいかもしれませんね。
CTも撮影されていたらチェックしたいところです。
こんにちは、いつもお世話になっております。
今回は正答できました!
頭部救急編でもでてきましたが、「SAH(とくに亜急性期)はFLAIR(T2STIRも)が有効である」ということを、もう一度再確認できてよかったです。
たしかに、そっくりなので、知っておかなければ…なアーチファクトですね。
アウトプットありがとうございます。
>「SAH(とくに亜急性期)はFLAIR(T2STIRも)が有効である」ということを、もう一度再確認できてよかったです。
そうですね。脳表部分の評価にはT2WIよりもFLAIRが有効ですね。SAHではFLAIRやさらにはT2*WI,SWIが非常に有用です。
>知っておかなければ…なアーチファクトですね。
脳幹周囲などしか出現しない本物のSAHもありますので、必ず知っておくべきアーチファクトですね。
フローアーチファクトという言葉がかっこよくていいですね。
当院はMRIがないのですが、CTに生かしたり、臨床の勉強にもなるので、楽しんで学ばせて頂いています。
アウトプットありがとうございます。
>フローアーチファクトという言葉がかっこよくていいですね。
特にMRIは困ったときには、「あ、アーチファクトですかね」となりがちですが、
具体的に何のアーチファクトなのか分かっていないとですね。
フローアーチファクト覚えておいてください。
でも、MRIはないのですね(^_^;)
>CTに生かしたり、臨床の勉強にもなるので、楽しんで学ばせて頂いています。
ありがとうございます。半分くらいはCTの症例ですので、楽しんでいただけたら幸いです。
この辺になってくると異常な場所を見つけるだけで学生には精一杯です^^;
アーチファクトがたくさん出てきて、そろそろMRIの原理も勉強しなくちゃなと思い、『MRIに強くなるための原理の基本やさしく、深く教えます』を読んでやっていますが早くも挫折の気配が。。
傾斜磁場、K空間、位相エンコード、周波数エンコード、フーリエ変換あたりから、分からなすぎて本の「やさしく」のタイトルにイラッとしてます笑
何かおすすめの書籍があったら教えていただきたいです。
p.s. 息子さんの帽子のサインの違い、奥様、よく気が付きましたね。(素晴らしい観察眼)
アウトプットありがとうございます。
>学生には精一杯です^^;
学生の先生でしたか(^_^;)
救急などで画像に携わっていないとちょっとこのあたりはきついかもしれないですね。
>『MRIに強くなるための原理の基本やさしく、深く教えます』を読んでやっていますが早くも挫折の気配が。。傾斜磁場、K空間、位相エンコード、周波数エンコード、フーリエ変換あたりから、分からなすぎて本の「やさしく」のタイトルにイラッとしてます笑
MRIの原理系の本の「やさしく」は信用してはダメです。
私も何度か挑戦しましたが、無理でした。
わかりやすい本を参考にしてT1WI,T2WIとは何なのかを、かなりかみ砕いたのがこちらの動画です。
こちらの最後の参考書籍程度を理解すれば十分だと思います。
(ぶっちゃけ原理を理解したところであまり意味がな)>息子さんの帽子のサインの違い、奥様、よく気が付きましたね。(素晴らしい観察眼)
そうなんです。
先日の野球の練習の時に変えてもらったらしいですが、相手も気づいてなかったとのことです・・・。
FLAREで両側側脳室の外側の線状構造は何でしょうか。
15/24
アウトプットありがとうございます。
放線冠を走行する神経を見ていると思われます。T2WIでも見えますね。
画像診断ツールのT2WIでも認めていますね。
http://medicalimagecafe.com/tool/head/01.html
いつもお世話になっております。
副所見として第3脳室とは隔てられた中間帆腔がある様に見えますが、いかがでしょうか?
また、読み方はチュウカン”ハン”クウで、正しいでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
この程度ですと、しばしばありますので中間帆腔とは取らないと思われます。
おにぎり型で目立つ場合に慌てないことが大事ですね。
チュウカン”ハン”クウで正しいと思われます。
そうなんですね。承知しました。
ご回答くださりありがとうございました。