【頭部】症例64-2 解答編

MRIが撮影されました。

腫瘤はDWIでやや高信号、ADCは信号低下を認めません。

また、T1WIでやや低信号、T2WIでは高信号でflow voidに富むことが分かり、周囲浮腫性変化を認めています。

今回脳実質外腫瘍のように見えますが、脳実質外腫瘍の画像所見としては、

  • 腫瘍と脳実質の間にくも膜下腔(髄液)の入り込み:CSF cleft、CSF rim sign
  • 腫瘍と脳実質の間に血管の入り込み:CSF cleft内のflow void(脳表に押しつけられた血管)
  • 脳実質の偏位、圧排所見:white matter buckling

などを参考にします。

今回の症例も少し大げさに右側の様にシェーマ化してみますと、

  • 腫瘤と脳実質との間には髄液の水信号の入り込みがある。
  • 髄液の水信号の入り込みには血管構造を疑うflow voidがある。
  • 脳実質の圧排所見がある。

ということがわかり、脳実質外腫瘍を示唆する所見です。

また腫瘍は均一に著明に造影されていることがわかります。周囲の硬膜にも造影効果を認めています。

また腫瘍辺縁を上下に見ていくと、dural tail signを疑う所見を認めています。

これらから疑われる腫瘍は・・・・

髄膜腫

ですね。

 

診断:髄膜腫疑い

 

脳血管造影が施行されました。

アンギオのレポートから抜粋します。

  • 左ECA蛇行強い。
  • 左MMA anterior br.およびposterior br.の多数のconvexity br.から腫瘍造影あり。腫瘍全体が強く染まる。
  • 左MMA皮質枝からの腫瘍造影あり。腫瘍前縁と後縁が染まる。
  • 左ACAからのfeederは明らかではない。

左外頸動脈から分岐する顎動脈からの中硬膜動脈(MMA:Middle meningeal artery)の前枝と後枝が中心となり、腫瘍濃染を認めていることがわかります。

これらの血管はMRAでも確認できます。

元画像の一番下のスライスでは、外頸動脈から中硬膜動脈、浅側頭動脈へと分岐しているところから始まります。

頭方へ進むにつれて、中硬膜動脈(MMA)は前枝と後枝へと別れ、とくに前枝がこの髄膜腫に入っていく様子がわかります。

MIP像でも範囲を広げると、内頸動脈の外側に、拡張した中硬膜動脈および前枝、後枝が描出されており、それらが髄膜腫(MIP像では髄膜腫そのものは見えませんが)に入っていく様子が分かりますね。

逆に、このようなMIP像を見たら中硬膜動脈が拡張しており異常であるということに気付かなければなりません。

 

※その後、腫瘍栄養血管塞栓術および開頭腫瘍摘出術が施行されました。

※病理結果は、Meningothelial meningioma,WHO gradeⅠであり、最も低悪性度のものでした。

術後のフォローのMRI(初回から2ヶ月半後)です。

髄膜腫は摘出されており、浮腫性変化も消失しています。

左の硬膜の肥厚および造影効果を認めています。左右差を見れば明らかですね。

一番下のところの術後変化でこのように硬膜が肥厚し、DA patternの造影効果を占めることがあります。

術後のフォローMRIを提示したのはこれを見て欲しかったからです(^_^;

また今回のように脳腫瘍が救急外来で発見されることがあるという点も今一度覚えておきましょう。

関連:

【頭部】症例64-2の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

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