
【頭部MRA】症例27
【症例】40歳代女性
画像はこちら
まず正常変異として、症例13でみたものがありますね。
右前大脳動脈のA1の近位からもう一本、中大脳動脈が分岐している様子が分かります。
近位起始副中大脳動脈と呼ばれる正常変異でしたね。
さて、本題です。
MRAのMIP像で、右後大脳動脈(PCA)の遠位と連続する血管の塊を認めています。
元画像やT2WIで見てみますと、
無数の点状〜蜂巣状の構造として
- MRA元画像→高信号
- T2WI→低信号のflow void
として描出されていることが分かります。
この点状〜蜂巣状の構造をnidus(ナイダス)と言い、脳動静脈奇形を示唆する所見です。
また、MRAのMIP像で見たように、この動静脈奇形は右の後大脳動脈をfeederとしていることが分かります。
脳血管造影がなされました。
左の椎骨動脈造影で、右後大脳動脈が流入動脈(feeder)となり、nidusが描出されて、その後複数の流出静脈(drainer)が描出されている様子がよく分かります。
※今回は左の後大脳動脈が左内頸動脈-後交通動脈から血流を得ている胎児型で、左右の椎骨動脈が合流した脳底動脈は基本的に全て右後大脳動脈に流入しており、左椎骨動脈造影で、右後大脳動脈が描出されていると考えられます。
診断:脳動静脈奇形
※無症候性でしたが、γナイフ治療が必要とのことでしたが、治療をしようとしたところ患者さんの妊娠が判明し、治療が延期されています。しばらく当院でフォローされていましたが、その後は他院紹介となっております。
関連:脳動静脈奇形(AVM)とは?MRI画像診断のポイントは? ←今回の症例も掲載あり。
【頭部MRA】症例27の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
脳動静脈奇形は、MRAでは確認できず、T2のフローボイドで抽出されることがあるので注意しています。
それから、病変と正常変異を一度に読影しようとすると病変を見落としそうになるので、最近は病変と正常変異を別々に読影しています。
アウトプットありがとうございます。
>T2のフローボイドで抽出されることがあるので注意しています。
ですね。脳動静脈奇形に限らず、静脈奇形や海綿状血管腫などもT2WIのフローボイドが非常に参考になりますね。
>病変と正常変異を一度に読影しようとすると病変を見落としそうになるので、最近は病変と正常変異を別々に読影しています。
そうですね。まずは全体を見て正常変異がないかをチェックして、動脈瘤好発部位などを見ていく方がいいかもしれません。
MCAの正常変異を見逃してしまいました。確かに自分の中で順番を決めて「正常変異」「動脈瘤」「その他疾患」など分けて観察したほうが良さそうですね。
アウトプットありがとうございます。
異常を探しに行く目(見方)が主体となると、正常変異を含め全体構造を捉える目が薄れるのかもしれませんね。
両方大事ですね。
瘤などは意識してみるようになりましたが,正常変異は・・・
アウトプットありがとうございます。
正常変異は見落としても基本問題にならないですが、
左右の主幹動脈がきちんと1本ずつあるかはチェックしてみましょう。
この画像では側副血行路は全体的に発達していますでしょうか?
あいまいな表現ですが、MIP像をぱっと見たときになんか血管多いなと思いました。昨日のもやもや病の症例もぱっと見たときに同じように血管が多いなと思いました。しかしもやもや病で狭窄または閉塞を生じるとされるACA近位部,MCA近位部,ICA終末部は普通に描出されていることからもやもや病ではないとおもいましたが血管が多いという印象につられてこういうもやもや病もあるのかな?と思い誤答してしまいました… この画像をみて血管が多いな=側副血行路が発達しているなとおもったのは合っていますでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>この画像では側副血行路は全体的に発達していますでしょうか?
確かに全体的に血管がたくさんある印象を受けますが、3Tの装置で撮影されているためですね。
もやもや病でのもやもや血管が発達しているものとは異なります。
前回のもやもや病の症例は恐らく1.5Tで撮影されています。
もちろん今回も右後大脳動脈末梢はAVMがあるので血管が発達しています。
テスラ(T)によって見える末梢の血管がかなり異なることが分かりますね。
どこかにも書きましたが、現在外勤先で0.1Tの装置のMRIを読影していますが、主幹動脈さえきちんと描出されないことがあって困ることがしばしばあります(^_^;)参考程度にしかならないです。
前回のもやもや病にしても、今回のAVMにしてもなんとなく知っているけど、そして、たまに症例がやってきてドキドキしながら撮影しながら、たぶん、もやもや病だ、たぶんAVMだ、みたいなことを思ってしまっているので、今回の症例でしっかり知識を定着させて、自信を持って撮影できるようにしたいと思います。
そして、正常変異見逃していたので、初心忘るべからずで丁寧に見ていこうと思いなおしました(^_^;)
アウトプットありがとうございます。
>たぶん、もやもや病だ、たぶんAVMだ、みたいなことを思ってしまっているので、今回の症例でしっかり知識を定着させて、自信を持って撮影できるようにしたいと思います。
頻度が高いものではないのと、血管の奇形は苦手意識を持たれる方が多いので敬遠しがちかもしれませんね。
是非この機会にお持ちの教科書も該当部位を読んでいただければさらに理解が深まるかと思います。
残り3症例になりましたが、引き続きよろしくお願いします。
そうですね
職場に置いている本も読みながら整理しようと思います。
MRAはあと3症例ですか
そうと分かるとなんだか名残惜しいです(笑)
こちらのほうこそ引き続きよろしくお願いします。
是非整理してみてください。
>そうと分かるとなんだか名残惜しいです(笑)
正常変異を含めてですが、かなり絞り出した30症例です。
これ以上ネタがありません(^_^;)
残りよろしくお願いします。
いつもありがとうございます。
AVMにおけるfeederやdrainerはどの程度指摘できれば良いのですか?
今回のような画像をみて、AVMというのはわかるのですが、血管の走行が複雑になってしまいfeederやdrainerが複数あったりすると難しくなってしまいます、、。
いざ手術を施行する方針となると、MRI以外にも血管造影など他のモダリティを含めて判断したり術中にも撮像したりして確認するんだろうなとは思うのですが、AVMをその患者さんで初めて発見した際に、放射線科の先生としては具体的にどの程度指摘すべきかありましたら教えてください。
アウトプットありがとうございます。
>AVMにおけるfeederやdrainerはどの程度指摘できれば良いのですか?
この評価には脳血管造影(脳アンギオ)>>>MRI ですので、MRIではAVMがあることと、大きなものが評価できたらよいです。
MRIで見つけて脳血管造影(脳アンギオ)で精査・評価するという流れですね。
いつも勉強させていただいております。ありがとうございます。
今回、左後交通動脈-後大脳動脈辺りの動脈に内側に突出する部分が有ります。
これは動脈瘤ではないのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>左後交通動脈-後大脳動脈辺りの動脈に内側に突出する部分が有ります。
少し膨隆がありその先端から後交通動脈の分岐を認めていますので、症例7で出てきた漏斗状拡張になりますね。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/488
ご回答くださりありがとうございます。か細い動脈がスライド71から76にかけて内側に出ていますね。気づきませんでした。
もう一つ質問させてください。
右後交通動脈ー右後大脳動脈ー脳底動脈でループを形成していますが、これは何か名前が有るのでしょうか?
1点質問させてください.
右PCAにあるのは比較的大きなfenestrationでしょうか(MRA元画像で74-84/162).
アウトプットありがとうございます。
右PCAとSCAがあたかもfenestrationを形成しているように見えているようです。
いつもありがとうございます。
副所見の方なのですが、重複中大脳動脈なのか近位起始副中大脳動脈が判断できませんでした。
どちらも末梢のある程度の領域を還流しているように見え、どちらがメインか分かりませんでした。
この2つは鑑別できる必要はあるのでしょうか。また今回近位起始副中大脳動脈と言えるのは何故でしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>重複中大脳動脈なのか近位起始副中大脳動脈が判断できませんでした。
確かにどちらとも取れそうですね。
>この2つは鑑別できる必要はあるのでしょうか。また今回近位起始副中大脳動脈と言えるのは何故でしょうか。
鑑別できる必要は特にありません。
近位起始副中大脳動脈と記載をしたのですが、1本目のMCAと2本目のMCAが出る間が結構太いため、むしろ重複中大脳動脈と取った方が適切かも知れませんね。
いつもお世話になっております。
1点質問させてください。
もやもや病とAVMの画像所見が、どちらもMRAで血管が異常にたくさんある・T2で点状のflow voidありという共通点があり、いつも迷ってしまいます。
好発部位(もやもやはICA終末部、AVMはテント上)や血管径(もやもや<AVM)やMRAの見た目で見分けるという認識で合っていますでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>好発部位(もやもやはICA終末部、AVMはテント上)や血管径(もやもや<AVM)やMRAの見た目で見分けるという認識で合っていますでしょうか?
好発部位もですが、やはり血管径が全然異なります。
AVMはMRAのMIP像でも指摘できるほど太いですが、もやもや病は指摘できません。
T2WIの信号もAVMは蜂の巣のような明らかなflow voidとして認識できますが、もやもや病は内頸動脈周囲に非常に微細な低信号となります。