【頭部】症例61 解答編

【頭部】症例61

【症例】60歳代女性
【主訴】特になし
【現病歴】半年前に心原性脳梗塞で他院入院歴あり。その後他院にてフォローされていたが、近所である当院でのフォローを希望され、紹介受診となる。
【既往歴】心原性脳梗塞、心房細動、白内障
【生活歴】喫煙なし、機会飲酒
【内服薬】ファモチジン、エリキュース、酸化マグネシウム
【身体所見】JCSⅠ-2、左上下肢高度麻痺MMT1/5、車椅子。

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MRI

 

右前頭葉から側頭葉にかけて陳旧性脳梗塞後変化を認めています。

右被殻を中心とした高信号の周りには、縁取るような辺縁に低信号を認めており、脳梗塞に加えて脳出血を起こした(つまり、出血性梗塞を起こした)ことが推測されます。

さて、脳幹部などを見てみましょう。

すると、内包後脚→中脳大脳脚→橋→延髄と錐体路に沿って異常な高信号を認めていることがわかります。

拡大してみましょう。

T2WIでもわかりますが、FLAIRで今回はより明瞭です。

これはなにでしょうか?

錐体路に沿った脳梗塞後変化でしょうか?

 

ではなく、神経線維の変性を示唆する所見で、損傷を受けた神経の末梢部位にこのような信号を認めることがあり、

Waller(ワーラー)変性

といいます。

 

なかでも、今回のように大脳皮質・内包病変がある場合、大脳脚・延髄など錐体路に異常信号を認める頻度が多いです。

 

ちなみに錐体路は正常でも、DWI、FLAIR、T2WIなどで周りと比べて高信号を認めることがありますので、左右差などにも着目して、所見の取り過ぎには注意です。

こちらは40歳代女性の正常例です。

このように正常例でも錐体路は淡い高信号となりますので、これを病的と取らないことが重要です。
普段から自分の施設の装置の高信号の程度の特徴をよく見ておき、それと比較するようにしましょう。

 

 

診断:陳旧性脳梗塞+出血後変化+右錐体路にWaller変性

 

※Waller変性は、今回の症例のTOPICですが、必ず指摘しなければならない所見というわけではありません。脳梗塞後の変化の一つとして覚えておきましょう。

 

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【頭部】症例61の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

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