
【頭部】症例53
【症例】70歳代男性
【主訴】気分不良
【現病歴】本日4時間前より、職場にて作業中に回転性めまい、気分不良を生じた。ソファで横になっているところを同僚が発見。救急搬送となる。
【既往歴】メニエル病
【併存症】高血圧、脂質異常症、心房細動:いずれも未治療
【内服薬】なし
【生活歴】飲酒・喫煙なし。
【身体所見】意識清明、BP 192/93mmHg、HR 93/min、BT 36.5℃、SpO2 97%(RA)、瞳孔:3mm/3mm、対光反射+/+、四肢MMT:full
画像はこちら
MRI
右優位に脳室内出血を認めています。
出血源はよく見ると右の尾状核のようです。
尾状核出血は高血圧性出血のまれな原因として知られており、脳室穿破を来しやすいのが特徴です。
診断:右尾状核出血脳室穿破
今回見て頂きたいのは、尾状核出血も大事ですが、MRIの画像です。
血腫は
- T2WI→淡い高信号(ねずみ色)+一部低信号
- T1WI→等信号〜やや高信号
となっています。
MRIにおける脳出血の経時的変化は、CTと異なりちょっと複雑ですが、今回の上の信号パターンは、超急性期に相当します。
実際今回発症からほぼ4時間後にCTが撮影され、同じ日に直後にMRIが撮影されていますので、発症から24時間以内である超急性期の出血の所見としても矛盾しないことが分かります。
ちなみにT2WIで一部低信号を認めている部位は、デオキシヘモグロビンを示唆する所見であることがわかります。
また血腫はDWIで高信号、ADCで信号低下を認めており、凝血塊の粘稠度を反映していることが分かります。
診断:右尾状核出血脳室穿破(超急性期)
※CTで脳室内血腫により第3脳室〜第4脳室までpackされているため急性水頭症のリスクは高かったのですが、来院時は意識レベルclearで、保存的治療がなされました。意識レベル低下を認めた場合は脳室ドレナージを!とカルテに記載がありましたが、そのまま保存的に加療され、退院となりました。
※また脳血管造影(脳アンギオ)も施行されましたが動脈瘤や動脈奇形など明らかな出血源認めませんでした。
関連:
【頭部】症例53の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
MRIの出血信号は覚える自信がないので、表を用意しておいてその都度見るようにします。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。表を見ながら当てはめるで良いと思います。
超急性期出血のポイントはT2での「ねずみ色」なんですね。覚えて起きます。
そうですね。ねずみが特徴ですね!
今日もありがとうございます。
出血でMRIまで撮影する機会が今までなかったので貴重な経験ができました。ありがとうございます。
経時変化による信号変化、頭に叩き込みます。
しばらく続きますのでお付き合いください(^o^)
ありがとうございました。いつの日かCT⇒MRIが逆になればよいなと思っています。被ばくもないですし・・・。CTにおいて蓄積されたデータが偉大すぎるのがネックですね。個人的な意見は良いとしてMRIでしっかり見れるようになりたいものです。今回CTを先に見てなかったらどう思っていたんだろうかと思います。貴重な症例提示ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>いつの日かCT⇒MRIが逆になればよいな
脳梗塞を疑う症例では確かにそうですね。
外傷ならば被曝の問題はありますが、やはりCTですかね。
出血はやはりCTを見たくなるのでMRIの勉強がおろそかになりがちですが,今回の症例は記憶に残りやすく勉強になりました!
アウトプットありがとうございます。
まれにCTすっ飛ばして、MRIが撮影されることもありますし、
施設によってはMRI firstのところもありますので
超急性期の脳出血はMRIではこのように見えるということを覚えておいてください。
こんにちは!いつもお世話になっております。
MRA元画像で、右のMCAの起始部に気持ち後外方に突出する小さな瘤があるように思えて、そこから穿破して脳室内出血となったのだろうか?などとトンチンカンな解答をしてしまいました!
尾状核出血初めて知りました!覚えておきます。
アウトプットありがとうございます。
>尾状核出血初めて知りました!覚えておきます
まれな高血圧性出血ですが、尾状核にも出血が起こることがあり、さらには非常に脳室穿破する頻度が高いということは覚えておきましょう。
国家試験的にはいらないと思いますが(^_^;)
お世話になっております。
1点質問させていただきたいです。
CT横断像17スライス目の右側脳室脳室穿破内の低吸収域は何でしょうか?右尾状核出血の他に脳動脈瘤でもあるのだろうか?でもMRAでは脳動脈瘤はないし…と解決しなかったため、質問させていただきました。
アウトプットありがとうございます。
T2WIでは周囲血腫より高信号ですので、動脈瘤ではないですね。
理由は定かではありますが、ここだけ血腫からspareされているようです。
矢状断像のCTで見るとここだけでなくそのような場所はいくつかありそうですね。
お疲れ様です。
あまりメインの疾患と関係ないのですが、
MRA元画像のスライス65の右側頭葉の
内側にある円形の低信号域は
脈絡裂嚢胞でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>脈絡裂嚢胞でしょうか?
ではなくて血管周囲腔ですね。
この症例に実際に自分が出くわしたと考えた場合おそらくまずはCTを撮像し尾状核出血(高血圧性)→脳室内穿破と診断し(少なくとも救急では)MRIまで施行しないと思うのですが、動脈瘤やAVMなどを疑いMRIまで撮像した方が実際は良いのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>(少なくとも救急では)MRIまで施行しないと思うのですが、動脈瘤やAVMなどを疑いMRIまで撮像した方が実際は良いのでしょうか?
少なくとも救急ではMRIまではしなくて大丈夫です。
ただし、高血圧性出血の好発部位ではないので専門科(脳外科)では、さらなる精査(MRIや脳血管造影)がなされるのが一般的だと考えます。
クリニックで働いてるので、たまにCTをすっ飛ばしてMRIで脳出血が見つかることがあるのですが、
CTに比べ見慣れていないため、脳出血なのか?と思ってしまうことがあります(^_^;)
脳出血の経時変化による信号低下も覚えられそうにないため、コピーして机にはりつけています。
脳出血の時にあせらないためにもここで再確認しておこうと思います。
アウトプットありがとうございます。
>CTに比べ見慣れていないため、脳出血なのか?と思ってしまうことがあります(^_^;)
これは私もあります(^_^;)
CTならば明らかに出血でもMRIになると判断が難しくなることがありますね。
>脳出血の経時変化による信号低下も覚えられそうにないため、コピーして机にはりつけています。
そうですね。覚えるのも大変ですし、都度確認で良いと思います。
また、教科書通りの経時的変化にはならないこともあるので注意が必要ですね。