
【頭部】症例49
【症例】30歳代男性
【主訴】頭痛、喋りづらさ
【現病歴】10日前より頭痛を認めていたが市販の鎮痛薬で様子を見ていた。3日前に突然言葉が出にくくなり一時的に発語困難も認めていた。本日に数秒間の強直性痙攣が出現、その後不穏状態となり、救急搬送となる。
【既往歴】頚椎ヘルニア
【内服薬】なし。
【生活歴】喫煙2本/日、飲酒700ml/日、職業 車の販売(営業職)
【身体所見】見当識障害は認めないが、反応には若干乏しい。失語症、脳神経所見などにも特に異常は認められない。
画像はこちら
MRI
まずは頭部CTから見ていきましょう。
一見なにもなし!としてしまいそうですが、左前頭頂葉の脳溝がやや高吸収となっています。
左右差を見れば明らかで、本来見えるべきくも膜下腔が見えていません。
くも膜下出血(SAH)などが疑われます。
続いてMRI画像を見てみましょう。
FLAIRで左大脳半球の脳溝沿いに異常な高信号を認めています。
くも膜下出血(SAH)や髄膜炎を疑う所見です。
ただし、T2*WIでは同部位に異常な無信号域(低信号域)は認めていません。
もし出血ならば無信号域(低信号域)となるはずですね。
さらに同部は造影前のT1WIでははっきりしませんが、造影すると脳溝に造影効果を認めています。
これらから、くも膜下出血よりは、髄膜炎が疑われます。
今回の髄膜の造影パターンはこれまで見てきたパターンと異なりますね。
造影効果を認めるのは硬膜ではなく、軟膜のケース(PS pattern)となります。
このパターンを見たときに鑑別は以下のようになります。
髄液検査にて初圧20cmH20・細胞数220(単球86%)を認めました。
髄液検査を数回されており、検査の全てでキサントクロミ−などの所見もなく無色透明で細胞数はピーク時に1160と高値認めてました。
MRAでも血管病変は考えにくいとのことで、ウイルス性脳炎疑いでゾビラックス500mg×3回/日を開始されていました。
診断:髄膜炎疑い(ウイルス性疑い)
ちなみに、DWIですが、
FLAIRや造影T1WIを見た後にその目で見れば脳溝に淡い高信号を認めていますが、初見でDWIのみを見た場合は指摘は困難でしょう(^_^;
入院加療後14日後のMRIです(これが撮影されている最後の画像です)。
14日後のMRIではFLAIRの異常高信号、造影効果は軽減していることがわかります。
※最終的特定のウイルス同定することはできませんでしたが、臨床経過からウイルス性髄膜炎(ウイルス性脳症)と診断し、入院から1ヶ月後に退院となりました。
副所見として、MRAで正常変異があります。
左の中大脳動脈の水平部(MCA M1)の途中から2つに分岐する早期二分中大脳動脈を認めています。
関連:
【頭部】症例49の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
解答にもあるように、最初、くも膜下出血かと思いました。
髄膜炎というとCTではほとんど確認できない印象ですが(見逃していただけかもしれませんが…)、脳溝の不明瞭化を示すことがあることを覚えておき、SHAとの鑑別も含めて指摘したいと思います。
アウトプットありがとうございます。
>髄膜炎というとCTではほとんど確認できない印象です
ですね。この症例ではかなりCTでも目立つ症例でしたね。
MRIで造影しているということはCTでSAHだけではなく髄膜炎も考えたということですよね。症状もあるのでしょうが診断の流れがきれいで、すごいとおもいました。T2*見るまでは出血かとやはり思ってました。髄膜炎シリーズはそろそろ軟膜が来ると思っており、先入観が入っていたのでまた復習しておきます。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>T2*見るまでは出血かとやはり思ってました。
ですね。ここが出血としては合わないですね。
>髄膜炎シリーズはそろそろ軟膜が来ると思っており、先入観が入っていたのでまた復習しておきます。
さすがにそう思いますよね(^_^;
今日もありがとうございます。
CTを見て久しぶりのSAHかと思いましたが、昨日DA/PS patternを復習していたのでMRIで今日はしっかり診断できたのではと思います。
アウトプットありがとうございます。
>CTを見て久しぶりのSAHかと思いましたが
そうですね。髄膜炎の診断もですが、SAHを除外することが今回大事ですね。
先入観があり髄膜炎のつもりで最初から見てしまいました。
発熱などは分かりませんが、確かにT2*と造影T1を確認するまではSAHだと思うべき症例な気がします。
アウトプットありがとうございます。
>確かにT2*と造影T1を確認するまではSAHだと思うべき症例
その通りですね。特にCTではSAHではないか!と認識できることが重要ですね。
最初のCTなどの所見がかなり軽微だったので,普通にわかりませんでした.
出血ともわからず,見逃してしまいそうですが,このように髄膜炎がわかることもあると覚えておこうと思います.
こんにちは。本日もよろしくお願いいたします。
造影T1みてようやく気がつくなど、本日はなかなか気づけませんでした。
コメント欄のベテランの先生方はCTを見た時点ですでにSAHを疑っていたことがわかり、反省しなければ!です(もう一度ESPRESSOのこれまでのくも膜下出血の症例をざっと全て確認しました!)
アウトプットありがとうございます。
今回はCTで確かに指摘できるのですが、MRIを見た後にその目で見たら・・・という方も多いかと思います。
局所的な所見で、サッーと見ると見落としてしまいますね。
本筋から外れてしまう質問なのですが、
動画内では造影T1WIは脂肪抑制、ということですが、
頭蓋内に脂肪成分はあまり無いようなイメージだったので、
SAHや髄膜炎を疑うのであれば脂肪抑制しなくても良さそうに思ってしまったのですが、
脂肪成分を含むような疾患と鑑別できるということでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>動画内では造影T1WIは脂肪抑制、ということですが、
すいません、脂肪抑制という文字が入っていますが、実際は脂肪抑制ではありません。
今日中に動画を編集し、差し替えます。
>SAHや髄膜炎を疑うのであれば脂肪抑制しなくても良さそうに思ってしまった
おっしゃるとおりです。
ただ、現在当院では造影T1WIでは基本的に脂肪抑制をかけています。
編集し、差し替えました。
基本的な質問ですみません。頭部CTにおいて炎症が高信号になる理由を教えてください。今回は頭部CTでも炎症が画像に表れている、というのが新しい発見でした。頭部CTでも造影したらさらに高信号になりますか?逆に見にくくなりますかね?
アウトプットありがとうございます。
>頭部CTにおいて炎症が高信号になる理由
脳脊髄液よりも蛋白濃度の高い液体が同部位に存在しているからだと推測されます。
なのでFLAIRでも高信号になります。
基本は出血と同様に考えれば良いかと思います。(出血の場合は、SWIやT2*WIで無信号になりますが)
とはいえ、やはり病変の検出はFLAIR>>CTだと思います。
1週間程度経過したくも膜下出血のように。
ですので、今回のように髄膜炎がCTで見られるのはそれほど頻度が高くないと思います。
CTでも造影したら造影効果を認めると推測されます。
おはようございます。動画ではFLAIRにて左脳溝の高信号を確認できましたが、問題・解答ともにFLAIRのリンクがT2*と同じになっているようです。私だけでしょうか、、、
申し訳ありません。
修正しました。
ありがとうございます。スクロールして高信号が確認できました
いつも勉強させていただいてます。
本患者の来院時のバイタルはどうだったのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
記載がないということは医師のカルテには記載がなかったのだと思います。
とはいえどこかには記載があるはずなので、探してみますが、時間が割とかかります。よろしくお願いします。
紙カルテ時代の古い症例でカルテを取り寄せることができませんので申し訳ありませんが来院時バイタルがわかりません。
最初に見たCTでは分かりませんでした(^_^;)
MRIから振り返ってみて気付きました。
もっと入念に見なければ。
SWIやT2*でクモ膜下出血を除外することがとっても大切ですね。
アウトプットありがとうございます。
CTでこのように見えることがあるということを体験しておかないと、
最初のCTだけではサーっとみてたら見逃しますね。
>SWIやT2*でクモ膜下出血を除外することがとっても大切ですね。
おっしゃるとおりです。
CT,FLAIRのみではくも膜下出血と鑑別ができません。
初歩的な質問で大変恐縮ですが、教えて頂ければ幸いです。
FLAIR冠状断で右頭頂部の大脳縦裂近くの皮質下に周辺に低信号のrimを伴う淡い高信号スポットが見られる様に思い(スライス14、15)、異常所見として挙げてしまいました。(他の撮像方法では該当する部位に異常は見られなかったので、どのように解釈すれば良いか迷ったのですが)これは異常所見では無いのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>FLAIR冠状断で右頭頂部の大脳縦裂近くの皮質下に周辺に低信号のrimを伴う淡い高信号スポットが見られる様に思い(スライス14、15)、異常所見として挙げてしまいました。
おっしゃるようにここにも異常所見を認めていますね。
また横断像を確認すると左ほどではないですが右前頭葉にもやや高信号がありますね。
いずれも病変でよいと考えます。全く初歩的な質問じゃないです(^_^;)
FLAIRで上矢状静脈洞の上の高信号の層は何でしょうか。(外側から、高信号>低信号>高信号となっているように層があると思うのですが、、)
アウトプットありがとうございます。
>FLAIRで上矢状静脈洞の上の高信号の層
頭蓋骨ですね。