
【頭部】症例48
【症例】70歳代 男性
【主訴】右側頭部痛の増悪
【現病歴】多発血管炎性肉芽腫症と診断されている。
【既往歴】両側滲出性中耳炎
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拡散強調像(DWI)で右硬膜と思われる構造の肥厚および描出を認めています。
T1WIでもこの硬膜と思われる膜構造の肥厚を確認することができます。左右差を見れば明らかです。
造影MRIでは右硬膜のみ厚く造影されている様子がわかります。
冠状断でもその様子は明瞭で、右側のみに認めている様子がよく分かります。
これまで見てきたように髄膜の造影パターンには以下の2つがあります。
今回も硬膜優位であり、DA patternであることがわかります。
このようなDA patternの造影効果を認めた場合の鑑別診断は以下のようになるのでした。
ただし、低髄液圧症候群で見たような左右対称ではなく、今回は右側のみに認めています。
多発血管炎性肉芽腫症と診断されており、これによる肥厚性硬膜炎が最も疑われます。
※その後、他院の膠原病内科に転院となっています。
診断:(二次性)肥厚性硬膜炎(多発血管炎性肉芽腫症による)
関連:
- 髄膜の異常増強効果とは?DA pattern/PS patternとは?
- 頭蓋内における多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)の画像診断
- 肥厚性硬膜炎を合併した Wegener 肉芽腫症の 1 例 – 日本呼吸器学会
その他所見:
- 左優位に乳突蜂巣・中耳に液貯留あり。中耳炎およびその加療後変化。
- 脳室間腔あり。
【頭部】症例48の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
DAパターンなのに、中耳炎から波及した髄膜炎だと飛びついてしまいました。血管炎からの硬膜肥厚を覚えていなかったので、DA / PSパターンの鑑別をしっかり見直しておきます。
アウトプットありがとうございます。
>DA / PSパターンの鑑別をしっかり見直しておきます。
鑑別を全て覚える必要はありませんが、どちらのパターンなのか(混在することもありますが)を意識して、
そこから鑑別の表を見直すという流れでよいと思います。
今日もありがとうございます。
DAパターン、PSパターンの意識がまだまだでした。硬膜炎はT2で思ったより高信号にならないのですね。
アウトプットありがとうございます。
>DAパターン、PSパターンの意識がまだまだでした。
まずは2種類に分けられること、そしてそれぞれ鑑別疾患があることを知っておきましょう。
>硬膜炎はT2で思ったより高信号にならないのですね。
そうですね。T2WIでは今回気づけないですね。
自己免疫系の疾患は硬膜
に炎症を起こすことがあると記憶していました。
髄膜炎を起こす疾患は多岐にわたるのですべて覚えきれません。ごろ〜先生がまとめて下さっている関連資料を参考にしたいと思います。
アウトプットありがとうございます。
>髄膜炎を起こす疾患は多岐にわたるのですべて覚えきれません。
そうですね。私も全部は覚えていません。
どちらのパターンかを認識して、あとは臨床情報を見ながら、鑑別をリストを見て考えていく感じですね。
DA,PSの違いは意識して読影できるようになってきました.次は鑑別を念頭に置いて読影したいですね.
アウトプットありがとうございます。
>DA,PSの違いは意識して読影できるようになってきました
それはよかったです。左右対称だと意外と気付かないこともある点にご注意ください。
こんにちは。本日もよろしくお願いいたします。
今回はすんなり読影できました!
・中耳炎の既往というところからはANCA関連血管炎性中耳炎(otitis media with ANCA associated vasculitis;OMAAV)を疑いました。
教科書で調べてみたのですが、OMAAVの病変パターンは、
①肉芽種を伴う慢性中耳炎(主にPR3-ANCAが関連)
②滲出性中耳炎(主にMPO-ANCAが関連)
③感音性難聴(MPO、PR3-ANCAが関連)
の3つがあるそうです。また、OMAAVには肥厚性硬膜炎を合併する例が28%あるようです。
・日本国内の肥厚性硬膜炎症例では、ANCA関連血管炎が34%(1位)、IgG4関連疾患が8%(2位)、ほか結核、アスペルギルス症、中耳炎、副鼻腔炎、シェーグレン症候群、特発性などがあるそうです。フランスの報告ではErdheim-Chester病、Rosai-Dorfman病、サルコイドーシス、クリプトコッカス髄膜炎、リンパ腫などがあるらしいです。
・日本の肥厚性硬膜炎症例で検査した患者におけるANCA陽性率ははMPO-ANCA陽性が27.7%、PR3-ANCA陽性が12.6%であったそうです。
GPAかつ肥厚性硬膜炎合併疑い患者さんを実習で経験したことがあるので、今回はとても印象的でした。
アウトプットありがとうございます。
>中耳炎の既往というところからはANCA関連血管炎性中耳炎(otitis media with ANCA associated vasculitis;OMAAV)を疑いました。
本当に学生ですか?(^_^;)
本当は医師歴20年くらいですよね!?(嘘)
>GPAかつ肥厚性硬膜炎合併疑い患者さんを実習で経験したことがあるので、今回はとても印象的でした。
なるほどです。見たことがあるというのは大きな強みですね。
印象に残る度合いが違いますよね。
救急では痛い思いをした症例ほど覚えているものですが・・・。
あの絞扼性イレウス、あの脳挫傷・・・
いつもお世話になっております。
今日も勉強になりました。
DWI 11枚目、ADC 35枚目、T2 11枚目の左側頭葉にある円形の病変?を信号パターンから陳旧性梗塞の疑いと思ってしまったのですが、これはどのように解釈したら良いでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
血管でたまたま円形に見えているだけだと考えます。
陳旧性脳梗塞ならば、T2WIで高信号となり、また今回は脳皮質部ですので局所的な萎縮を来すかと思います。
今回は特に異常所見ではありません。
本日もありがとうございました。
硬膜肥厚=悪性腫瘍の転移しか頭になかったのですが、髄液圧症候群や免疫疾患など様々な疾患でも起こりうるんですね。
動画で中耳炎の術後とありましたが、T2WIの7枚目で見られる左側頭部の高信号病変、TIPSでやった頚静脈孔の偽病変かなと一瞬思いました。でもよく見ると頸静脈は別にありそうですし、偽病変であれば、T2WIでは無信号、造影MRIで高信号を示すはずですね。
アウトプットありがとうございます。
>硬膜肥厚=悪性腫瘍の転移しか頭になかったのですが、髄液圧症候群や免疫疾患など様々な疾患でも起こりうるんですね。
そうですね。
少し難しいとは思いますが、「あれ、何か硬膜の肥厚が目立つな。」という点に気づいていただき、あとはDAパターンを起こす疾患を思い出していただけたらと思います。
>T2WIの7枚目で見られる左側頭部の高信号病変、TIPSでやった頚静脈孔の偽病変かなと一瞬思いました。でもよく見ると頸静脈は別にありそうですし、偽病変であれば、T2WIでは無信号、造影MRIで高信号を示すはずですね。
7枚目に見られる乳突蜂巣の高信号は術後部分に液体が溜まっているものですね。
頚静脈孔は今回左側ではあまりはっきりせず、右側にT2WIで5枚目に円形の無信号として描出されています。
いつも勉強になっております。
DWIで、後頭葉の髄膜が左側優位に高信号を呈しているようにも見えますが、所見としてとってもよいでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>DWIで、後頭葉の髄膜が左側優位に高信号を呈しているようにも見えますが、所見としてとってもよいでしょうか?
後頭葉だけを見ると確かに左優位に高信号にも見えるのですが、造影で見ると同部には異常所見はありません。
また後頭葉の高信号を、前頭葉や側頭葉の皮質の高信号と比較すると同程度ですので、優位のではないのだと考えられます。