
【頭部MRA】症例9
【症例】60歳代女性
画像はこちら
どんな血管の正常変異がありますか?
まず左の前大脳動脈(A1)に窓形成を認めています。
右椎骨動脈(VA)を認めておらず、右側の後下小脳動脈(PICA)が発達して、PICAで終わっています。
椎骨動脈末端部低形成(いわゆるPICA end、PICA terminal)を疑う所見です。
MRAの元画像で見てみますと、左のVAは太く同定できますが、右側のVAは細い瘢痕さえ、同定出来ません。
もしかしたらBPASでは小さな瘢痕が見えるのかもしれませんが、残念ながらBPASは撮影されていませんでした。
ですので、BPASは撮影されていませんが、MRAの元画像で瘢痕さえも見つけられないので、おそらく先天的に椎骨動脈末端部が閉塞しているタイプではないかと考えられます。
また左後大脳動脈(PCA)は左後交通動脈(Pcom)経由で血流を得ている胎児型であることがわかります。
さらに両側の中大脳動脈(M1)の途中から左右同程度の細い血管が分岐しており、両側早期二分中大脳動脈であることがわかります。
診断:左前大脳動脈(A1)窓形成
+右椎骨動脈末端部低形成+両側早期二分中大脳動脈+左胎児型後大脳動脈
※新しいTopicは、前大脳動脈窓形成のみです。
関連:
【頭部MRA】症例9の動画解説
補足動画です。
【MRA】症例8,9早期二分中大脳動脈について
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
盛りだくさんで良い復習になりました。お腹いっぱいです。
アウトプットありがとうございます。
盛りだくさんでしたね(^_^;
>お腹いっぱいです。
まあ、そうおっしゃらずに。もうちょっとだけ正常変異が続きます(;゚ロ゚)
細かい破格を気にすると,たくさん注意するところがあって,大変ですね.
少しずつ慣れてきました.
アウトプットありがとうございます。
>細かい破格を気にすると,たくさん注意するところがあって,大変
そうなんです。なので、最初は喜んで記載するのですが、途中からよくある変異の場合は、
「MRAで有意な動脈瘤や狭窄なし。」
みたいな感じになります。
「すべての正常破格を指摘できました」と言いたいところだったのですが、左ACA窓形成を左Acom窓形成と誤記入してしまいました。Acomに左右はないですよね。
アウトプットありがとうございます。
>左ACA窓形成を左Acom窓形成と誤記入してしまいました。
ほぼ正解ですが、Acomにも窓形成ができることがあります。
Acomの中でも右に、左という表現ならありますが、
おっしゃるようにAcom自体に左右はないですね。
A1窓形成は見落としてました。たくさんあるとどれが優先される所見なのか気になります。状況によって変わるのでしょうが、ほかに病変があるときにより優先順位が変わる(治療に関連する血管の異型性が重要)というので良いのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
今回はいずれも正常変異ですので、優先というのは基本的にありません。
これが動脈瘤となると話は別です。
もちろん脳梗塞を起こした際に、
A2移行がどこから栄養されているとか、
P2移行がどこから栄養されているとか、
だからここは脳梗塞に陥っているけどここは陥っていないなどと考える際に
正常変異の知識は必要となりますが。
早期二分中大脳動脈
距離が1cmというキーワードがとても分かりやすいと感じました。振り返ってみると多くが1cmよりもあります。通常は強く指摘しないのもうなずけます。
窓形成
形態が特徴的なので指摘できるようになりました。やっぱり見えるようになってうれしいです。
頑張ってみます。
アウトプットありがとうございます。
>振り返ってみると多くが1cmよりもあります。通常は強く指摘しないのもうなずけます。
その目でみると結構な頻度で1cm以上離れている分岐があることがわかりますね。
>形態が特徴的なので指摘できるようになりました。やっぱり見えるようになってうれしいです。
良かったです!今回の症例では正常変異盛りだくさんですので、復習にもなりますね!
こんばんは!お世話になります。
窓形成以外は指摘できたのですが…
窓形成が苦手です。枝と枝とが重なり合って窓のように見えているんだろうと勝手に錯覚して見逃すことが多い気がします。1本1本丁寧に追っていかないと見逃しますね…。
リンク先も必ず参照して復習するようにします!!
アウトプットありがとうございます。
>窓形成以外は指摘できたのですが…
それで十分とも言えます。
今回の新しいTOPICはACAの窓形成ですが、頻度としてはPICA endや胎児型の方が遙かに多いわけで、まずはそれらが拾えることが重要です。
ありがとうございました。これまで学んだ正常変異がたっぷり盛り込まれていて復習になりました。ところで、右Pcom低形成を指摘してしまったのですが、Pcomはもともと細いということであまり気にしなくてよいのでしょうか?
初めまして、ぴぴさん
私も同様右P-com低形成かと思いましたが、MRA元画像みると僅かに描出されています。なので、どちらでも良いのかな?
私が言うのもお門違いかと思いましたが。それでは、失礼致します。
アウトプットありがとうございます。
元画像でもおそらくPcomははっきりしません。後大脳動脈(PCA)と連続しないので、見えているのはPcomではなく穿通枝だと思われます。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように右Pcomははっきりせず低形成ですね。指摘していただいて大丈夫です。
willis動脈輪の低形成は頻度が多いので徐々に取り上げていないだけで、練習ではどんどん指摘してください。
今日、自分の患者さんのMRAを見たら、とりあえず破格にすぐ気付けました。MIPだけでなく元画像も読めました。
いままではMIPのみ眺めて『学校で習った解剖と比べると足りない血管がある!これは狭窄??でも読影レポートに書いてない‥‥まぁレポートにないなら問題ないんだろう‥‥』的な感じだったので、成長を感じました。ありがとうございます。
ところで、太めの血管(ICAやVA、BA)の中心近くが辺縁に比べて黒っぽく見えるのですが、MRAとはそういうものなんですか?
アウトプットありがとうございます。
>いままではMIPのみ眺めて『学校で習った解剖と比べると足りない血管がある!これは狭窄??でも読影レポートに書いてない‥‥まぁレポートにないなら問題ないんだろう‥‥』的な感じだったので、成長を感じました。ありがとうございます。
成長を感じていただけてこちらも嬉しいです(^^)
少々の破格ならばレポートに書かない傾向にあります(書いていたら破格だけで結構な量になることもあるので)。
>ところで、太めの血管(ICAやVA、BA)の中心近くが辺縁に比べて黒っぽく見えるのですが、MRAとはそういうものなんですか?
そういうものなのですが、血流を画像化していますので、太い血管の場合は単位断面積辺りの血流が細いものと比べて少ないためと考えられます。
窓形成はみえるようになっていました!うれしいです。こんなにじっくりMRAをみることがないので少しずつ慣れてきたような気がします。
正常の破格はたくさんあるのですね。しっかり覚えたいです。
アウトプットありがとうございます。
少しずつ慣れてきたとのことこちらも嬉しいです(^^)
破格はたくさんあります。むしろ破格がない完全な血管を探す方が難しいです。
メジャーな破格はこの機会に体験してください。
大変勉強になっています。早期二分中大脳動脈について質問します。心原性脳塞栓症などで、早期二分中大脳動脈に塞栓が詰まるようなことはありますでしょうか?また、早期二分中大脳動脈がある方で、MCAのM1遠位部やM2に塞栓が詰まった場合に、早期二分中大脳動脈による灌流があるおかげで軽症で済んだりすることはありえますでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>心原性脳塞栓症などで、早期二分中大脳動脈に塞栓が詰まるようなことはありますでしょうか?
それはありますね。
>早期二分中大脳動脈がある方で、MCAのM1遠位部やM2に塞栓が詰まった場合に、早期二分中大脳動脈による灌流があるおかげで軽症で済んだりすることはありえますでしょうか?
早期二分していることで本来よりも塞栓範囲は少なくなることは考えられますね。
早期二分する前に詰まると同じですが。
いつもありがとうございます。ちょっと質問させていただきます。
左の低形成のP1(SCA?)の根部が漏斗状拡張なのか低形成のP1が先細りしているのか、と思ったのですがいかがでしょうか?
動脈瘤ではないかなと思ったのですが、、、
アウトプットありがとうございます。
>左の低形成のP1(SCA?)の根部が漏斗状拡張なのか低形成のP1が先細りしているのか、と思ったのですがいかがでしょうか?
確かにまず左のP1は低形成ですね。
そして、左のSCAに漏斗状拡張を認めています。
そして、それとは別に細くなる血管があります。
また、右もSCAが2本あるように見えます。左のこの細くなるものもSCAが2本あるのかもしれませんね。
漏斗状拡張を示しているSCAとほぼ同じところから分岐していますので、P1ではなさそうです。
右に2本あるのは気づきませんでした、、、
精進します。ありがとうございます