症例34 解答編

症例34

【症例】50歳代男性
【主訴】急激な上腹部痛(差し込むような痛み)
【身体所見】腹部平坦、軟、明らかな圧痛部位なし。
【データ】WBC 7000、CRP 2.99

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上腸間膜動脈(SMA)の周りに脂肪織濃度上昇を認めています。

上腸間膜動脈(SMA)は上腸間膜静脈(SMV)と同じくらいのサイズであり、これを smaller SMV signだ!としてはいけません。

上腸間膜動脈(SMA)が解離して大きくなっています。

解離は大動脈解離と同様に

  • 偽腔開存型
  • 偽腔閉鎖型

がありますが、今回は偽腔に造影効果を認めず、偽腔閉鎖型の解離であることがわかります。

冠状断像では、解離が上下方向にかなり広範に認められていることがわかります。

上腸間膜動脈(SMA)の解離では、上腸間膜動脈(SMA)の血流が減ることがあるため、腸管虚血がないかをチェックします。今回はそのような所見は認めませんでした。

保存的に加療されました。

通常1−2週間で血栓化・縮小し、真腔の狭窄も改善を認めるケースが多いとされます。

5ヶ月後のフォローのCTです。

解離腔はほぼわからない程度に改善している様子がわかります。

診断:上腸間膜動脈解離

関連:上腸間膜動脈解離の画像診断、治療法は?

その他所見:

  • 脂肪肝あり。
  • 肝S7、8に血管腫疑い。
  • 膀胱内の高吸収は造影剤の使用歴を示唆する。
一流バリスタDr.Tの淹れ方
解離ですが・・・

急性期なのかある程度時間が経ったものなのか見極めるのが重要である場合があります。

今回のは症状からも明らかですが、SMA解離部周囲の脂肪濃度上昇が明瞭にみられるので、急性期所見と思われます。(24時間以内)
偶発的に無症状のSMA解離を見つけることがありますが、その場合は脂肪濃度上昇が改善していることが多いと思われれます。(その後の症例では脂肪濃度上昇は消えています)
たまにSMA血栓症との鑑別が問題になることがありますが、血行力学上の問題のためか、偽腔が腹側~やや右側にできる事が多いのも鑑別の一助になることがあります。(弓部にできる大動脈解離もだいたい同じ位置が多いので、同じような理由と考えています)

ありがとうございます!
今日の症例の解説動画

上腸間膜動脈解離について


お疲れ様でした。

今日は以上です。

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