症例35 解答編

症例35

【症例】30歳代女性
【主訴】発熱、腰痛で腎盂腎炎と診断され入院にて抗生剤治療中、下痢あり
【データ】WBC 6400、CRP 0.91

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左腎に尿管ステントが留置されています。
実はこの方、左下部尿管に尿管結石を認めており、それが原因となり腎盂腎炎(結石性腎盂腎炎)を起こしていました。
そのため尿管ステントが留置されています。

左腎に造影不領域があり、その内部に、辺縁にリング状の造影効果を有する液貯留を認めています。

腎膿瘍を疑う所見です。

腎盂腎炎→腎膿瘍へと状態が悪くなったということです。

ちなみに腎盂腎炎は下のように

  • 腎盂腎炎→急性巣状細菌性腎炎(AFBN)→腎膿瘍

と3つの状態に分けられます。

症例13で見た平衡相での造影不良は、厳密には急性巣状細菌性腎炎(AFBN)に相当します。
症例25は単純CTのみの撮影でしたので、腎盂腎炎なのか、急性巣状細菌性腎炎(AFBN)なのかはわかりません。

※腎盂腎炎と急性巣状細菌性腎炎(AFBN)とを鑑別する必要は臨床上あまり意味がないのかも知れません。腎膿瘍の場合は、場合によってはドレナージ術などが施行されます。

今回のケースでは抗生剤で加療が続けられました。

 

ちなみに・・・
今回のケースのように腎盂腎炎が、急性巣状細菌性腎炎(AFBN)や腎膿瘍へと慢性化する背景には、尿管結石や膀胱尿管逆流症などがある場合が多いとされます。(今回は左尿管結石がありました。)

 

14日後(入院中)の画像です。

左腎の造影不領域は残存していますが、腎膿瘍は消失しています。

診断:左腎膿瘍(厳密にはAFBN+腎膿瘍)

関連:急性腎盂腎炎・AFBN・腎膿瘍のCT画像所見まとめ!

その他所見:

  • 肝嚢胞疑い。
  • 結腸に液貯留を認めており、下痢症状に矛盾しない所見。
  • S状結腸は壁肥厚を認めており、慢性的な炎症があるのか?
症例35の解説動画

腎膿瘍について


お疲れ様でした。

今日は以上です。

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