
【頭部】症例33
【症例】70歳代女性
【主訴】歩行時のふらつき
【現病歴】8日前に買い物中に左脚が前に出ず横に出てしまうようになりふらつきを自覚、3分間程度持続したがその後回復した。その後安静にしていたが、5日前に再度買い物に出掛けた際にふらつきが持続し、夫の服を持たないと歩けない状況であった。本日受診となる。
【既往歴】高血圧、左真珠腫性中耳炎、子宮外妊娠
【内服薬】ブロプレス
【生活歴】喫煙飲酒なし。食欲良好、睡眠良好
【身体所見】意識清明、BP 129/76mmHg、P 75bpm、SpO2 98%(RA)、眼球運動:左方視持続困難、時に左方視で複視あり。Mingazzini:左陽性、Babinski/Chaddock 左陽性、片足立ち/Mann posture不可、継ぎ足歩行不可。他、神経学的所見に異常所見なし。
画像はこちら
MRI
橋の右側に腹側面から被蓋方向(背側)へ進展する広範なDWI高信号/ADC信号低下を認めています。
ラクナ梗塞よりは範囲が広範であり、これが典型的な傍正中橋動脈領域の分枝粥腫型梗塞(BAD型梗塞)です。
同じ橋の梗塞でも症例31で見たラクナ梗塞と比較すると明らかに範囲が広いことが分かりますね。
- 深部穿通動脈の先端が詰まる→ラクナ梗塞(症例31)
- 深部穿通動脈の根元が詰まる→分枝粥腫型梗塞(今回の症例)
の違いが画像からもよく分かりますね。
T2WIおよびFLAIRで高信号を認めており、急性期(〜亜急性期)の脳梗塞を疑う信号パターンです。
またFLAIRにおいて左の半卵円中心レベル白質に陳旧性ラクナ梗塞を認めています。
放線冠レベルや基底核レベルでは慢性虚血性変化を疑う、高信号のみを認めています。
MRAでは、両側後大脳動脈および左の中大脳動脈にわずかな狭窄像を認めていますが、末梢の血管の描出は良好です。
診断:傍正中橋動脈領域の分枝粥腫型梗塞(急性期〜亜急性期)
関連:
その他所見:
- 左上顎洞および右乳突蜂巣に液貯留の疑い。
- 三分岐前大脳動脈あり。
【頭部】症例33の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
分枝粥腫型梗塞という名前がまだ身についていませんでしたが、今回はラクナとしなかったので一歩は進んだかな、と思います(^▽^)/
アウトプットありがとうございます。
BADは前回の症例と今回の橋のところの2箇所が好発部位ですので、その部位で長い梗塞を見たらこの可能性を考えましょう。
今回は、BADの復習という気分で取り組めました。
腹部と違って、あちこち行かないのである程度次に何が来るのか予想できますね(^_^;
BAD症例に慣れてきました。
今回は、橋にこれだけの梗塞があっても症状は比較的軽い?ような印象を受けました。逆に範囲が狭くても強く症状が出る場合もありますし、脳は不思議で難しく感じます。
BADの症例に慣れてきました。
今回は、橋にこれだけの梗塞がある割には比較的症状が軽いような印象を受けました。障害される細かい部位によると思いますが、脳は不思議で難しく感じます。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。無症候性の脳梗塞もありますし、MRAで片側内頸動脈が閉塞しているのに梗塞を生じていないこともありますし、不思議なこともありますね。
今日もありがとうございます。
脳梗塞の経時的変化の評価は慣れてきました。BADも目を慣らしていきたいです。
アウトプットありがとうございます。
>脳梗塞の経時的変化の評価は慣れてきました
それはよかったです!!
>BADも目を慣らしていきたいです。
BADは今回前回の2パターンが基本ですので、場所と形を覚えておきましょう。
ありがとうございました
復習症例は気持ちが安らぎます。何かひっかけられているのか?と、勘ぐってしまいますが!(^^)!
アウトプットありがとうございます。
腹部と異なりあっちこっち行かないので大きくはずすことはないかもしれませんね。
頭部の画像は症状があって,その症状を来たしうるようなところを中心に読影できますね.今回と前回の画像でBADはしっかりマスターしておこうと思います.
アウトプットありがとうございます。
BADは主にこの2箇所ですので、場所と形からこの病態を思い出しましょう。
復習症例は身につきやすいですね。BAD症例と前回の症例で、それぞれの違いが分かり勉強になりました。ありがとうございました。もう忘れませんように。。。
アウトプットありがとうございます。
症例32,33は典型的なBADで、割と見る頻度が高いので、この2つについては覚えておきましょう。
こんにちは。今週もよろしくお願い致します!
だんだん読影に慣れてきたような気がします。
「左方視持続困難、時に左方視で複視」は右MLFが障害されたことにより右側眼球の内転障害、左側眼球の外転障害(monocular nystagmus)を拾っているのかもしれないと考え、病変部位を予測しながら読影に取り組めました。
アウトプットありがとうございます。
>「左方視持続困難、時に左方視で複視」は右MLFが障害されたことにより右側眼球の内転障害、左側眼球の外転障害(monocular nystagmus)を拾っているのかもしれないと考え、病変部位を予測しながら読影に取り組めました。
ありがとうございます。
MLF症候群は内側縦束(MLF)が障害された時の症状で、今回も障害部位に入っています。
病変側と逆を見たときに、病変側の眼球の内転障害→左方視持続困難
対側の眼球の外転時の単眼性眼振→時に左方視で複視
に合致すると考えられますね。
ESPRESSO神経内科!が開講できそうですね。
私も症状と病変部位とのリンクをもう少し勉強します(^_^;
ありがとうございました。BADの典型例の2症例、きっちり目に焼き付けました。動脈の名前もややこしいですがしっかり憶えたいと思います。T2、FLAIRの高信号も陳旧性梗塞をきちんと見分ける努力をするようになりました。今回の症例で、中脳上部レベル(?)の両側基底核にT2高信号、FLAIR低信号+周囲に淡い高信号の部位がありますが、これは血管周囲腔でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>ありがとうございました。BADの典型例の2症例、きっちり目に焼き付けました。
あとは前脈絡叢動脈領域などにもありますがこの2症例(部位)をしっかり押さえておけばBADは基本大丈夫です。
>中脳上部レベル(?)の両側基底核にT2高信号、FLAIR低信号+周囲に淡い高信号の部位がありますが、これは血管周囲腔でしょうか?
おっしゃるように場所からこれは血管周囲腔です。
単なるラクナ梗塞ではない、という認識までできるようになりました。進歩しているのかな・・・でも、BADと書き切ることができませんでした。
MRAで左内頸動脈C5あたりで壁在に造影が欠けているように見えるところがあって気になってしまったのですが、プラークか何かでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>でも、BADと書き切ることができませんでした。
橋の前後方向に長い梗塞を見た場合はBADを疑いましょう。
>MRAで左内頸動脈C5あたりで壁在に造影が欠けているように見えるところがあって気になってしまったのですが、プラークか何かでしょうか。
上に向かう血流を画像化したものですので、ムラなどで線状に見えたりすることがありますが、今回は特にプラークなどを疑う異常所見は認めていません。
症状が出てもなかなか病院へ来ない方も居られるのですね。通常の内科外来から来そうだと思いました。しっかりBADと認識してドクターへ伝えたいと思います。
アウトプットありがとうございます。
>症状が出てもなかなか病院へ来ない方も居られるのですね。
そうですね・・・。
風邪症状で救急車に乗ってこられる方から、歩いて来られる絞扼性腸閉塞の方もおられますので、さまざまですね。
見た目や先入観で重症度などを判断してはいけないということですね(^_^;)
私もそれで痛い目に遭ったこともあります。
本日もありがとうございます。
本題からは外れてしまいますが、三分岐前大脳動脈はありますでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
ありますね(^_^;)
意外とこの変異あるものなのですね。。追記します。ありがとうございます(^^)
いつも大変お世話になっております。
前回の解説動画で既に説明を聞いていたので「背側方向に長い」というのも良くわかりました。
ちなみに、前回の症例では頭頂方向に1.5cm(1スライス5mm×3スライス)というのがありましたが、今回も同じくらいの長さかそれ以上ということでしょうか(特に長さ自体はそれほど気にしないのでしょうか)。
また、これはおねだりが過ぎると思いますが、解説動画では半年後フォローのMRIもでてきていたので、可能であればご提示いただけないかと思いました。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。外側線条体領域では頭頂方向に1.5cm(1スライス5mm×3スライス)というのが一つの目安ですが、この部位は長さよりも前後方向に及んでいることが重要です。
>解説動画では半年後フォローのMRIもでてきていたので、可能であればご提示いただけないかと思いました。
こちら対応しますが、少し時間がかかります。
時間がかかると思ったらスタッフが即対応してくれました。
こちらです。
https://imaging-diagnosis.com/view/YrsT9qBq
早急にご対応いただきありがとうございました。
参考に勉強いたします。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。