
症例49
【症例】70歳代男性
【主訴】1ヶ月前に吐血
【現病歴】アルコール性肝硬変にて他院フォロー中。1ヶ月前に吐血あり他院にてフォローしていたが、紹介受診となる。
画像はこちら
肝硬変による門脈圧亢進により、発達している側副血行路は何?
肝硬変による門脈圧の亢進による側副血行路の症例2症例目(全5症例)です。
肝は辺縁鈍で凹凸不整で肝硬変を疑う所見です。
今回の症例では胃およびその外に静脈瘤を認めています。
胃静脈瘤・傍胃静脈瘤です。
この静脈瘤を追うと、左腎静脈と連続性を認めており、同部に還流していることがわかります。
つまり胃腎シャントを形成している状態です。
今回の状態をシェーマで示すと次のようになります。
胃に静脈瘤を形成し、胃腎シャントを経て左腎静脈から下大静脈へと大循環系へ還流しているということです。
診断:胃静脈瘤(+傍胃胃静脈瘤)
腎静脈瘤に対して、BRTO(baloon-occluded retrograde transvenous obliterationの略、日本語ではバルーン下逆行性経静脈的塞栓術)が行われました。
これにより胃静脈瘤および胃腎シャントが消失しました。
胃静脈瘤の治療法の一つであるBRTOについてはこちらに詳しく動画付きでまとめました。
関連:
その他所見:
- 動脈硬化あり。
- 重複下大静脈あり。
門脈圧亢進に伴う側副血行路の解説動画
主に見られる側副血行路の解説をしています。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
圧亢進によりわざわざ迂回しているのに、機序や流れを深く考えずに副腎静脈と答えてしまいました。安易な解答だったと反省です。前症例と合わせて復習します。
左副腎静脈も左腎静脈に合流しますので、ややこしいですね。
全部で5症例用意していますので、どんな迂回路を作っているのかを確認してみてください。
詳細なレクチャーありがとうございました。血流の向きを考えながら(ぐちゃぐちゃになっている場合特に)画像を見ていきます。
アウトプットありがとうございます。
>血流の向きを考えながら(ぐちゃぐちゃになっている場合特に)
ですね。私もまとめながら、頭が整理されていきます。
BRTOの記事の動画も、みなさんにBRTOのわかりやすい動画を提供するよりも、
自分の理解の整理用という意図が強いものです(^_^;
胃静脈瘤・傍胃静脈瘤のみだと
胃腎シャントを形成するのですね。
この流れは初めて知りました。
左腎静脈と胃静脈が繋がっていることも
初めて知りました。
あとで気づいたのですが、このかた重複下大静脈でしょうか?
!!!!!!
確かに!!
追記します(^_^;
ありがとうございます。
アウトプットありがとうございます。
>胃静脈瘤・傍胃静脈瘤のみだと胃腎シャントを形成する
とは限らないかもしれまえせんが、このようなケースもあるということです。
>左腎静脈と胃静脈が繋がっていることも初めて知りました。
これは側副路が形成されて繋がったということです。
胃静脈瘤はすぐに気づきましたが、前回傍臍静脈に気づけなかったので、きっと他にあるんだろうと思ってみていましたが、今回はこれだけでした笑
むしろ、シャントを指摘することができず、治療を考えると大事になってくるので意識してみるようにします。
あと、重複下大静脈は・・・やっぱり違和感ないですね(;’∀’)
アウトプットありがとうございます。
>きっと他にあるんだろうと思ってみていましたが、今回はこれだけでした笑
いやいや、基本はシンプルな問題です。
傍臍静脈も前回はおまけというかメインでお見せしたいところではありませんでした。
>重複下大静脈は・・・やっぱり違和感ないですね(;’∀’)
ですね。ですが、提示したあとに、実際出てくるとちょっと親しみが持てますね。
直腸背側に静脈の拡張があるように見えるのですが…側副血行路でしょうか?
確かにありますね。
こちらも側副血行路かもしれませんが、下腸間膜静脈との連続性ははっきりしませんね。
こんにちは、いつもお世話になっております
重複下大静脈、気づけませんでした…全人口の2〜3%と結構多いから、これまでも見逃してきたのかもしれません…!
リンク先の胃静脈瘤にBRTOを行う理由は知らなかったのでとても理解の助けになりました!
アウトプットありがとうございます。
>重複下大静脈、気づけませんでした…
私も気づかないことが割とある正常変異です(^_^;)
>リンク先の胃静脈瘤にBRTOを行う理由は知らなかったのでとても理解の助けになりました!
それはよかったです。
B-RTOの解説拝見しました。胃静脈瘤が破裂すると大出血になるので、硬化剤を流して治療する、ということですが、、、
■それは治療になるのですか?
行き場を失ったために側副血行路が出来ます。硬化剤を流すということは、側副血行路を閉じてしまうということですよね?
また新たに側副血行路を作って、いたちごっこになりませんか?
門脈の流れが良くならない限り、治らないような気がしてきたのですが、、、
面倒な質問ですみません。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるようにいたちごっこですね(^_^;)
しかし、大出血を起こして致死的になる側副血行路は閉じてしまおうというのが目的ですね。
いつも勉強になる画像をありがとうございます。
放射線技師の観点から質問なのですが、こういった画像を見た場合は早めに主治医に報告して処置をしていただいたほうがよろしいのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
破裂して、消化管出血を起こしている場合はすぐに知らせた方がいいですが、そうでない場合は慢性的な変化なのですぐに伝える必要はないかもしれませんね。
側副血行路は複雑ですが、5連発の症例で目を肥やしていきたいです。
アウトプットありがとうございます。
>側副血行路は複雑ですが、5連発の症例で目を肥やしていきたいです。
そうですね。慣れないうちは追うのも嫌かもしれませんが、分けて考えると意外と複雑ではないことがわかります。