
症例38
【症例】80歳代男性
【主訴】肝内胆管癌の疑いで他院より紹介
【データ】腫瘍マーカーの上昇なし。他、不明。
画像はこちら
肝臓の低吸収域の主な正体は?
肝両葉で、門脈周囲に低吸収域を認めています。
ただし肝内胆管の拡張ではなく、嚢胞性病変です。
MRIのT2強調像でより明瞭です。
嚢胞は胆管の周囲に多数認めていることが分かります。
肝内胆管の拡張は認めていません。
MRCPのMIP像でもその様子がよく分かります。(ちょっと今回のMIP像はとても綺麗な画像とは言えないですが)
胆管の周囲に多数の嚢胞を認めています。
このような嚢胞を胆管周囲嚢胞(peribiliary cyst)と言います。
診断:胆管周囲嚢胞
※症例36で見た、胆管性過誤腫よりも中枢側、肝門部に多数嚢胞が見られるのが特徴です。
一つ類似症例を見てみましょう。
60歳代男性
今回の症例と同様に門脈周囲に多数の嚢胞性病変を認めています
また、肝S2で軽度肝内胆管拡張を認めています。
今回の症例同様に、胆管周囲嚢胞(peribiliary cyst)を疑う所見です。
ところが、MRIではさらに所見を認めます。(CTでもよく見ると認めますが)
T2強調像で、CT同様に門脈周囲(胆管周囲)に多数の方法を認めています。
CTではあまりはっきりしませんでしたが、それとは別に右葉末梢有意に微小な点状の高信号を多数認めています。
MRCPで明瞭となります。
- 肝門部を中心として胆管周囲に認める嚢胞→胆管周囲嚢胞
- 末梢有意に認める多数の微小嚢胞→胆管性過誤腫
を疑う所見です。
つまり両者が合併している症例ということになります。
関連:
その他所見:
- 左室前壁から中隔に脂肪変性あり。同部の梗塞の既往があり、陳旧性梗塞後変化の疑い。
- 右胸水あり。
- 肝嚢胞あり。
- 膵尾部小嚢胞あり。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
お世話になっています。
一見、肝内胆管が拡張しているように見え、肝内胆管癌が疑われたのですね。
副所見ですが、T2冠状断にて、左心室尖部の壁が菲薄化して瘤を形成しているように見えますが、心室瘤でしょうか?
もし心室瘤なら、緊急性は高いのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
返信遅くなり申し訳ありません。
みさみささんのコメントに記載しています。
胆管との連続性ないんですね!見た目に連続していて,胆管拡張の特殊な形かなにかなのかと思ってしまいました.
このTipsシリーズは難しいですね.
アウトプットありがとうございます。
>胆管との連続性ないんですね!
そうなんです。あくまで胆管の横ですね。
>このTipsシリーズは難しいですね.
今回の症例は、日常で救急外来でも出てくると思います。
肝内胆管の拡張→総胆管結石による閉塞性黄疸、胆管炎になっているのではないか!!!と持って行かないためにも覚えておいてください。
胆管との連続性を否定するには
単純CTのみでは難しいでしょうか?
所見で胆管と連続しているように
見えたので…
いまも見えます
アウトプットありがとうございます。
>胆管との連続性を否定するには
単純CTのみでは難しいでしょうか?
胆管周囲嚢胞(peribiliary cyst)の場合は、今回のように肝門部を中心に嚢胞性病変ですので、丸い拡張を認めます。
肝内胆管の拡張の場合は、本編でもやってきたように門脈に沿って線状の拡張を認めます。
今回のような胆管周囲嚢胞(peribiliary cyst)が胆管と連続していないことは、そういうものだと覚えておくしかないですね。
肝門部に嚢胞状の丸い拡張を複数認めた場合はこれだと。
過誤腫も胆管周囲嚢胞も、注意して見たことなかったです。嚢胞として流して見ていたかもしれません(^_^;)
調べると、いずれも腫瘍との鑑別が問題になることが稀にあるみたいなので、少し気をつけて見るようにします。
アウトプットありがとうございます。
>嚢胞として流して見ていたかもしれません(^_^;)
救急の現場ではそれで大丈夫だと思います。
区別したところでやることは変わりません。
ただし、胆管周囲嚢胞を肝内胆管の拡張だ!としないことが重要ですね。
今回の胆管周囲嚢胞も門脈周囲浮腫 peri portal edemaも、CTで門脈の周りに低吸収という点は似ていると思われますが、鑑別ポイント等ありますでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>胆管周囲嚢胞も門脈周囲浮腫 peri portal edemaも、CTで門脈の周りに低吸収という点は似ていると思われます
おっしゃるとおりですね。
両者ともに門脈の両側に低吸収域を作るという点は類似します。
鑑別としては、門脈周囲浮腫 peri portal edemaは門脈両側にtram lineを形成すると言われるように門脈両側に綺麗な線状の低吸収域を認めます。
一方で、胆管周囲嚢胞は嚢胞ですので、今回の症例のように丸みを帯びた嚢胞が集簇しているのが特徴です。
MRIでよりわかりやすいですね。
また、胆管周囲嚢胞は肝門部のみに認めることが多いですが、門脈周囲浮腫 peri portal edemaは肝末梢まで認めることがあります。
いつもありがとうございます。
kenken先生の質問とかぶるのですが、
T2WI横断像5/24、冠状断像7/24でみられる瘤のような高信号は、ごろ〜先生の「その他所見」を参照しますと、梗塞後の脂肪変性なのですか?
心室瘤だと思っていたのですが、心室瘤とはどのように所見が異なっているのでしょうか?
副所見ですが教えていただけるとありがたいです。
アウトプットありがとうございます。
>T2WI横断像5/24、冠状断像7/24でみられる瘤のような高信号は、ごろ〜先生の「その他所見」を参照しますと、梗塞後の脂肪変性なのですか?
この質問に答えていませんでした。
脂肪変性はこの部位ではなくCTで低吸収の部分です。
エコー所見を見たところ左室の著明な拡張と記載があるだけで、心室瘤とは記載がありませんでした。
ですが、画像上は瘤状に見えますので、心室瘤疑いとして所見として取ってよいと考えます。
胆管性過誤腫をならったのでつかってみたのですがダメでした。また今回も聞いたことのない病名でしたね、胆管周囲嚢胞。いつ頃から使われている診断名ですか?ついでに胆管性過誤腫もいつ頃から使われていますか?
アウトプットありがとうございます。
>胆管性過誤腫をならったのでつかってみたのですがダメでした。
門脈周囲に認めるのが今回の特徴です。
>いつ頃から使われている診断名ですか?ついでに胆管性過誤腫もいつ頃から使われていますか?
いつ頃かはわかりません・・・・。
教科書にも記載がありますよ。
単純CTで左下葉の胸膜が石灰化している気がしましたが気のせいでしょうか?
陳旧性結核性胸膜炎やアスベストなど鑑別に上げましたが、CTなどの画像所見で鑑別を絞り込めばよろしいのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>単純CTで左下葉の胸膜が石灰化している気がしましたが気のせいでしょうか?
気のせいではないですね。右側にも認めています。
>陳旧性結核性胸膜炎やアスベストなど鑑別に上げましたが、CTなどの画像所見で鑑別を絞り込めばよろしいのでしょうか?
おっしゃるとおりです。画像だけでは鑑別できないこともありますが。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/1214
右背側胸膜の石灰化は見落としてました(汗)
関連のURLも勉強になりました!ありがとうございます。
石灰化が壁側胸膜なのか(胸膜プラーク)臓側胸膜なのか(陳旧性結核性胸膜炎)でどちらが疑わしいか考えることができますので覚えておいてください。
胸膜プラークの場合、石灰化の分布も重要ですが。