【頭部】症例23 解答編

【頭部】症例23

【症例】90歳代女性
【主訴】意識障害
【現病歴】今朝施設内で食事を摂っていたところ突然座ったまま顔をうつ伏せ、声かけに反応しなくなったため救急搬送となる。
【既往歴】腰椎圧迫骨折、骨粗鬆症、慢性心不全、Af
【身体所見】JCS-100、BP 135/103mmHg、HR 83bpm、体温 35.8℃、SpO2 94%(RA)、両側右共同偏視あり

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まず頭蓋内出血がないことを確認します。

今回もかなり微細な所見ですが、半卵円中心レベルで右側大脳半球の中大脳動脈領域の不明瞭化を認めています。

皮質-髄質を追うことができるところもありますが、特に背側では追いにくいと判断できます。

放線冠レベルにおいて、右側の皮髄境界がやや不明瞭(皮質は完全には消えておらず追える部位と不鮮明な部位があります)です。

また右の中大脳動脈(MCA)領域では全体的に白質の低吸収化が目立ちます。

ASPECTSでは、側脳室体部レベル(放線冠レベル)において

  • 中大脳動脈領域中3分の1(M5)

は有意に低下しているとして、あとは、

  • 中大脳動脈領域前3分の1(M4)
  • 中大脳動脈領域後3分の1(M6)

にも低下があると考えられます。

従って、この時点で10-3=7点となります。

ただし、基底核レベルでは症例22で認めたような

  • レンズ核(被殻+淡蒼球)の不明瞭化
  • 島の皮髄境界の不明瞭化

については、少しあるのかもしれませんが、ちょっと指摘はしにくい状態です。

hyperdense MCA signについては指摘できません。

 

診断:右中大脳動脈領域に超急性期脳梗塞疑い

 

同日MRIが施行されました(CTの40分後に撮影されています)。

右の中大脳動脈領域に一致して、今回も皮質を含む異常な高信号を拡散強調像(DWI)で認めており、それに一致してADCの信号低下を認めています。

しかし、これだけ梗塞範囲が広いにもかかわらず、T2強調像では高信号は認めていません。

脳梗塞のMRI-CT所見の経時的変化は以下の通りでした。

今回は、

  • CT:early CT signあり。
  • DWI:高信号
  • ADC:信号低下
  • T2強調像:等信号

ということから、超急性期脳梗塞と診断することができます。

MRAでは、右中大脳動脈のM1部位に欠損を認めており、それよりも末梢の描出がやや不良です。

hyperdense MCA signははっきりしませんでしたが、同部に血栓が詰まっているのだろうと推測することができます。

Afもあり、皮質のspareなく広範に梗塞に陥っていることから、心原性脳梗塞と診断されました。

診断:右中大脳動脈領域の超急性期脳梗塞(心原性塞栓疑い)

※発症時間は明確でしたが、広範囲梗塞で高齢であったため、tPAは施行されず、 エダラボン静注にて保存的に加療されました。

翌日CTです。

右中大脳動脈領域に皮質を含み梗塞が完成しています。

浮腫性変化を認めており、脳溝の不明瞭化を認めています。

6日後のCTです。

梗塞部位に高吸収域が出現しており、出血性梗塞を疑う所見です。

症例22で見た出血性梗塞とは異なり、梗塞発症直後(2-5日後。今回は6日後ですが)の発症であり、出血は広範であり、左側への正中構造の偏位を認めています。

※退院サマリーより抜粋:左半身麻痺あるも、簡単な言語反応あり。 食事は介助にて可能であったが、入院6日目より心不全傾向となり、8日目血圧低下、反応低下あり。9日目に死亡した。

関連:

その他所見:

  • 左中大脳動脈(MCA)分岐部に嚢状動脈瘤あり。
【頭部】症例23の動画解説


お疲れ様でした。

今日は以上です。

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