【腹部TIPS】症例22 解答編

症例22

【症例】70歳代女性

膵がんを指摘され膵頭十二指腸切除術(PD:pancreatoduodenectomy)が施行されました。

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膵以外のある臓器に起こっている変化は?

術前には認めなかった著明な脂肪肝が出現していることがわかります。

術後に、この方の食生活が大きく変わったのでしょうか?

あるいは手術と脂肪肝に何か関係があるのでしょうか?

 

実は、膵頭十二指腸切除術(PD:pancreatoduodenectomy)後にこのようなびまん性脂肪肝が生じることがあることが知られています。

原因は未だ不明ですが、膵切除により、

①膵外分泌機能の低下→脂肪の吸収が障害される→脂肪酸欠乏状態となる→肝臓で糖質から脂肪への変換が亢進し、肝臓への脂肪沈着が生じる。

②低栄養により蛋白合成能が低下→肝臓におけるアポ蛋白の合成が低下し、脂肪の肝外への輸送の低下をきたし肝臓への脂肪沈着を促進する。

といった機序が考えられています1)

また、膵頭十二指腸切除術(PD:pancreatoduodenectomy)後の脂肪肝発症の危険因子としては、

  • 原疾患が膵がんである
  • 膵の切除量が多い
  • 術後の下痢がある

といったものが報告されています2)

 

診断:PD術後に発症したびまん性脂肪肝

関連:脂肪肝とは?CT,MRI画像診断のポイントは?

その他所見:

  • 膵体尾部の主膵管の拡張および萎縮あり。腫瘍ははっきりしないが膵頭部にあると考えられる。手術の結果、膵頭部に腫瘍があり、invasive ductal carcinoma、tubular adenocarcinoma、well differentiated、of the pancreasと診断。膵外への浸潤所見は認めませんでした。
  • 腎嚢胞あり。
  • 冠動脈石灰化あり。
  • 石灰化子宮筋腫の疑い。
  • 動脈硬化あり。
  • 左副腎腫大あり。

参考文献:
1)日消誌 2015;112:905―913 P93-101
2)J Hepatobiliary Pancreat Sci 17 ; 296―304 : 2010

お疲れ様でした。

今日は以上です。

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