
症例11
【症例】60歳代男性
画像はこちら
ちょっと見にくいですが、肝表面に横行結腸と連続する楕円形の脂肪濃度を認めています。
横行結腸の腹膜垂(ふくまくすい)が疑われます。
腹膜垂は大網紐に沿って垂れ下がる脂肪組織でしたね。
腹膜垂が横行結腸から離れて、肝表に移動しています。
このような状態を偽脂肪腫(pseudolipoma)と言います。
場所は変わっていませんが、辺縁がやや厚くなり高吸収化しています。
辺縁の高吸収化が進行しています。(thin sliceのみしかなくて申し訳ありません。)
全体の高吸収化が進んでいます。
(逆にここはthin sliceで見たいところですが・・・)
つまり、石灰化が起こっていると考えられます。
一連の流れをまとめますと、
横行結腸に腹膜垂がある
→(おそらく腹膜垂炎を起こして横行結腸から遊離)
→腹膜垂が遊離して肝表に移動(偽脂肪腫)
→辺縁から石灰化が進行
→全体の石灰化が進行
→(おそらく腹膜垂炎を起こして横行結腸から遊離)
→腹膜垂が遊離して肝表に移動(偽脂肪腫)
→辺縁から石灰化が進行
→全体の石灰化が進行
という過程を見ていると考えられます。
腹膜垂が石灰化したものを、腹膜ネズミとか、腹腔内遊離体といいます。
腹膜ネズミは、症例5でやりましたね。
関連:
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
腹膜ねずみのところの「コメント」でご教示いただいたところですね(^▽^)/
>腹膜垂が横行結腸から離れて、肝表に移動しています。このような状態を偽脂肪腫(pseudolipoma)と言います。
>腹膜垂が石灰化したものを、腹膜ネズミとか、腹腔内遊離体といいます。
命名って、ほんとに難しいですねぇ(;’∀’)
「偽脂肪腫」というのが、「素人を寄せ付けない」感があります(;’∀’)
今度、石灰化していない「脂肪濃度の遊離体」ということで、
「メタボねずみ」
と改称することを、学会に提言してください、お願いしますm(__)m
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように同じものなのに名前がころころ変わりますね。
名前も大事ですが、何が起こっているのか、何が何に変化しているのかがわかる方が重要ですね。
>「メタボねずみ」と改称することを、学会に提言してください、お願いしますm(__)m
学会は関係ない思いますが、そちらの方がインパクトがあってウケそうですね(^o^)
最初、肝臓のS6あたり?のLDAかなとしか思わず
このLDAが現れて消えてとしているのでなんだろう?と、思いましたが、
偽脂肪腫というものがあるのですね。
偽脂肪腫周囲の、石灰化なんですが、
肝臓の濃度と、同じに、見えるのですがこれよりもっと高吸収に
なっていくのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
そうですね。おっしゃるように一般的には症例eで見たような高吸収になっていきます。
どれくらい時間がかかるのか、個人差などがあるのかは不明です。
すみません、よく見たら、
背側の方の辺縁が高吸収になってますね。
これから全体的が石灰化する
途中ですね。
そうですね。辺縁に目立つ石灰化が今後進行していくと思われます。
お世話になっています。
初回の肝臓に接した横行結腸の腹膜垂には気がつきませんでした。石灰化が完成するまでの経時的変化を実感することができました。
ある書籍で「画像診断は、時間の流れの断片的な情報であって、全体的な流れの中での画像のもつ意味を忘れてはならない」と読んだことがあります。まさにその通りです。
アウトプットありがとうございます。
>初回の肝臓に接した横行結腸の腹膜垂には気がつきませんでした。
私もです。よくよく見るとこれか!!という感じでした。
>石灰化が完成するまでの経時的変化を実感することができました。
貴重な症例ですね。本当はもっと石灰化して欲しいのですが、これが現状最新です。
>ある書籍で「画像診断は、時間の流れの断片的な情報であって、全体的な流れの中での画像のもつ意味を忘れてはならない」と読んだことがあります。まさにその通りです。
ですね。腹膜垂、偽脂肪腫や腹膜ネズミなどいろんな名前がついていますが、見ているものは同じですからね。
これは最初のCTでは絶対気づけない自信があります.石灰化したものが写っていて,後から見返すとわかったという感じですかね.難しいです.
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように最初のCTでは気づけませんね。
肝偽脂肪腫となってははじめて気づけますね。
片腎と消化管内の高吸収域にばかり目が行って、全く気づけませんでした。「ねずみ」のbefore/afterを経時的に追ったCTを見たのは初めてで面白かったです。
アウトプットありがとうございます。
「ねずみ」が動く経時的変化はたまにありますが、今回のような経時的変化はなかなかないので、
「ねずみ」ネタが多い気もしますが提示しました!
ネズミの石灰化は辺縁優位と覚えており、時間がたつと中心まで石灰化してくるという印象がなかったため勉強になりました。
他に辺縁優位の石灰化をきたすものとしては、塵肺(珪肺)の縦隔‣肺門リンパ節を考えますが、他にもありますでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
辺縁優位の石灰化ですが、ちょっとこれ以外思いつかないので、また見つけたら報告します。
お疲れさまです。
その他所見で少し質問させて頂きたいのですが、
上行?横行結腸憩室の内部に糞石。
右腎臓摘出後で右腎静脈に縫合器具あり。
胃内に高吸収なものはガストログラフィン。
だと思うのですが、
いかがでしょうか?
よろしくお願いします。
アウトプットありがとうございます。
いずれもそれで結構です。
偽脂肪腫の病変を「肝右葉に嚢胞出現」と書いてしまいました・・
嚢胞には見えませんでしょうか!?経次的に高吸収になっているのは、腎嚢胞のように蛋白成分が多くなっているのかと・・・?
アウトプットありがとうございます。
嚢胞のようにも見えるかも知れませんが、CT値からも(濃度を変えられないので恐縮ですが)脂肪です。
消化管に造影剤があったので膵臓ばかりに目がいって気付きませんでした。
これでは偶発腫は見落としますね。
反省しました。
胆嚢頸部に淡いhigh densityがあるように見えるのですがポリープでもあったのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
胆嚢頚部はやや淡く高吸収にも見えるかもしれませんが、単純CT上は、正常範囲です。
症例bであったように胆石があってもCTでは指摘困難なこともしばしばありますね。
腹腔内遊離体の経時的変化が分かって、大変貴重な症例ですね(^▽^)/
それにしても、なかなか高頻度にCTがとられていますが、何かのフォローですか?
遊離体のフォロー目的でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
消化管癌の術後のフォローだったと思います。
もちろん遊離体のフォローではありません(^_^;
綺麗に経過が追えていて勉強になります。こんな風に石灰化していくのですね。いつかどこかで骨島の経過を見たことがありますが、あれと同じく途中だけ見ると異常ととらえてしまいそうです。
アウトプットありがとうございます。
そうなんです。経過が追えた貴重な症例です。
もう少し石灰化が明瞭化してくれればなおよいのですが。
>いつかどこかで骨島の経過を見たことがあります
そうなんですね。こちらは注意してみた(経過を追った)ことがありませんでした。ありがとうございます。
以前、ご教授いただいた「腹膜ねずみ」はこのように変化していくんですね。勉強になります。
経時的な変化が目に見える画像は、非常に分かりやすいです。初見では全く分かりませんでしたが、何度も復習して読みとれるようにしていきます。
アウトプットありがとうございます。
脂肪の塊が脱落して、石灰化していく様子がよく分かりますね(^^)
肝膿瘍が長い経過のうちに石灰化をきたしたのかと考えたものの、低吸収域が肝表面に見えるのでおや?と思いましたが、腹膜垂だったのですね。勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。肝表面に存在して肝内ではないという点も診断に重要ですね。
右結腸曲あたりが気になりましたが、右腎摘出後のためこのような画像になるのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。腎摘後でスペースがあるところに、結腸が存在しており、普段はあまり見ない分布になっています。
いつも貴重な症例ありがとうございます。
初回から6年後のCTでは左副腎外側脚に低吸収の腫瘍があるように見えます。ただ過去のCTではあまりはっきりしませんが、右腎摘の原因が悪性腫瘍だとすると、稀ですが転移も鑑別に入れなきゃですよね?
ただCTのパーシャルボリューム効果の可能性もあら、questionableな所見かもです。
管理人先生のご見解を??
アウトプットありがとうございます。
確かに3年後CTから明瞭化しているように見えますね。その前では指摘できない所見です。
おっしゃるように転移も鑑別に入れないとですね。
17、40、62、120、140枚目では右腹部の腹斜筋に消化管がめりこんでいて濃度がぼやけている(表現が難しいですか)ような感じがします。炎症でしょうか。これが異常所見と思ってしまいました。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように少しヘルニア傾向にあるのかなと思い元も画像をチェックしたところ右腎摘後の方でした。
ですのでその痕を見ているようです。確かにご指摘してくださったところも正常ではありませんね。
お疲れ様です。
最後の年の CTで、上行結腸右側腹壁、筋肉が損傷している様に見えるのは何でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
別の方にも同じ質問をいただいています。右腎摘後のためです。
初回のCTで存在に気づきませんでしたので、7か月後のCTで初めて認められたものと思い、肝臓由来のものだと思ってしまいました。それでも腹膜垂という用語は初耳でしたし、炎症により離断して、移動することも驚きでした。貴重な症例ありがとうございました。先生の症例は以前に示された症例と結びついているケース(今回は症例5)があるので、非常に勉強になります。
最後に石灰化への途中ということでしたが、この先はより高吸収になるのですか?
アウトプットありがとうございます。
>最後に石灰化への途中ということでしたが、この先はより高吸収になるのですか?
そうですね。最終的には石灰化するケースが多いです。
このケースも徐々に石灰化していると考えます。
この後のCTがあったらよかったのですが、残念ながらこれが最後で以後撮影されていません。
肝左葉がないように見えたことと、右腎摘出後に気を取られ、全く気づくことができませんでした。
お恥ずかしいことに肝左葉の形状にやや変化があるように見え、切除後に再生しているものかと飛んだ勘違いをしてしまいました。
勉強になります。
アウトプットありがとうございます。
今回該当部位のみ提示しておりますので、左葉の形状に眼が行ってしまうのは仕方ないかもしれません(^_^;)
全部提示すれば左葉は変化がないことがわかるので・・・。