
症例13
【症例】20歳代 男性
【主訴】嘔吐
【現病歴】今朝より調子が悪い。仕事に行ったが嘔吐を繰り返す。
【既往歴】膵神経内分泌腫瘍にて膵頭十二指腸切除後、肝転移に対してTACE後。
【身体所見】腹部膨満軽度あり
【データ】WBC 14600、CRP 0.01
画像はこちら
小腸の拡張像およびニボー像を認めています。
閉塞機転を探していくと・・・・
冠状断の方がわかりやすいですね。
閉塞機転を認めており、その口側に糞便様のプツプツとairを含む構造を認めています。
これをsmall bowel feces signといい、閉塞機転を示唆する所見です。
つまりこの先に閉塞機転があるというヒントになるサインです。
ただし今回は小腸の結構な範囲でこの糞便様のプツプツを認めていますね。
最も目立つ部位の先が閉塞機転となっています。
術後であることから、癒着による小腸腸閉塞と診断されました。
診断:癒着による小腸腸閉塞
※保存的に加療されます。保存的に加療されるはずでしたが、閉塞機転のbeak sign構造から、絞扼性腸閉塞の可能性を否定できないと外科で考えられ、緊急手術となりました。
————————————————————————————————
【手術記録より】
腹腔内にほとんど癒着は認めず、腹水も少量であり、漿液性であった。
下部回腸に明らかなcaliber changeを認めた。
腸管拡張している肛門側にbandや癒着は認めなかった。
腸管内に弾性軟の充実で可動性のある腫瘤を触知できた。この腫瘤より口側で明らかな腸管拡張を認め、同部位が閉塞機転となっていた。
小腸切開を行う方針とした。
であった。
ということで、癒着による小腸閉塞かと画像的には思われましたが、術後診断では、
診断:食餌性腸閉塞
となります。
術前のCTでは、機械性の小腸閉塞で、血行障害はない(絞扼性腸閉塞ではない)であろう、ということがわかればOKです。
関連:
その他所見:とくになし。
症例13の動画解説
※動画内で用いている「イレウス」という用語は、すべて「腸閉塞」と呼ぶのが正しいのでご注意ください。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
まず、今回最初に画像で疑われた、「癒着性イレウス」について質問させてくださいm(__)m
今まで見てきた画像では、術後の癒着性イレウスの
「癒着」部は、皮膚の直下ばかりだった記憶があります。
今回の画像の閉塞起点は、それよりは少し深部にあるように見えますが
(水平断でも、皮膚直下はあまりぐちゃぐちゃしていないように感じます)、
このように内部(腸間膜など)の癒着にとどまる症例(結果的に今回は違ったとしても)は
よく見られるものですか?
また、
今回画像の、特に冠状断像で、
へその高さあたりに血管などの構造物がぐるっと巻いているように見えますが、
これはwhirl signと言ってよろしいでしょうか?
お手数をおかけしますが、上記2点についてご回答いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます
アウトプットありがとうございます。
>今回の画像の閉塞起点は、それよりは少し深部にあるように見えますが
(水平断でも、皮膚直下はあまりぐちゃぐちゃしていないように感じます)、
このように内部(腸間膜など)の癒着にとどまる症例(結果的に今回は違ったとしても)は
よく見られるものですか?
頻度はよくわかりませんが、深部であっても癒着性イレウスはしばしばあります。
>へその高さあたりに血管などの構造物がぐるっと巻いているように見えますが、
これはwhirl signと言ってよろしいでしょうか?
そうですね。ぐるっと巻いていればwhirl signと言って良いと思いますが、
正常でも結構認められるのでこれがあれば絞扼性という訳ではありません。
あくまで所見の一つですね。
お世話になっています。
食餌性イレウスの場合は、基本手術はしないのですか?
そうですね。
絞扼性イレウスや嵌頓(これも一種の絞扼性ですが)でない場合は、基本はイレウス管などで保存的に加療されます。
癒着性イレウスと言い切ることは難しいいんですね.
今回のsmall bowel feces signの箇所がエノキダケの箇所なのでしょうか.
アウトプットありがとうございます。
言い切ることは難しいですね。
おっしゃるようにsmall bowel feces signが目立つ箇所がエノキダケです。
門脈、脾静脈が拡張しているように見えてしまったため血管を追ってしまいました。
beak signを疑うことが出来なかったので今回つけていただいているイレウスCT画像で復習したいと思います。
アウトプットありがとうございます。
>beak signを疑うことが出来なかったので今回つけていただいているイレウスCT画像で復習したいと思います。
閉塞機転を探すヒントにsmall bowel feces signを参考にしてみてください。
絞扼性イレウスではない、というところまではOKでした(^▽^)/
しかし、ただ「単純性イレウス」としてしまって、その下位の分類も明記(原因を推定)することができていませんでした。
というより、閉塞起点がよくわからず・・・
「二ボーとsmall bowel feces signがある」ことと「虚血所見がない」ということのみで、「小腸の単純性イレウス」と答えていました。冠状断も見たんですが、やっぱり腸管は難しいですね(;´Д`)
アウトプットありがとうございます。
>「二ボーとsmall bowel feces signがある」ことと「虚血所見がない」ということのみで、「小腸の単純性イレウス」と答えていました。
small bowel feces signが見つけられたらその先に閉塞機転があるのが通常です。
ということは、その先の閉塞機転が、
・癒着なのか
・食餌性なのか
・外ヘルニアなのか
・それともclosed loopなのか
などを自分なりに思考する必要があります。
私は癒着だ!と思いましたが、結論は食餌性でした。
>絞扼性イレウスではない、というところまではOK
まあここが一番大事なわけですが!!!
こんばんは。いつもありがとうございます。
今日も盛大に間違えてしまいました…以下、間違いに至った私の思考経路です…
①肛門から腸管を追って行こうと思ったのですがうまく追えず、そもそも下行結腸に到達することができませんでした…
②さらに、横行結腸がなんだかぐねぐねと蛇行しすぎているような気がして、そもそもこれが横行結腸なのか確信を持つことができませんでした…。
③また、横行結腸が同定できなかったうえに、これを小腸と考えてしまい、小腸が口側に挙上してしまっていると考えました。
④よって、術後ということもあり、小腸が内ヘルニアをきたしている可能性を考慮し、かつ絞扼を疑わせる所見がなかったので、緩めの腸閉塞をきたしているのではないかと推測してしまいました。
⑤今回は横断像にばかり着目してしまい、冠状断でしっかりとsmall bowel feces signを見つけ出すことができませんでした。
まだまだ修練が足りなかったです…復習しておきます…
アウトプットありがとうございます。
今回は、small bowel feces signが広範に見られる症例でしたね。
なかでも最も目立つ部位に着目してみてください。
今回は非常に稀な症例ではなく、日常的にもよく見られる症例ですので、
しっかり復習して次に繋げてください(^o^)
2つ質問させてください。
①今回の症例はsmall bowel feces signがありSBOと考えたのですが、CT横断像の186~188枚目あたりでCLOを形成しているようにも見えて悩みました。虚血所見や腸間膜の脂肪織濃度上昇などはなく絞扼性ではないのかなぁと思いましたが、たしかにbeak signのように見える部位もあり悩ましく、その場合にはどのように考えればいいのでしょうか?やはりCLOの方が怖いので外科コンサルトになるのでしょうか。。
②またsmall bowel feces signがある場合でもCLOとなることはありますでしょうか?自分の中ではsmall bowel feces signがあればSBOかなぁという眼で見ているのですが(もちろん絞扼の有無は調べますが)。
アウトプットありがとうございます。
>CT横断像の186~188枚目あたりでCLOを形成しているようにも見えて悩みました。
この部位にはclosed loopはなさそうです。前後の腸管を追うことができます。
closed loopを形成する場合は、腸間膜の浮腫が目立つことが多いのですが、今回はそのような所見は認めていません。
>たしかにbeak signのように見える部位もあり悩ましく、その場合にはどのように考えればいいのでしょうか?やはりCLOの方が怖いので外科コンサルトになるのでしょうか。。
こればかりはケースバイケースですね。closed loopに見えたのであれば絞扼性腸閉塞の疑いがあるとして、外科コンサルトすることになります。
>small bowel feces signがある場合でもCLOとなることはありますでしょうか?
あります。small bowel feces signがあくまで閉塞機転がその先にあることを示唆する所見ですので、closed loopの直前に認めることもあります。
今回は小腸の腸閉塞はすぐわかりましたが、small bowel feces signが大きなヒントになりました。冠状断でキャリバーチェンジのところを見つけたときはうれしかったです。拡張腸管を追うのが難しかったです。同じところにまた戻ってきてしまって・・・。
アウトプットありがとうございます。
>今回は小腸の腸閉塞はすぐわかりましたが、small bowel feces signが大きなヒントになりました。冠状断でキャリバーチェンジのところを見つけたときはうれしかったです。
今回は、small bowel feces signがちょっと広範に認めたため厄介でしたね。
確かに、冠状断がわかりやすいかもしれません。
>拡張腸管を追うのが難しかったです。同じところにまた戻ってきてしまって・・・。
その経験が現場で必ず活きてきます。ここで追うことで、現場でパニックになったり、「イレウス(終了!)」として投げ出す頻度は減ると思います。
症例ありがとうございます。
”small bowel feces signが見つけられたらその先に閉塞機転があるのが通常です”
そして、その原因が”癒着なのか・食餌性なのか・外ヘルニアなのか・closed loopなのか”
肝に銘じて、これからの症例にあたります。
アウトプットありがとうございます。
>small bowel feces signが見つけられたらその先に閉塞機転があるのが通常です”
閉塞機転がないこともありますが、ヒントになることが結構ありますので闇雲に腸管を追うよりはこのサインがないかをチェックしてみてください。
本日もありがとうございます。
small bowel feces signから閉塞機転の同定が出来て良かったです。癒着性腸閉塞だろうと思っていましたが、こんなこともあるんですね。。驚きました。
アウトプットありがとうございます。
>small bowel feces signから閉塞機転の同定が出来て良かったです。癒着性腸閉塞だろうと思っていましたが、こんなこともあるんですね
閉塞機転同定できたようでよかったです。
あとからその目で見るとちょっと食塊の部分が目立ちますね。
なかなか初回の画像からは言いにくいかもしれませんが、他の食餌性を見ていてもこのような感じなので、普通のsmall bowel feces signよりも塊感がある場合は食餌性の可能性も考えましょう。
貴重な症例ありがとうございます。
一つ質問なのですが、
閉塞起点をレポートに記載する場合はどのように表現しますでしょうか?今回でしたら「L3レベルの高さの腹側左側にsmall bowel feces signを認めその先が閉塞起点となっていると考えられる」という表現でしょうか?
閉塞箇所がわかる画像と矢印を貼り付ければ十分でしょうか?
細かいことで申し訳ありません。
アウトプットありがとうございます。
>閉塞起点をレポートに記載する場合はどのように表現しますでしょうか?今回でしたら「L3レベルの高さの腹側左側にsmall bowel feces signを認めその先が閉塞起点となっていると考えられる」という表現でしょうか?
これでよいですが、
small bowel feces signを認めその先が閉塞起点となっていると考えられる
→small bowel feces signを認め、その先に管腔径差(caliber change)を認めているため、閉塞起点となっていると考えられる
と実際に細くなっているという事実を入れた方がより良いですね。
>閉塞箇所がわかる画像と矢印を貼り付ければ十分でしょうか?
こちらでも十分ですね。
むしろ矢印入りの画像の貼り付けが重要ですね。
L3レベルのと言葉だけよりも遙かに親切です。