
症例29
【症例】60歳代男性
【主訴】腹痛
【現病歴】入院当日の朝上腹部痛が生じ38.5°Cの発熱も生じたが、ゴルフをプレイしていた。プレイ中は水分摂取や食事摂取は問題無く行っていた。その後右下腹部に痛みが移動し発熱も改善しないためER受診された。1ヶ月前にも同様の腹痛あり、自然軽快した。
【既往歴】HT、脂質異常、未破裂動脈瘤(2年前にコイリング)
【身体所見】腹部:fatty,軟・右下腹部に圧痛(+)、反跳痛(+)
【データ】WBC11000、CRP2.6
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上行結腸に多数の憩室を認めています。
その尾側にもairを認めており、一見これも結腸憩室のように見えます。
しかし、虫垂を追ってみるとこのairは虫垂と連続している腸管外ガスであることがわかります。
ガス周囲には脂肪織濃度上昇を認めており、虫垂炎を示唆する所見です。
ガスはここに限局しておりますので、虫垂炎が穿通したことを考えなければなりません。
これらの所見は横断像だけ見ていると気づきにくいかも知れません(ローテートしてきた研修医の先生は横断像しか見ておらず見落としてしまった症例です)が、冠状断像を見ると虫垂とガスの関係は明瞭です。
横断像だけでなく、
「冠状断像を制するものが虫垂炎診断(もしくは虫垂同定)を制する!」
と改めて感じる症例ですね。
診断:急性虫垂炎の穿通
※同日に緊急手術が施行されました。手術記録には、虫垂は先端で間膜内に穿通していた。と記載がありました。病理学的には壊疽性の虫垂炎と診断されます。
復習症例29の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
ありがとうございます。勉強になりました。
「Airの分布から腸間膜内→穿孔性虫垂炎に見えるが、
それならfree air になるはず→消去法で憩室炎穿通」
としてしまいました。
あのブラブラした虫垂が穿通するイメージを持てませんでした。
虫垂炎の穿通というのは虫垂間膜内への穿通ということなのでしょうか?
それとも上行結腸の腸間膜に接して、そこに穿通という事なのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>あのブラブラした虫垂が穿通するイメージを持てませんでした。
穿孔した虫垂は膿瘍を周囲に作れば同定できない位のこともありますし、腫大はむしろ認めないことが多い様な気がします。
>それとも上行結腸の腸間膜に接して、そこに穿通という事なのでしょうか?
どちらの間膜内かまでは記載がありませんでした。また画像からもわからないと思います。
いつも貴重な症例ありがとうございます。
虫垂炎の穿通、全く見逃してしまいました。
それよりも腎臓周囲の脂肪織濃度上昇が気になっていたのですが、こちらは有意な所見ではないでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>腎臓周囲の脂肪織濃度上昇が気になっていた
気にするべき所見ではありますが、両側ですので、過去画像が今回ありませんがあれば比較も重要となります。
若年者ならば有意であることがありますが、両側で左右差なく、この年齢ならば非特異的所見であることが多いです。
片側ならもちろん有意です。