
症例30
【症例】50歳代女性
【主訴】胸痛
【現病歴】昨晩夕食後、絞扼感を伴う胸痛と心窩部痛、悪寒あり。痛みは定期的に生じていたが我慢できる程度であり、様子を見ていた。本日になって右足のふくらはぎの痛みを自覚したが様子を見ていた。胸痛症状続くため来院。
【既往歴】右股関節術後
【身体所見】特記すべき異常所見なし。
【データ】WBC 8400、CRP 0.04、D-Dダイマー 2.5
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胸痛および下肢の痛みから深部静脈血栓および肺動脈血栓塞栓を除外目的でダイナミック撮影がなされています。
左右の肺動脈本幹および末梢に肺動脈血栓塞栓を疑う低吸収なdefectは認めません。
また両側下肢に深部静脈血栓を疑う所見を認めていません。
では、胸痛の原因は何でしょうか?
それはこちらです。
胃体下部から前庭部において、広範な粘膜下層の肥厚を認めていることがわかります。
胃幽門部では筋層が発達しており、あたかも壁肥厚様に見えることがしばしばありますが、今回は幽門部ではなく、また肥厚しているのは粘膜下層です。
このような所見をCTで認めた場合、かつ胸痛や腹痛症状がある場合に考えるべきは、
- 急性胃粘膜病変
- 胃潰瘍
- アニサキス胃炎
などです。
アニサキスの場合は、食事歴に加えて、腹水貯留や腸間膜浮腫を伴うのが一般的で今回はアニサキスを疑う所見ではありません。
ですので、胃潰瘍を含めた急性胃粘膜病変が疑われます。
診断:急性胃粘膜病変の可能性があるので、内視鏡で精査ください。
※内視鏡検査がされました。胃体下部前壁に胃潰瘍A2 stageを認めました。
タケキャブ、ガストローム内服開始となり、外来フォローされています。
関連:
- 急性胃粘膜病変(AGML)の画像診断、びまん性胃壁の浮腫性肥厚の鑑別
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍の透視所見、CT画像所見のポイント
- 胃幽門部では筋層が発達しておりCT画像であたかも壁肥厚に見えることがある。
その他所見:
- 甲状腺左葉にLDAあり。
- 肝嚢胞あり。
- 筋層内及び粘膜下子宮筋腫疑い。
- 右卵巣嚢腫あり。機能性嚢胞疑い。
- 少量腹水あり。生理的範囲内。
- 右大腿骨頸部術後。
復習症例30の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
いつもありがとうございます。病歴とDダイマーの値からPTE、DVTを探しに行きましたが、普段見慣れていないこともあり、PTE、DVTのあるなしの判断にあまり自信が持てませんでした。PTE、DVTをチェックする際のコツや注意点などはありますでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>PTE、DVTをチェックする際のコツや注意点などはありますでしょうか?
動画で少し解説しているように、まずは肺動脈を1つ1つ追えるところまで末梢まで追い、抜け(低吸収域)がないかをチェックします。
その際に、横断像だけでなく冠状断像の方がわかりやすいことがあるので、動画ではしてませんが、必ず冠状断像でもチェックします。
DVTについても同様で両側の静脈を下肢まで隈無く追います。たまに静脈が造影されるタイミングで撮影されていないことあるのでその点には注意が必要です。