
【頭部】TIPS症例51
【症例】80歳代 男性
スクリーニング
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CT
MRI
後頭部の皮下腫瘤は何?
後頭部皮下に緊満感のある楕円形で不均一な低吸収腫瘤を認めています。
嚢胞ほど低吸収かつ均一ではありません。
また、大脳鎌沿いに低吸収を認めています。
空気?と思うかも知れませんが、そうではなくこれが前回の症例で見た頭蓋内脂肪腫です。
次にMRIを見てみましょう。
皮下腫瘤はT1WIで等信号~低信号、T2WIで一部高信号、一部等信号で内部が不均一です。
DWI(拡散強調像)が非常に特徴的です。
DWIで高信号を示し、ADCで信号低下を示しています。
これは、拡散制限があることを示唆する所見です。
この場合、大きく3つに分かれます。
今回は、皮下に存在する類上皮嚢腫(epidermoid cyst)が疑われ、高い粘稠度を反映して拡散制限を来していると考えることができます。
診断:類上皮嚢腫(epidermoid cyst)疑い
※臨床的には粉瘤(atheroma)、アテローマ、アテロームなどと呼ばれることが多いやつです。
ちなみに、頭蓋内脂肪腫をT1WIで確認してみましょう。
大脳鎌沿いにT1WIで高信号を認めており、CTで認めた低吸収はやはり脂肪腫であると確認することができます。
関連:
【頭部】TIPS症例51の動画解説
関連:頭部領域でのDWI高信号の鑑別
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
これ2週間ほど前に小児頭部MRIで遭遇し、主治医と何何?っとなっていました! リンパ節なんてないし、粉瘤などでもないし、血腫にも見えない。思ったより複雑な信号を呈するけど悪いものには見えないし…と混乱しました。そのとき知っていれば…
まさにTIPS:知っておけば◎症例ですね。
嚢腫だと粘度があり、水よりも高信号を呈するのは理解できるのですが、今回といい当院で出会った症例といい、均一というよりは信号が混在していました。思ったより水や漿液などの信号が混ざり合っているのですね。
アウトプットありがとうございます。
類上皮嚢腫は粉瘤とも呼ばれます。
他の部位にできる場合も同様で、DWIでの高信号、ADC信号低下が1つ手がかりになります。
知ってないとなかなか難しいですね
DWIは脳梗塞診断ばかりではないですね
アウトプットありがとうございます。
>DWIは脳梗塞診断ばかりではないですね
ですね。膿瘍や今回の類表皮嚢胞なども頭部に限らずDWI高信号を示すことで重要で、頻度も決して低くないですね。
基本的なところで恐縮ですが、CTでの低(高)吸収、低(高)濃度という言葉の使い方に混乱することがあります。どのように使い分ければ良いのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>CTでの低(高)吸収、低(高)濃度という言葉の使い方に混乱することがあります。
ざっくりですが、
低吸収=低濃度=黒い
高吸収=高濃度=白い
となります。吸収と濃度は混在して用いない方がよいと思われますが。
ありがとうございます。
例えば、嚢胞など吸収値が正の時も低吸収と表現しているレポートをよくみますが、相対的に黒っぽいのであれば低吸収という表現となるのでしょうか。
それはレポートを記載している人にもよるところはあるますので何とも言えませんが、筋肉などと比較して相対的に表現することも多いです。
嚢胞など吸収値が正の時も、高吸収(≒白)でなければ、低吸収と表現することはよくあります。
よく分かりました、ありがとうございます。
上の動画で取り上げて頂いたDWI高信号の疾患は、全てADCでも低信号になるのですか?
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるようにすべてADCは信号低下となります。
解説動画4:15のところで、「ケラチンを含んでいるのでDWI高信号」と解説いただいております。
これは、「ケラチンを含むと粘稠度が高くなり拡散制限をきたす」、ということなのでしょうか?
書いていて気がつきましたが、、ケラチンというものの性質が理解できていません。。
ケラチンって粘稠度を高くするもの?どちらかというとネバネバしているもの?なのでしょうか???
アウトプットありがとうございます。
辞書を引くとケラチンは硬タンパクの一種と出てきます。
粘稠度が高いことがDWI高信号、ADC低値の原因と考えられています。
ゴロー先生
お調べさせてしまい、大変すみませんでした。ありがとうございました。
ケラチンとはタンパクそのもののようです。
どうもありがとうございました。
類上皮嚢腫→ケラチン含む→高蛋白→高粘稠度
という感じでしょうか。。
以下のページは学術的では全然なくて恐縮ですが。。。
https://www.aska-pharma.co.jp/media_men/column/keratin/
ケラチンとは、わかりやすくいうとタンパク質の一種です。複数のアミノ酸が結合してできています。毛髪を構成する成分の80〜90%がタンパク質で、ケラチンはそのうちの約90%を占めるといわれています。
毛髪以外では爪や皮膚の角質層にも含まれ、繊維状で弾力性があるのが特徴です。
調べていただいてありがとうございます。
ケラチンはよく「おから状」と表現されることがあります。あんな感じなのでしょうね。