
症例58
【症例】80歳代 男性
【主訴】排尿時痛、尿混濁
【既往歴】糖尿病、左尿管結石破砕術後、胆摘後、前立腺癌
【データ】WBC 12000、CRP 3.56、尿:白血球3+、亜硝酸塩-、蛋白2+
画像はこちら
前立腺の右側に辺縁に造影効果を有する液貯留を認めています。
前立腺膿瘍を疑う所見です。
また前立腺は全体的に造影効果の増強を認めており、前立腺炎が示唆されます。
膀胱には憩室が複数あり。
膀胱粘膜の造影効果増強および壁肥厚を認めています。
膀胱炎が示唆されます。
診断:前立腺膿瘍(+前立腺炎+膀胱炎)
膿瘍のドレナージ術も視野に入れつつ、まずは抗生物質で保存的に加療されました。
加療後のCTです。
膿瘍腔のサイズが縮小しています。
このまま保存的に加療されました。
その他所見:
- 冠動脈石灰化あり。
- 胆摘後。肝内胆管拡張軽度あり。胆摘後影響の疑い。
- 肝嚢胞あり。
- 左腎嚢胞あり。
- Douglas窩に腹膜ネズミあり。
症例58の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
今日も身近な疾患(前立腺膿瘍自体はそうでもないですが、尿路感染自体はめちゃめちゃに多いので)
の画像診断を勉強できて面白かったです^_^
縦隔部のLDAは、何でしょう?
「心嚢水がどうのこうの…」
っていう話を聞いたような聞かなかったような気がしていますが、
それなのかどうか果たして…(・・;)w
アウトプットありがとうございます。
>縦隔部のLDAは、何でしょう?
「心嚢水がどうのこうの…」
気管の右腹側、上行大動脈の左背側の液貯留のことでしょうか?
それならば正体はこれです。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/13529
初めて見る症例です。
膀胱憩室というものがあるのですね。
知らなかったです。
今日も為になりました。
ありがとうございます。
その他
肝臓S7にLDAが、あるように見えます、
膵臓萎縮は加齢性変化でしょうか?
両方腎臓形が不整に感じますが
今回の疾患と関係ありますでしょうか?
よろしくお願いします。
アウトプットありがとうございます。
>肝臓S7にLDAが、あるように見えます、
ありがとうございます。追記しました。
>膵臓萎縮は加齢性変化でしょうか?
そうですね。加齢性変化範囲内ですね。
>両方腎臓形が不整に感じますが
今回の疾患と関係ありますでしょうか?
結石が両側にありますので慢性的な刺激を受けている可能性がありますね。
感染後などでも凹凸が不整になることもあります。
それほど目立たないですが少しあるかもしれません。
お世話になっています。
尿道海綿体に腫大を認め造影効果を伴っています。加療後には造影効果は消失しており、尿道炎または、尿道海綿体炎もあったと判断してよろしいでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
かなり細かいところまで見ておられますね!
>尿道海綿体に腫大を認め造影効果
これなんですが、同じ造影CTですが、腹部大動脈と下大静脈の濃度差を見てみると若干治療前の方が早期に撮影されている印象です。
尿道海綿体の造影効果の違いはその違いが大きいのではないかと考えます。
尿道炎、尿道海綿体炎の画像所見をいろいろ調べてみましたが、膿瘍形成でもしていないと画像での診断は困難だと思われます。
もちろん炎症が波及している可能性は今回ありますが。
逆に尿道炎、尿道海綿体炎のCT画像所見など記載があれば教えてください。
ご回答ありがとうございます。
すいません…私自身も尿道炎や尿道海綿体炎は経験したことはありません。造影効果の違いは造影タイミングの違いが影響している可能性が高いということですね、ありがとうございました。
過去の画像を比べる際は、造影タイミングについても、しっかり評価したいと思います。
>私自身も尿道炎や尿道海綿体炎は経験したことはありません。
経験がなくても、画像からこうでないか、実はこういう病態を反映しているでのはないかと推測していくのも楽しいですね。
前立腺炎・膿瘍どちらも実際に経験したことはまだありませんので勉強になりました.
膿瘍形成は見落とさないように注意したいと思います.
アウトプットありがとうございます。
>膿瘍形成は見落とさないように注意したい
そうですね。膿瘍はあらゆるところにできますので、壁の造影効果を伴った液貯留を見れば、膿瘍じゃないの?と疑ってみてください。
毎日お世話になっております!
前立腺膿瘍については指摘することができましたが、膀胱憩室の所見それ自体を指摘することはできても「膀胱憩室」というものの存在自体をしらなかったので、今回初めて勉強させていただきました。
他の受講生の先生もご指摘なさっていた、気管周囲の所見、なんとなくリンパ節の腫大?楕円形というよりはくりっとまるいので反応性よりも転移性のリンパ節腫大なのかしら?などと一瞬考えつつも、結局は素通りしてしまいました。生理的なものと知り、目から鱗です!
これからリンク先のまとめも含めてしっかり勉強しておきます。
アウトプットありがとうございます。
膀胱憩室も心膜洞の液貯留も、前立腺膿瘍よりは頻度がかなり多いのでこの機会に覚えておきましょう!
前情報から泌尿器科系の感染であることは容易にわかりますね。
救外に来た時、造影にもっていけるか、やや不安です。
80代男性、ということもあって画像の閾値は低いと思いますが、自分なら撮れたか、あまり自身ないです。
つい数日前、妊婦さんが熱発で救外を受診されて、尿所見とCVA叩打痛から、
まさにこの講座を思い出し(腎盂腎炎でCTは画像ではないこと)、腎盂腎炎の診断で抗生剤加療できました(^▽^)/
(ちなみに、かかりつけの産婦人科が受診を拒否されたみたいで、すごくかわいそうで、内心ブチ切れそうになっていましたw)
しかし・・・膿瘍のこともあるんですね。その場合はCTが、しかも造影が有用ですよね。
答えが難しい質問かもしれないのですが、先生の考えを知りたいです。
確かに、たとえば腎盂腎炎であれば検査は必須ではないですが、
しかし色々考えると、結局、尿路感染を疑う場合、結局、男性や、ある程度異常の年齢の女性であれば、
CT(出来れば造影)を撮るべきなんでしょうか?
悩ましいです(^-^;
アウトプットありがとうございます。
>80代男性、ということもあって画像の閾値は低いと思いますが、自分なら撮れたか、あまり自身ないです。
そうですね。今回はたまたま造影CTを撮影されたので膿瘍に気づけたとも言えますね。
>しかし色々考えると、結局、尿路感染を疑う場合、結局、男性や、ある程度異常の年齢の女性であれば、
CT(出来れば造影)を撮るべきなんでしょうか?
これについては、合併症との兼ね合いもありますね。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/training/archives/1361
今回の妊婦さんについては、撮影するべきではないですね。
仮に腎膿瘍ならばエコーでもわかりますね。
(腎盂腎炎でCTは画像ではないこと)
→(腎盂腎炎でCTは必須ではないこと)
前立腺と膀胱に異常所見があり、炎症だろうとの判断はついたのですが、前立腺炎か膀胱炎かと思い、前立腺癌の既往、尿所見などから膀胱炎と考えてしまいました。
前立腺膿瘍ははじめてみました。前立腺癌の既往があるから、前立腺の腫瘤は治療中の癌なのでは、と判断してしまいました。
平衡相でどのように造影されるのか調べてからにするべきでした(反省)。
同一施設に長くいると、その施設の領域の偏りがあって、よく見る分野、みない分野ができますが、この領域は単純CTと単純MRIでしかみない領域だったので、落とし穴でした。
気づかせていただいて、有難うございました。今回の症例でしっかり勉強いたします。
アウトプットありがとうございます。
前立腺膿瘍自体は決して頻度が高いものではありませんが、膿瘍はどこにでもできるということで、
辺縁に造影効果を有する液貯留を認めた場合は、膿瘍ではないかと疑ってみてください。
前立腺膿瘍は正当出来たものの、膀胱の所見が憩室か膿瘍か悩み、膿瘍としてしまいました。。
トンチンカンな質問かもしれませんが、これが膿瘍ではなく憩室だという理由を教えていただけますでしょうか?(恥)
ちなみに私が憩室かもと考えたのは、膀胱と連続しているように見えて、壁の染まりや内腔の低吸収が膀胱と同様だと思ったからです。
逆に膀胱周囲の膿瘍と思ったのは、前立腺膿瘍あり、また膀胱壁や周囲の脂肪織濃度上昇もあることから、一元的に考えて炎症が波及して膀胱周囲にも膿瘍形成したのかと思ってしまいました。。
教えていただけますでしょうか?よろしくお願い致します。
アウトプットありがとうございます。
>トンチンカンな質問かもしれませんが、これが膿瘍ではなく憩室だという理由を教えていただけますでしょうか?(恥)ちなみに私が憩室かもと考えたのは、膀胱と連続しているように見えて、壁の染まりや内腔の低吸収が膀胱と同様だと思ったからです。逆に膀胱周囲の膿瘍と思ったのは、前立腺膿瘍あり、また膀胱壁や周囲の脂肪織濃度上昇もあることから、一元的に考えて炎症が波及して膀胱周囲にも膿瘍形成したのかと思ってしまいました。
その思考でほとんどよいと思います。
今回膀胱炎としましたが、膀胱内にも膿瘍がある可能性もあります。
ただ1点、膀胱の感染が壁を越えて膀胱外にあるならば、それは膀胱が破裂をしたということになります。
虫垂炎で離れたダグラス窩に膿瘍を来すことがありますが、これは虫垂炎が穿孔して、膿瘍が腹腔内を移動したためです。
膀胱に膿瘍を形成したとして、膀胱周囲にリンパ節腫大を認めることはあっても破裂しない限り膀胱周囲に膿瘍形成は起こらないはずです。
今回の症例も激しい炎症の症例でした。前立腺に膿瘍があり、膀胱への激しく炎症が及んだのですね。
膀胱憩室があって変な形だったので、前立腺周囲にも膿瘍形成したのかとも思いましたが、そうすると膀胱はどこ??となってしまいます。
他の先生も書いていますが、膀胱周囲の脂肪織濃度上昇あるいは水の貯留とも思いましたが、膀胱壁の肥厚なのですね。
確かに加療前の膀胱内尿は加療後と比べると、少し濁っていたようにも思えます。
アウトプットありがとうございます。
>膀胱憩室があって変な形だったので、前立腺周囲にも膿瘍形成したのかとも思いましたが、そうすると膀胱はどこ??となってしまいます。
そうですね。膀胱そのものがあたかも膿瘍腔のように見えてしまいますね。
>確かに加療前の膀胱内尿は加療後と比べると、少し濁っていたようにも思えます。
膿尿もしくはそれに近い尿なのでしょう。
貴重な症例ありがとうございます。
基本的なことで申し訳ないのですが、
もし単純CTのみだった場合、のう胞と膿瘍の違いはどのようなことがありますでしょうか?
単純CTでこのようなものがあったら膿瘍を疑って造影すべき、というのがありましたら教えていただけますか?
PS
いつもわかりやすいご回答ありがとうございます。
アウトプットありがとうございます。
>もし単純CTのみだった場合、のう胞と膿瘍の違いはどのようなことがありますでしょうか?
単純CTでこのようなものがあったら膿瘍を疑って造影すべき、というのがありましたら教えていただけますか?
単純CTのみだった場合は、嚢胞と膿瘍の鑑別はしばしば困難ですが、単純性嚢胞の場合は嚢胞壁は薄く、周囲に脂肪織濃度上昇などは伴いませんが、膿瘍の場合は伴うことがあります。
例えば肝膿瘍でサイズが大きければ、よくある肝嚢胞よりは、境界が不明瞭になり周囲に浮腫を伴います。
ただし、サイズが小さい場合はやはり単純だけでは、鑑別が困難なことがあります。
尿路感染であまり造影CTを撮像することがないのですが、単純CTで熱源がどうしてもはっきりしない場合は造影を考慮してもいいのかと思わせてくれました。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるとおり、尿路感染を疑う場合はそもそもCTも撮影されないことが多いですね。
>単純CTで熱源がどうしてもはっきりしない場合は造影を考慮してもいいのかと思わせてくれました。
そうですね。膿瘍などの診断は造影CTが非常に有用ですね。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/training/archives/1361
関連のページ拝見しました。これは重要な視点だと感じました。泌尿器科へのコンサル時も含め、造影の提案の基準としてよく覚えて起きます。