虫垂同定ブートキャンプ延長戦 症例3
【症例】70歳代男性
スクリーニング
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※今回、先入観なく見ていただきたかったので、病歴をあえて隠していましたが、以下の主訴や病歴がありました。
【主訴】排便困難
【現病歴】上記症状があり、近医受診。便潜血陽性であり、当院紹介受診となる。
【既往歴】胆摘後
その他所見:
- 胃内に残渣あり。
- 十二指腸にクリップか。
- 腎嚢胞あり。
- 肝嚢胞あり。
- 肝S8に低吸収腫瘤あり。肝転移疑い。
- 腹部大動脈軽度拡張あり。
【虫垂同定ブートキャンプ】延長戦 症例3の動画解説
※内視鏡で、横行結腸に全周性の2型の進行大腸癌を認めており、生検にて中分化型腺癌と診断されました。肝S8の腫瘤は造影MRI(EOB-MRI)にて転移と診断されました。臨床症状伴っており順緊急の手術適応ということで、結腸右半切除、肝部分切除が施行されました。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
ああ、なぜ気付かなかったのだろう。横行結腸の腫瘍に。大腸を追えていたつもりだったのに。
直腸からS状結腸にかけての狭窄(218/341)は気になりましたが、冠状断でははっきりしませんので有意の所見ではないのでしょうね。
アウトプットありがとうございます。
小さな腫瘍はCTでは分かりませんが、サイズが大きい場合は指摘できることがあります。
腸管の蠕動でも肥厚様に見えることがあるので取り過ぎには注意が必要ですが。
>直腸からS状結腸にかけての狭窄(218/341)は気になりましたが
こちらは蠕動ですね。
横行結腸癌は気付けませんでした(;_;)
腰椎椎体骨内に気泡のような黒い丸が有るのが気になりました。これは何で、正常所見という事でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>腰椎椎体骨内に気泡のような黒い丸が有るのが気になりました。これは何で、正常所見という事でしょうか?
椎間板に認めるairは、vacuum phenomenonと言いまして椎間板の変性の一つです。
一方椎体内のairはSchmorl結節といって椎間板が椎体内に脱出したものです。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/4676
症例ありがとうございます。延長戦症例2でS状結腸癌を見過ごしましたが、今回は気づくことができました。このシリーズのおかげです。
本題から外れるのですが、横隔膜はヨットの帆のようにパンと張りつめているイメージを持っていたのですが、この症例の横隔膜はところどころ肥厚し、ひだを形成しています。造影で染まらないから横隔膜(腹膜)転移でもないんだろうし、、、としばし眺めていました。これは呼気時に横隔膜が収縮した像を見ているのでしょうか?それとも個人差(正常変異)なのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>この症例の横隔膜はところどころ肥厚し、ひだを形成しています。
確かにこの症例はこちらの変化でも使えそうですね。
scalloping(横隔膜分割)と呼ばれる加齢性変化です。
腱が弛緩し、たるんでいる状態です。
2つか3つ波打ち右に多いのですが、今回は両側認めていますね。
ありがとうございました、横隔膜分割scalloping、初めて聞きました。
調べてみたら、少し古い文献ですが、↓
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee1973b/25/9/25_9_1337/_pdf/-char/ja
頻度は10.9%、男女比1.3:1、右左1.3:1、両側1%、51-60歳では24%に見られると記載がありました。意外に多かったです。
この横隔膜ひだによって、肝臓に圧痕もできるとのこと。
昔、先輩が「女性が着物の帯をぐいと強く締めていたから肝臓に縦ジワ(圧痕)ができた」と言っていたのが、嘘だとわかりました。
文献調べていただいてありがとうございます。
肝臓に圧痕までできるとは知りませんでした。
今回も一部で圧痕を作っていそうですね。
>「女性が着物の帯をぐいと強く締めていたから肝臓に縦ジワ(圧痕)ができた」と言っていたのが、嘘だとわかりました。
横隔膜分割による肝圧痕だったということですね。
横行結腸にmassがあるのは気づきましたが、S状結腸の狭窄が起きているように見えたのですが、それはただその部位に糞便やガスが溜まっていなかっただけなのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
そうですね。S状結腸には特に異常所見はCTでは指摘できません。蠕動でこのように見えることはあります。
一方で横行結腸の病変部はほぼ均一に造影されてかなり厚いですので指摘したい所見と言えます。
いつもありがとうございます。
昨日リンパ節のチェックについて質問した者です。
腫瘍などでは所属リンパ節のチェックが重要かと思うのですが、
読影医の方は、ここが原発ならここのリンパ節をチェックする、など
所属リンパ節の部位が当然のように頭に入っているものなのでしょうか?
自分は読影医ではないですが、もしそうなら勉強してみようかと
思っております。
アウトプットありがとうございます。
>読影医の方は、ここが原発ならここのリンパ節をチェックする、など所属リンパ節の部位が当然のように頭に入っているものなのでしょうか?
基本はどんな原発であっても全身撮影されている範囲はリンパ節チェックします。
また基本は近いところからリンパの流れに沿ってチェックするという感じですかね。
胃癌などで左鎖骨上窩リンパ節(Virchowリンパ節)に転移したり、食道癌の場合は#106recだったり、精巣腫瘍だったらprimary landing zoneなど特有のものもありますが。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/15582
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/38050
今回は虫垂が追いやすいなと思った症例でした。でも、そこで満足してしまい大事な所見を見落としました…。普段、主訴や現病歴であたりを付けて画像を見ていることも起因しているのでしょうか…。
なかなか1個見つけて安心する習性は治らないのかもしれません。今度こそ見落とさないようにしたいです…。
アウトプットありがとうございます。
>普段、主訴や現病歴であたりを付けて画像を見ていることも起因しているのでしょうか…。
単なるスクリーニング目的の場合は今回の腫瘍も実際は見落とされることも多いと思います。
一方で、便潜血陽性という情報があれば、見る目も変わるかと思います。
今回は先入観を持たずに腸管を追ってみよう、するといいことがあるかも知れない企画ですので、あえて病歴を隠してすいません。
横行結腸の壁肥厚があるなあ、と思いながら、またもやスルーでした・・・。危ない。でも、こうしてこの講座で大腸癌の画像をいくつか経験できているのは必ず今後に生きるなあと思いました。
アウトプットありがとうございます。
CTでひっかけらない大腸癌はたくさんありますので、大腸癌のスクリーニングにCTは十分でない(CTCは別ですが)のですが、今回のように引っかけられるくらいのサイズのものもあるということをこのシリーズを通して感じていただけたらと思います。
大きくなって発見されて、1つ前のCTを見てみると・・・・確かにこのときもあるということもありますし、1つ前ので指摘するのは無理でしょということもあります。
全く同じ間違いの人もいるようですね(^^;;
だいぶん追えるようにはなってきましたが、S状結腸あたりはいつも難しいので、下行結腸〜肛門まで追うと満足して、あとはサラーっといってしまっている気がします。。
アウトプットありがとうございます。
>S状結腸あたりはいつも難しいので
そうですね。一番難しいのはS状結腸あたりであることが多いので、ここを抜ければあとは楽勝〜〜、特に今回はS状結腸が短いので、この症例楽勝〜〜となりがちかもしれませんが、横行結腸も長くて蛇行が激しい場合もありますので要注意ですね。
いつも勉強になっています。今回、横行結腸癌周囲の脂肪組織の増強効果はありますか?181-182/341の腫瘍の背側に認められる線状の構造物は血管でしょうか?腸間膜の肥厚でしょうか?また、虫垂が終了するあたりの305-309/341の小腸の塊のように見える部位も腫瘍かなと思いました。この両者の読影上の違いは何でしょう?胸部のCTは結構見る機会が多いのですが今回の症例の様な横隔膜のScallopingは初めて見ました。何かの術後かと思ってしまいました。
アウトプットありがとうございます。
>横行結腸癌周囲の脂肪組織の増強効果はありますか?
ほぼないです。
>181-182/341の腫瘍の背側に認められる線状の構造物は血管でしょうか?腸間膜の肥厚でしょうか?
血管に加えて、連続性がはっきりしない構造があるので小さなリンパ節もあるのだと考えます。
>虫垂が終了するあたりの305-309/341の小腸の塊のように見える部位も腫瘍かなと思いました。この両者の読影上の違いは何でしょう?
小腸はこのように一塊となることがしばしばあるため、追うことができません。
ですので、小腸腫瘍はよほど壁外に突出したり、腸閉塞を来したりしないとCTでは指摘はできません。
小腸と結腸の特徴の違いですね。
>胸部のCTは結構見る機会が多いのですが今回の症例の様な横隔膜のScallopingは初めて見ました。何かの術後かと思ってしまいました。
確かにこの症例ではかなり目立ちますね・・・。
いつも勉強になっております。先日、指導医は保存的に加療できるイレウスと判断していた患者さんを、腹部CT的には多分複雑性の小腸閉塞だろうなぁ・・・と思っていたら、あれよあれよと状態が悪くなり、外科手術になってしまった例がありました。口を挟んでいたおかげで外科へのコンサルトも早めに進んで、無事に回復したようです。少し自信になりました。もともと、腹部救急画像はとっつきづらいぶん、勉強して役に立っているという実感が強いですね。腹部救急と虫垂ブートキャンプのおかげです、この場を借りて御礼を申し上げます。
さて、今回は横行結腸癌、リンパ節はあまり有意なものなし、までは指摘できましたが、肝転移はスルーしてしまいました。チェックしたつもりなのですが、難しいものですね。
少しだけ脱線しますが、膵臓がかなり薄っぺらくて、肝臓の萎縮、辺縁もスムースじゃない点からは、飲酒歴かなりありそうに思いました。今回は横行結腸癌があるので、転移性肝腫瘍だと思いますが、画像的には1つだけですしPrimaryの肝腫瘍という可能性も考えるべきでしょうか?
胆摘もされてて、憩室も沢山あるので、生活習慣も悪そうに思いますが・・・・
的外れでしたらすみません、コメントさせていただきました。
今後ともよろしくお願いします。
アウトプットありがとうございます。
>腹部CT的には多分複雑性の小腸閉塞だろうなぁ・・・と思っていたら、
closed loopを認めていたということですね。素晴らしいです。
>肝転移はスルーしてしまいました。チェックしたつもりなのですが、難しいものですね。
横隔膜の蛇行によって肝臓の形状が変化しており、おまけにドーム下の小さな結節ですので少し難しかったかもしれません。
>画像的には1つだけですしPrimaryの肝腫瘍という可能性も考えるべきでしょうか?
おっしゃるように肝転移で決定ではありません。
早期濃染もされていますし、血管腫などの可能性も残ります。
指摘をして、造影MRI(EOB-MRI)で精査するのが良いと思います。
ユーザー名とパスワードが要求されます。教えて下さい
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