
【症例】40歳代 男性
【主訴】転倒
【現病歴】本日食事中にアレルギー症状出現し、一時的に意識消失し転倒した。
【身体所見】JCS 0、下顎正中よりやや右側に4cmの切創あり。開口不良あり。左外耳道より出血あり。
画像はこちら
まず横断像から見ていきましょう。
右の前頭部に外傷性くも膜下出血を疑う高吸収を認めています。
(冠状断でも確認したいところですが、再構成がされていませんでした。)
開口障害があるということで、顎関節周囲を見てみると、下顎骨の左側の関節突起が本来あるべき場所に認めておらず、やや尾側のスライスに認めています。骨折を疑う所見です。
冠状断像でも下顎骨の左側の関節突起が骨折し、前方やや内側に転位している様子がよく分かります。
3D再構成では、下顎骨の左側の関節突起の骨折および転位の様子がより明瞭にわかりますね。
さて、下顎骨骨折の部位と頻度は以下の様に報告されています。
今回は上方の突起部分が骨折していますが、背側部分であり、頻度の高い関節突起部分の骨折であることが分かります。
診断:左側下顎骨骨折(関節突起)
※耳出血があり、髄液漏の可能性が疑われ、脳外科入院となりました。その後耳鼻科コンサルトで外耳道出血によるものと診断され形成外科に転科となりました。
形成外科にて観血的手術(左関節突起の骨切り、一塊にして固定、下顎骨体部を下方に牽引して、プレート固定)が施行されました。
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【顔面】症例15の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
下顎骨の各名称は知りませんでしたので、この症例を機に覚えたいと思います。
アウトプットありがとうございます。
各名称は難しいですね(^_^;)
都度教科書でチェックすればいいかと思います。
顎関節に捕らわれてSAHに気がつきませんでした…
アウトプットありがとうございます。
ちょっとアーチファクトもあり気づきにくいですね(^_^;)
私も下顎は体部と枝部しか知らなかったです。勉強になりました。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
細かい名称は覚える必要はないかと思いますが、この機会にこんな名称があるということを体験しておきましょう。
意外と下顎骨の解剖は勉強する機会ないんですよねー
参考になります!
アウトプットありがとうございます。
救急外来でたまに見ることがあるかもしれませんが、頻度は多くないですね。
頭部外傷に合併していることもあり、担当されることもありそうですね。
あやふやだった下顎骨の解剖を勉強し直すことが出来ました。
アウトプットありがとうございます。
良かったです。1度やっておけば次は覚えなくても見直せば大丈夫ですね。
いつもお世話になっております。
見るべき構造物がどんどん増えてきて、自分なりに見る順番を決めたいとも思うのですが、決めてもその順番を忘れてしまったり、順番に囚われてしまってきちんと見ることが出来ないなぁと行き詰まってます。
結果、順番を気にせず(皮下組織や骨を先に見てから脳実質を見るようにはしていますが)心のままに見て、結構場当たり的な感じ(あれ、そういえば、下垂体、眼球は見たっけ、、みたいな)になってしまっているのですが、何かアドバイスがあったら教えていただきたいです。
アウトプットありがとうございます。
まず何より大事なのが病歴の確認ですね。なぜCTを撮影するに至ったかということです。
今回は意識消失もありますが、外傷がありますので、出血や骨折がないかを中心に見ていくことになります。特に受傷部位を確認して、その周囲やその対側は注意してみます。
骨は骨条件にして横断像以外の冠状断像や矢状断像もあれば確認します。
慣れるまでは、下垂体、眼球など順番を決めて見るのが良いと思います。
ただ、現場はそれだと時間がかかってしまうので、左右差を意識して左右で違うところがないかをチェックする、さらに下垂体は別にチェックする、という感じですかね。
あと、またどこかで紹介しますが、脳表の出血についてはウインドウ幅(150-200程度)を広げると骨とのコントラストがつきやすくなり見えやすくなることがありますので、有効です。
お忙しい中、詳しくありがとうございます。
早速実践してみます! また疑問点が浮かんだら質問させてくださいm(_ _)m
くも膜下出血に気がつきませんでした、、、(^_^;)
また、顔面(横断像)の22/59の左側頭骨に骨折線または骨縫合の離開があると思ったのですがいかがでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>顔面(横断像)の22/59の左側頭骨に骨折線または骨縫合の離開があると思ったのですがいかがでしょうか?
骨折線ならばもっとシャープな線になりますね。
縫合線だと思われますが、これくらいならばよくありますので、正常範囲と考えます。
確かにこの症例は左側のこの箇所が少し目立ちますが。
いつも大変お世話になっております!
いくつかご質問がございます.
●矢状断C5に認められる椎体内の低吸収の空洞はシュモール結節でしょうか?それともVertebral pneumatocystか何かでしょうか?
●骨条件で環椎左側の内側に認められる小骨片は骨折と考えるべきでしょうか?それとも石灰化か何かでしょうか?
本題とはずれますが,頚部痛の主訴や棘突起の叩打痛などの身体所見が全くなくても頚部は必ず確認するように心がけなければと思っています(救急外来で一度痛い目にあっているので…)
時間制限があるなかで撮像された範囲を全部隈なくチェックするのは大変です….緊急性のある部位とそれ意外とを重み分けして丁寧に正確に読影できるように訓練したいです.
アウトプットありがとうございます。
>矢状断C5に認められる椎体内の低吸収の空洞
シュモール結節にしてはしっかりとした嚢胞で、椎間板との連続性もはっきりしないので、pneumatocystでよいかと考えます。
>骨条件で環椎左側の内側に認められる小骨片
石灰沈着ですね。この辺りの観察も重要ですね(意味深)
>救急外来で一度痛い目にあっているので…
むしろこの体験談を伺いたいです(^_^;)
>時間制限があるなかで撮像された範囲を全部隈なくチェックするのは大変です….緊急性のある部位とそれ意外とを重み分けして丁寧に正確に読影できるように訓練したいです.
そうですね。外傷に限らずですが、多くの症例では所見がないことが多いので、さらっと読影しがちですが、
・わずかな外傷性SAH、急性硬膜下血腫
・脳底部の脳挫傷→冠状断での評価が必要
・骨折→もちろん骨条件で評価する。眼窩底骨折はじめ冠状断像の評価が必須。
・頚椎の骨折・脱臼
この辺りは見落としがちなので注意して見る必要がありますね。
あとは、左右対称だから大丈夫だろうとして、広範なくも膜下出血を見落としたという同期もいました。
横断像12-14スライスの両側に、わずかに硬膜下血腫があるように見えてしまったのですが、これは骨のアーチファクトでしたね。難しいです。
アウトプットありがとうございます。
>横断像12-14スライスの両側に、わずかに硬膜下血腫があるように見えてしまったのですが、これは骨のアーチファクトでしたね。難しいです。
そうですね。今回はアーチファクトですね。
ちょっとウインドウ幅を調整できないので申し訳ないのですが、実際の現場ではウインドウ幅を広げることで骨と血腫のコントラストを分離させてより明瞭に鑑別することができますので覚えておいてください。