【顔面】症例8

【症例】30歳代 男性
【主訴】顔面打撲
【現病歴】2週間前に店で飲酒後、階段から転倒して左顔面を打撲。近医搬送され、左眉外側部を縫合された。抜糸に別のクリニック受診したところ当院紹介となる。
【身体所見】眼球運動障害なし、開口制限あり(1.5横指可)、開口時痛あり、左顔面、歯茎に感覚低下あり。左眉下部に挫創あり、抜糸後。

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左上顎洞前壁(および三叉神経の第2枝である眼窩下神経が走行する眼窩下管)、外側壁に骨折線を認めています。

今回、左顔面、歯茎に感覚低下があり、眼窩下神経が骨片により圧排されている可能性が示唆されます。

また頬骨弓に骨折があり骨の内側への転位を認めています。

今回、開口制限があり、内側にある咬筋を圧迫している可能性が示唆されます。

眼窩下神経の走行路をよく見てみると、篩骨洞外側壁の骨折により、左の眼窩下神経の走行路である下眼窩裂が狭小化していることがわかります。

骨折線は左眼窩外側壁にも認めており、眼窩尖部にも及んでいますが、左上眼窩裂を圧迫するような所見は認めていません。

冠状断像においても、左眼窩外側壁、左眼窩下管を含む眼窩下面〜上顎洞前壁、上顎洞の外側壁に骨折線があることがわかります。

3D再構成を見てみましょう。

 

頬骨と周囲の骨の縫合線を中心に骨折を認めており、頬骨上顎複合骨折(ZMC骨折)の状態です。

 

診断:左頬骨上顎複合骨折(ZMC骨折)(左頬骨弓の骨折による開口障害、骨折による左眼窩下神経圧排の疑い)

 

※開口障害や左顔面の感覚低下の症状があり、手術が施行されました。

 

手術記録より抜粋

左下眼瞼縁と左眉外側下部の受傷部scarより皮膚切開。
骨膜まで剥離し骨折部を同定した。
骨折部周囲の骨膜を十分剥離し、眼窩下神経孔を確認。神経を圧迫した骨片を除去した。
エレバトリウムとU字鉤で骨折部を整復し、眼窩下縁を6穴曲のチタンプレート+スクリュー4本ん、眼窩外側縁を4穴直のチタンプレート+スクリュー4本で固定した。
骨膜を4-0モノスティンガー、皮膚を7-0ナイロンで縫合した。

 

術後のCTでは、眼窩下縁、眼窩外側縁がチタンプレート+スクリューで固定されていることがわかります。

また開口障害を来していた頬骨弓の骨折及び内側への陥凹ですが、経時的に軽減したようで同部には手術は施行されていません。

 

関連:

その他所見:

  • 鼻骨骨折疑い。(コメント欄をご覧ください。kenkenさんありがとうございます。)
【顔面】症例8の動画解説

上眼窩裂、下眼窩裂と言う解剖が出てきましたので、この症例で、以下の解剖を同定してみてください。

横断像

  • 視神経管
  • 上眼窩裂
  • 下眼窩裂
  • 翼口蓋窩
  • 正円孔
  • 卵円孔
  • 棘孔
  • 視神経管

確認してみた方はこちら

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お疲れ様でした。

今日は以上です。

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