
【症例】30歳代 男性
【主訴】顔面打撲
【現病歴】2週間前に店で飲酒後、階段から転倒して左顔面を打撲。近医搬送され、左眉外側部を縫合された。抜糸に別のクリニック受診したところ当院紹介となる。
【身体所見】眼球運動障害なし、開口制限あり(1.5横指可)、開口時痛あり、左顔面、歯茎に感覚低下あり。左眉下部に挫創あり、抜糸後。
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左上顎洞前壁(および三叉神経の第2枝である眼窩下神経が走行する眼窩下管)、外側壁に骨折線を認めています。
今回、左顔面、歯茎に感覚低下があり、眼窩下神経が骨片により圧排されている可能性が示唆されます。
また頬骨弓に骨折があり骨の内側への転位を認めています。
今回、開口制限があり、内側にある咬筋を圧迫している可能性が示唆されます。
眼窩下神経の走行路をよく見てみると、篩骨洞外側壁の骨折により、左の眼窩下神経の走行路である下眼窩裂が狭小化していることがわかります。
骨折線は左眼窩外側壁にも認めており、眼窩尖部にも及んでいますが、左上眼窩裂を圧迫するような所見は認めていません。
冠状断像においても、左眼窩外側壁、左眼窩下管を含む眼窩下面〜上顎洞前壁、上顎洞の外側壁に骨折線があることがわかります。
3D再構成を見てみましょう。
頬骨と周囲の骨の縫合線を中心に骨折を認めており、頬骨上顎複合骨折(ZMC骨折)の状態です。
診断:左頬骨上顎複合骨折(ZMC骨折)(左頬骨弓の骨折による開口障害、骨折による左眼窩下神経圧排の疑い)
※開口障害や左顔面の感覚低下の症状があり、手術が施行されました。
手術記録より抜粋
左下眼瞼縁と左眉外側下部の受傷部scarより皮膚切開。
骨膜まで剥離し骨折部を同定した。
骨折部周囲の骨膜を十分剥離し、眼窩下神経孔を確認。神経を圧迫した骨片を除去した。
エレバトリウムとU字鉤で骨折部を整復し、眼窩下縁を6穴曲のチタンプレート+スクリュー4本ん、眼窩外側縁を4穴直のチタンプレート+スクリュー4本で固定した。
骨膜を4-0モノスティンガー、皮膚を7-0ナイロンで縫合した。
術後のCTでは、眼窩下縁、眼窩外側縁がチタンプレート+スクリューで固定されていることがわかります。
また開口障害を来していた頬骨弓の骨折及び内側への陥凹ですが、経時的に軽減したようで同部には手術は施行されていません。
関連:
その他所見:
- 鼻骨骨折疑い。(コメント欄をご覧ください。kenkenさんありがとうございます。)
【顔面】症例8の動画解説
確認してみた方はこちら
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お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
頭蓋底の孔は重要と認識していますが、つい確認がおろそかになってしまいます。気をつけて確認していきたいと思います。
アウトプットありがとうございます。
せっかくですので、是非この機会に確認してみてください。
頭蓋底の孔の解説ありがとうございました。
すいません、もう一点、3D画像で見ると、鼻骨が右に偏位して、対側にくらべて左鼻骨上顎縫合が開大しているように見えますが、鼻骨骨折(斜鼻型)と判断できるのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>鼻骨が右に偏位して、対側にくらべて左鼻骨上顎縫合が開大しているように見えますが、鼻骨骨折(斜鼻型)と判断できるのでしょうか?
確かに横断像でも少し偏位がありますね。
手術適応にはならないのでしょうけど、鼻骨骨折もありそうですね。
ただ、鞍鼻型なのか斜鼻型なのか微妙ですね。左鼻骨上顎縫合は確かに開大しているように見えますが形状だけ見ると鞍鼻型でもよさそうですね。
頬骨や下顎骨の骨折により、咀嚼などの機能にも影響が出ますよね。当然のことですが意識して見てなかったです。
アウトプットありがとうございます。
そうですね、特に下顎骨骨折は咀嚼や開口障害を来たしますね。
頬骨も頬骨弓が骨折して内側に陥没して咬筋を圧迫すると開口障害を来します。
頭蓋底の孔は本来かなり重要な解剖構造ですが、あまりその走行などを解説してるのは見たことない気がします。勉強になります。
解説動画はループしてませんか?
アウトプットありがとうございます。
>頭蓋底の孔は本来かなり重要な解剖構造ですが、あまりその走行などを解説してるのは見たことない気がします。勉強になります。
ありがとうございます!
>解説動画はループしてませんか?
ループしてますね・・・。
ループというか一発撮りということはほとんどなく、何度も同じ説明をして納得したものを採用するのですが、この前に録画したものも入っていたようです。修正します。この手の指摘も大変助かります。ありがとうございます。
いつもありがとうございます。
解剖整理の動画がすごく勉強になりました。顔面外傷の画像問題が卒業試験で出題されますが、正直全然わからず、過◯問ゲーなので、これで少しは分かりそうです笑
ZMC骨折の症例が続いていますが、顔面骨の骨折は注意深く見ていかないと見つけるのが難しいと実感しています。毎回のCTでルーチンとして見ていくのは結構気力が要りそうですね。。
アウトプットありがとうございます。
>解剖整理の動画がすごく勉強になりました。
良かったです!
>顔面外傷の画像問題が卒業試験で出題されますが、正直全然わからず、過◯問ゲーなので、これで少しは分かりそうです笑
卒業試験は確かに理屈や重要性もわからないまま過去問を覚えたらクリアできる傾向になりますね(^_^;)
まあ、これは卒業試験にかかわらず、専門医試験などでもそうかもしれませんが。
>顔面骨の骨折は注意深く見ていかないと見つけるのが難しいと実感しています。毎回のCTでルーチンとして見ていくのは結構気力が要りそうですね。。
そうですね。
顔面外傷・頭部外傷でCTが撮影されるほとんどの症例で何もないので、つい、「はいはい、何もないのでしょ」的に処理してしまいがちですが、ちょっとした出血や粘膜肥厚、皮下の脂肪織濃度上昇などを伴い骨折が存在することがあるので注意が必要です。
頭部CTは通常、他の部位に比べて短い時間で読影することができますが、顔面骨に複数骨折がある場合はかなり読影に時間がかかりますね。