
【症例】30歳代 男性
【主訴】転倒
【現病歴】出張中。会席で飲酒後、転倒。顎と後頭部を受傷したため救急要請。
【身体所見】意識清明、Vitalに異常なし、右下顎に5cmの挫滅創、後頭部に2cm大のV字挫滅創
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今回は頭部CTのみ撮影されています。
頭蓋内出血や脳挫傷などを疑う所見は認めていません。
横断像の骨条件を見てみましょう。
上顎洞の前壁および外側壁に骨折線を認めています。
また右の上顎洞には液貯留を認めています。
また右頬骨弓に骨折線を認めています。
骨の転位は軽度でその内側にある咬筋の圧迫所見は認めていません。
右の眼窩外側壁の骨折線は前回の症例ほどはっきりしません。
ただし、左右を見比べると右の頬骨前頭縫合に離開があると推測されます。
3D再構成を見てみましょう。
頬骨と周囲の骨の縫合線を中心に骨折を認めており、頬骨上顎複合骨折(ZMC骨折)の状態です。
診断:右頬骨上顎複合骨折(ZMC骨折)
※実はこの方骨折に気づかれずに、骨折なしで帰宅されていました。骨条件を注意深く見ないと見落としてしまいますので、注意しましょう。保存的に加療されました。
関連:
その他所見:
- 左下顎骨関節突起に骨折線あり。
kenkenさんありがとうございます。
【顔面】症例7の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
左下顎枝の線状影(冠状断92/124、矢状断43/50)は骨折なのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
ありますね・・・・(^_^;)
冠状断像は94/124あたりですね。追記します。
鼻中隔が大きく変異していますが、今回の受傷による骨折ではないと考えました。なかなか大きく変異しているものですね。過去に骨折したことあるのですかね?全く正常ですか?
アウトプットありがとうございます。
>鼻中隔が大きく変異していますが、今回の受傷による骨折ではないと考えました。なかなか大きく変異しているものですね。
結構偏位しているように見えますが、これも正常範囲ですね。これくらいはよくあります。
今回の受傷とは関係ないと思いながらも鼻中隔の偏位が気になりました。これくらいはよくあるというのも、日頃から意識して観察しておかないと分かりませんね。
アウトプットありがとうございます。
ジジさんも鼻中隔気になりましたか・・・(^_^;)
もっと偏位の強い人もいますのでこの程度は正常範囲と覚えておきましょう。
顔面領域の症例経験は少なく、毎度とても新鮮な気持ちで取り組んでいます。
右翼状突起に骨折線があるように見えます。
これは骨折ととってもいいでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>顔面領域の症例経験は少なく、毎度とても新鮮な気持ちで取り組んでいます。
ありがとうございます。うちでもそれほど頻度は多くないので少ない中からの厳選症例となります。
>右翼状突起に骨折線があるように見えます。これは骨折ととってもいいでしょうか?
確かに離れてみえるところがありますが、境界がシャープでなく、冠状断像(91 / 124)においても同様です。
凹みが骨にあるようですが、骨折ではないと考えます。
ZMC骨折、注意してみるようにします。
頭頂部の骨透亮像(水平断130枚目)は血管でしょうか。やや大きめに見えてしまって。
アウトプットありがとうございます。
>頭頂部の骨透亮像(水平断130枚目)は血管でしょうか。やや大きめに見えてしまって。
くも膜顆粒ですね。
関連:
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/8133
3D画像の元画像がもしかして骨条件ではないのでは?と思いました。腹部条件で作ると細い骨折線は潰れてしまいます。作り側として気になりました。
アウトプットありがとうございます。
貴重な印象ありがとうございます。どちらから作っているという発想はありませんでした。
技師さんに聞いてみます。
すぐ返信来ました。
「軟部条件で作ってますねー!
滑らかで見易いし、作成しやすいです
骨条件はノイズが結構あって、VRにすると汚くなるんです。。。
でも、小さい骨折は骨条件で作ったほうが見やすいので、骨でVR作って、ちょっとフィルター処理して出すときもありますけど
技師としては、VRはあくまでも患者説明用画像と認識しています(/。\)」
とのことです。施設にもよるのかもしれません。
確かにVRはあくまで参考画像であり、元画像(特にthin slice)で確認が必須ですね。
さらに別の技師さんからです。
「骨のVR ではルーチンは軟部ですが、現状は全国的にも変わりつつあるというか、はっきりしないかんじです
骨のVRは若い人は骨関数で作成した方がパリッとしますが、年寄りは骨関数で作るとボロボロなので軟部で作成しています
ゴールデンスタンダードは?
と言われると現在でも軟部関数の気がします
血管系などは骨関数ではなく、軟部関数や軟部関数よりで作成しています!」
いろんな事情がありそうですね(^_^;)
当院では頭蓋骨や手指骨などは骨関数を使っています。案外ノイズ出ませんよ(^o^) そのままMIP処理すると、VRで潰れてしまった骨折線がしっかり見えたりします。お試しください。
>当院では頭蓋骨や手指骨などは骨関数を使っています。案外ノイズ出ませんよ(^o^)
そうなんですね。骨関数などは知らなかったので勉強になります。ありがとうございます。
眼窩下壁には骨折線が及んでいない、という理解で大丈夫ですか?
頬骨上顎縫合あたりが折れていれば、
それが骨折線が眼窩下縁でも上顎洞前壁でも、
残り3箇所折れていれば、ZMC骨折と呼ぶということを、理解しました。
アウトプットありがとうございます。
>眼窩下壁には骨折線が及んでいない、という理解で大丈夫ですか?
これについては微妙なところですが、上顎洞前壁と眼窩下壁は連続していますので、「あり」と取って良いと思います。
>残り3箇所折れていれば、ZMC骨折と呼ぶということを、理解しました。
そうですね。よくある組み合わせの骨折でこのように呼ばれますが、不完全型のものもありますね。
厳密には4カ所の縫合が離開しているものですが、3カ所での骨折で三脚骨折として記載のある教科書もあります。