
【症例】20歳代 男性
【主訴】頭部、顔面打撲
【現病歴】昨晩午前3時くらいまで友人らと飲酒していた。5時頃に5人組と揉め事があり、顔面を中心に殴打された。その後、意識はあり帰宅したが、帰宅後に気分不良を生じたため来院。
【既往歴】なし
【身体所見】vitalに異常なし。E4V5M6、脳神経:EOM 左眼窩腫脹強く評価困難、脳神経V~Ⅻで病的所見なし。MMT full、sensory:n.p.
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頭部単純CTが撮影されています。
左の上顎洞にニボー像を認めており、液貯留が疑われます。
ただし、横断像では骨折線ははっきりしません。
次に冠状断像を見てみましょう。
一見見落としがちかもしれませんが、左眼窩下壁に骨折線を認めています。
眼窩吹き抜け骨折(眼窩底骨折)を疑う所見です。
周囲の上顎洞には粘液の付着を疑う所見を認めていますが、明らかな眼窩内容物の上顎洞への逸脱は認めていません。
またこの条件ではちょっと見えにくいですが、外眼筋(特に下直筋)にも異常所見を認めていません。
冠状断像で鼻中隔が軽度左側に弯曲しています。
診断:左眼窩吹き抜け骨折(眼窩底骨折)
※眼窩吹き抜け骨折の手術適応は、
- 外眼筋の逸脱/絞扼による複視があるとき
- 2mm以上の眼球陥凹があるとき
とされますが、今回このような所見は認めておらず、保存的に加療されました。
※なお、今回頭部CTのみ撮影されており、眼窩・顔面領域を中心とした撮影や再構成、thin sliceがありませんが、頭部CTのみでは、眼窩底骨折は見落とされることがあります。顔面の打撲の場合は、これらも必要だと言うことを覚えておきましょう。
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【顔面】症例4の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
吹き抜け骨折の有無までは確認していましたが、その次に内容物の逸脱・偏位に着目していませんでした。対応も変わるとのことで、ここまで確認が必要ですね。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。
必ず冠状断像で吹き抜け骨折の有無を確認することに加えて、もしある場合は眼窩内容物が偏位していないかや逸脱していないかをチェックしましょう。
実際、横断像のみでは診断が困難なことがあり、冠状断の再構成は大切だと感じます。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。かなり逸脱している場合でも横断像ではその様子がよくわからないことがあります。
冠状断像で見れば一目瞭然です。
鼻中隔の弯曲は異常所見になるのでしょうか?
そうですね。有意ととって良いと考えます。
いつもわかりやすい解説をありがとうございます。吹き抜け骨折は指摘することができました。
左小脳~大脳鎌にかけて外傷性クモ膜下出血があると思ってしまいましたが(特に26/92のページで左小脳側に左右差があったので)、病歴からしてこれもあるかも!と思ってみすぎないように気をつけたいです。
アウトプットありがとうございます。
>吹き抜け骨折は指摘することができました。
よかったです!
>左小脳~大脳鎌にかけて外傷性クモ膜下出血があると思ってしまいましたが(特に26/92のページで左小脳側に左右差があったので)
静脈洞が少し高吸収に見えていますね。
それに加えて21/92あたりでは骨のアーチファクトがあり評価が少し難しいかもしれませんね。