【顔面】症例10

【症例】40歳代 男性
【主訴】顔面打撲
【現病歴】昨日飲酒後に転倒し顔面を打撲した。本日他院受診、当院転送となる。

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まず頭部CTから見ていきましょう。

両側上顎洞・蝶形骨洞に一部高吸収なニボー像があり、血腫が疑われます。

また、篩骨洞にも高吸収軟部影があり、こちらも血腫が疑われます。

またこの条件で見てみても、両側の上顎洞や鼻骨に骨折がありそうです。

頭蓋内には出血や占拠性病変は認めませんが、前頭部に頭蓋内にairがあることがわかり、気脳症の状態です。

骨折によりairが入り込んだことが考えられます。

次に、骨条件(thin slice)を見てみましょう。

色々所見があるので一つ一ついきましょう。

両側上顎洞の前壁及び後外側壁に骨折線があることがわかります。

また頭部CTで見たように両側上顎洞に液貯留を認めています。こちらは血腫を疑う所見でした。

篩骨洞の左外側壁に骨折線を複数認めています。

また左眼窩外側壁にも骨折線を認めています。

鼻骨には多数の骨折および骨片を認めています。

左鼻涙管にも骨折線が及んでいて骨の転位があることがわかります。

上の方を見てみますと、前頭洞後壁に骨折を認めています。恐らくここの骨折により気脳症を認めていることが推測されます。

また右眼窩上壁(頭蓋底)に骨折及び骨片を認めています。

また下の方を見てみますと、硬口蓋に骨折線が及んでいることがわかります。

次に冠状断像を見てみましょう。

横断像でははっきりしませんでしたが、左眼窩底骨折を認めており、眼窩内容物が下方の上顎洞に逸脱している様子が分かります。

また下直筋は少し偏位しており逸脱傾向であることがわかります。

これまで見てきた骨折と異なり、両側上顎洞に水平骨折を認めているのが今回の特徴といえます。

これを3D再構成で見てみましょう。

すると、上顎骨を横断する左右の骨折線が目立ちます。これをLe Fort骨折(ル・フォー骨折)といいます。

右はLe Fort骨折Ⅰ型とⅡ型の間くらいに存在し、左側はLe Fort骨折Ⅱ型相当と考えられます。

今回の起こっている骨折は以下のようになります。

つまり眼窩中央部の中心部を中心に、外側にも骨折線を広範に認めているということです。

両側の頬骨弓には骨折線は認めておらずいわゆるこれまで見てきたZMC骨折には該当しませんが、それ以外の骨折は認めておりこれらに加えて、

  • 前頭洞後壁骨折(前頭骨骨折)
  • 眼窩上壁骨折(頭蓋底骨折)
  • 硬口蓋骨折

も伴っていることが分かります。

 

診断:多発顔面骨骨折(その詳細は上記の通りです(^_^;))

 

※左右の上顎骨骨折、左眼窩底骨折は手術適応、鼻骨骨折・前頭洞骨折は保存的加療となりました。観血的整復固定術(ORIF:open reduction and internal fixation)が施行され、その後感染などの問題なく退院となりました。

術後のCTです。

両側顔面骨が複数のプレートで固定されていることがわかります。

関連:顔面骨折とは?症状やCT画像診断、治療法を徹底まとめ!

その他所見:左翼状突起に骨折線あり。

 

【顔面】症例10の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

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