
【症例】20歳代 男性
【主訴】顔面打撲、複視
【現病歴】4日前の格闘技の試合で左眼を殴られ、腫脹と複視あり。近医受診し、当院紹介受診となる。
【身体所見】眼球運動障害なし、左方視で複視あり。
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左眼窩内側壁に骨折線を認めており、篩骨洞に軟部影を認めています。
また一部、眼窩内気腫を疑う所見があります。
眼窩底骨折の有無については、横断像では少しわかりにくいので冠状断像で見てみましょう。
すると、左眼窩内側壁だけでなく、下壁に骨折線を認めており、眼窩内容物は下方に逸脱していることがわかります。
また骨折線は眼窩下管にも及んでいます。
骨条件だと少しわかりにくいので、筋肉とのコントラストがつきやすい条件に変えて見てみましょう。
すると、逸脱した眼窩内容物は脂肪のみでなく、腫大した左下直筋も含まれていることがわかります。
また左内側直筋も右と比べるとやや腫大を認めています。
診断:左眼窩底+内側壁骨折(下直筋の逸脱あり手術適応)
※眼窩吹き抜け骨折の手術適応は、
- 外眼筋の逸脱/絞扼による複視があるとき
- 2mm以上の眼球陥凹があるとき
とされます。
今回は、下直筋の逸脱を認めており、複視の症状がありますので、手術適応となります。
実際手術が施行されました。
なお3Dの再構成を作っていただけたので見てみましょう。
3D再構成画像では、下壁・内側壁が欠損しており、骨折した骨片が転位している様子がよく分かりますね。
※ちなみに、症例1−3の鼻骨骨折では3D再構成画像が作られていませんでしたが、鼻骨骨折なども再構成画像があるとわかりやすいですね。
関連:
【顔面】症例5の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
吹き抜け骨折の際、眼窩内容物の逸脱の確認は大切なので、忘れないように行いたいと思います。
アウトプットありがとうございます。
この症例を見れば、冠状断像の作成及びその読影が如何に重要かがわかりますね。
治療方針にも関わりますね。
前回の症例で習った眼窩内容物の偏位について言及することが出来ました。Corで分かりやすかったです。
アウトプットありがとうございます。
>前回の症例で習った眼窩内容物の偏位について言及することが出来ました。
良かったです。撮像部位は異なりますが、虫垂の同定と同様に、冠状断の重要性を感じる疾患と言えますね。
VRでは思っていたのとは異なる骨折がありました。反省です。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
顔面骨折はVRで非常にわかりやすくなるということが、今後の症例でも体験できます。
骨折の変化は細かいから、どこをどんなかんじで負傷したかの情報が無いと見落としそうですね。顔面編になって、いつも以上に画像を細かく眺める習慣がついてきました。
上顎洞への歯根尖突出は、書いておいた方がいい所見でしょうか。正常変異の範疇なのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>骨折の変化は細かいから、どこをどんなかんじで負傷したかの情報が無いと見落としそうですね。
そうですね。thin sliceがなければ見落とす骨折もたくさんありそうですね。
>上顎洞への歯根尖突出は、書いておいた方がいい所見でしょうか。正常変異の範疇なのでしょうか。
記載しておいてもよいですが必須というわけではありません。
ただし、上顎洞炎がある場合は歯性副鼻腔炎の原因となることがあるので、上顎洞炎がある際には記載しておいた方がよいですね。