
【症例】10歳代 男性
【主訴】硬球が鼻に当たった
【現病歴】2日前野球の合宿で遠征中に硬球が鼻に当たった。近医受診後、当院紹介受診となる。
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鼻骨に内側への陥没があります。
鼻骨には複数の骨折線を認めています。ただし一部鼻骨上顎縫合を見ており、縫合線で骨折していることが推測されます。
鼻骨骨折(鞍鼻型)が疑われます。
さらにこの症例では、鼻中隔にも骨折線を認めており、転位して鼻中隔が重なっている様子を観察できます。
それだけ鼻骨が陥没しているということですね。
鼻中隔は正常でも弯曲していることがあるので安易に骨折としないように注意しなければならないのですが、冠状断像においても鼻中隔のズレを認めており骨折がやはり疑われます。
また鼻腔や右の上顎洞には粘膜肥厚もしくは液貯留を認めており、血腫を伴っている可能性があります。
前回までの解説でも見たように、鼻中隔血腫は、放置しておくと鼻中隔に穴が開いたり(鼻中隔穿孔)、壊死を起こすことがあるので注意が必要で、早期に血腫を取り除く処置が必要とされます。
この症例の場合は2日前に受傷しており、他院受診しておりますので、受傷直後の状態ではありませんが、血腫だと判断されると取り除く必要があるということになります。
診断:鼻骨骨折(鞍鼻型)+鼻中隔骨折+鼻中隔周囲や右上顎洞に血腫を伴っている可能性あり
※形成外科にて整復術施行されました。メロウセルにて内固定後、断層撮影施行し、整復位であることを確認し、nasal splint固定して帰宅となっています。
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【顔面】症例3の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
鼻中隔は、横断像では偏位に見えましたが、冠状断で骨折線が確認できました。鼻に詰め物をしているので、上顎洞や鼻腔の軟部影は血腫かなと思いました。
アウトプットありがとうございます。
>鼻中隔は、横断像では偏位に見えましたが、冠状断で骨折線が確認できました。
正常でも一見骨折様に見えることがあるのが鼻中隔なので、複数の断面で確認したいですね。
>鼻に詰め物をしているので、上顎洞や鼻腔の軟部影は血腫かなと思いました。
今回骨条件しかないですが、頭部の条件で高吸収であることも確認したいですね。
血腫を疑ったらCT値ですね!
そうですね。
骨条件しかなくてもCT値を測定することで血腫を疑うことができますね。
鼻中隔の骨折は難しいですが、もう少し背側のものを鼻中隔骨折というと思ってました。確かに鼻中隔ですね。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
鼻中隔骨折の取り過ぎは注意が必要ですね。単に弯曲してるだけのことも結構あるので、冠状断像と合わせて判断しましょう。
血腫を除去しないと壊死に繋がるというのは顔面ESPRESSOに参加するまで知りませんでした。
血液成分による骨へのダメージや圧迫により、薄い副鼻腔骨の穿孔や壊死が起こるのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>血液成分による骨へのダメージや圧迫により、薄い副鼻腔骨の穿孔や壊死が起こるのでしょうか?
鼻中隔の軟骨を覆う膜の下に血液がたまると(鼻中隔血腫)、鼻中隔の軟骨が壊死することがあります。壊死した軟骨は次第に崩れ、鼻梁の中央がへこんだ鞍鼻(あんび)変形が起こります。
と記載がありました。
私も勉強になりました(^^)
参考
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/25-%E5%A4%96%E5%82%B7%E3%81%A8%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E9%A1%94%E9%9D%A2%E5%A4%96%E5%82%B7/%E9%BC%BB%E3%81%AE%E9%AA%A8%E6%8A%98
血腫と粘膜肥厚は画像で区別は出来ないのでしょうか。ct値は両者同じくらいですか?
アウトプットありがとうございます。
血腫でも新しいものであればCT値が高く区別はできますね。特にニボー像を認めていればわかりやすいですね。
ただし、時間が経過した場合は通常はCT値だけ粘膜肥厚との鑑別は難しいと思います。