
【症例】70歳代 男性
【主訴】頭部打撲後の気分不良
【現病歴】昨日22時頃、飲酒後自己転倒あり。帰宅後、頭部の創部から出血を認めたため当院に救急搬送となる。
【身体所見】意識清明、脳神経に明らかな異常所見を認めず。
錐体骨の長軸に沿う方向に骨折線あり、側頭骨の縦骨折を疑う所見です。
鼓室内に含気不良を認めており、液貯留が疑われますが、耳小骨離断は認めません。
乳突蜂巣を横切るように錐体骨の長軸に沿う方向に骨折線を認めています。
乳突蜂巣は含気不良で液貯留が疑われます。
側頭骨骨折
側頭骨骨折には上のように錐体骨の長軸に沿う方向の縦骨折と直交する横骨折があり、
- 縦骨折:中耳を横切り耳小骨離断
- 横骨折:骨迷路を横切り骨迷路損傷
を来すことがありますのでこれらの解剖に異常を認めていないか観察することが重要となります。
今回は縦骨折ですが、耳小骨離断や外耳道損傷を疑う所見は認めていませんでした。
診断:右側頭骨骨折(縦骨折)
追記:骨折に加えて気脳症を認めています。気脳症の有無にかかわらずですが、頭蓋底骨折による髄液漏の有無の確認が臨床的に重要となります。コメント欄の動画で解説しています。
※保存的に加療されました。
【顔面】症例12の動画解説
【補足動画】顔面神経走行を追って損傷がないことを確認する
動画内で出てくる正常例の画像はこちら。
是非ご自身でも顔面神経の走行路を追ってみてください。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
耳下腺がんなどでACC(腺様嚢胞がん)のときに茎乳突孔と同定しないといけないときがあり、これまでも画像診断カフェに助けていただいていました。本来?今回の様な見方をするのが診断で使われるパターンなんですね。勉強になりました。ありがとうございます。
アウトプットありがとうございます。
>耳下腺がんなどでACC(腺様嚢胞がん)のときに茎乳突孔と同定しないといけないときがあり、これまでも画像診断カフェに助けていただいていました。
画像診断cafeにも顔面神経の解剖は今回紹介したものを掲載していますね。
>今回の様な見方をするのが診断で使われるパターンなんですね。勉強になりました。ありがとうございます。
今回のように顔面神経(の一部ですが)を追うことができますので、是非普段から追ってみてください。
錐体骨を基準に考えなければいけないのですが、側頭骨の縦骨折と横骨折はどちらだったかよく迷います…。「見たままだと、左右の骨折線は横ですから」
アウトプットありがとうございます。
まさに私もそうです(^_^;)
縦横逆でも良いのではないかと思ってしまいますね・・・
パッと見ると見落としてしまいそうですが、乳突蜂巣の含気をチェックしていれば気づけそうですね
いつもチェックするようにしていますが、あらためて重要性に気づかされました。
アウトプットありがとうございます。
>乳突蜂巣の含気をチェックしていれば気づけそうですね
そうですね。乳突蜂巣の含気に着目する点も重要です。
乳突蜂巣はスルーされがちかもしれませんがここも必ず頭部CTではチェックしましょう。
含気を確認すると分かりやすいのですね。
個人的に見たこと無い骨折でしたので大変参考になりました。
アウトプットありがとうございます。
それほど頻度が多い骨折ではありませんが、側頭骨骨折では縦骨折の頻度が高いのでこの機会に覚えておきましょう。
いつも勉強させていただいています。
AxialのThinスライスで81/273あたりに右眼窩外側壁に骨折があるように思うのですがいかがですか?
左にも認めるのですが、右のほうが離開している感じがします。
アウトプットありがとうございます。
>AxialのThinスライスで81/273あたりに右眼窩外側壁に骨折があるように思うのですがいかがですか?左にも認めるのですが、右のほうが離開している感じがします。
これは骨折ではなく、蝶形骨と頬骨の縫合線ですね。(蝶頬骨縫合、蝶形頬骨縫合)
こちらがわかりやすいです。
https://www.weblio.jp/content/Orbit
眼窩の後壁の上から下に内側に向って走行しています。
確かに今回この縫合が右で離開しているので外傷により離開している可能性はありますね。
ここの部分を前頭骨頬骨縫合としていたので、こちらの記事を先ほど修正しました。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/12770
いつも分かりやすい解説ありがとうございます。
横断像の11/113、冠状断像の36/119で右側頭部の頭蓋内にairを認めており、気脳症があると思ったのですが、いかがでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるとおりです・・・。
明日補足動画を配信するようにします。
よろしくお願いします。
ちなみに気脳症があるということはどういったことを考えなければならないですか?(^^)
補足動画ありがとうございます!
気脳症がある、外との交通がある。で思考を止めてしまい、髄液漏まで考えていませんでした、、、勉強になりました。
ちょうど昨日受けた模試で側頭部の外傷で髄液漏を疑う時はダブルリングサインを確認するという問題が出ていました笑
アウトプットありがとうございます。
>髄液漏を疑う時はダブルリングサインを確認するという問題が出ていました
血液と髄液が混じっているから2重に見えるサインですね。
補足ありがとうございます。
補足動画です。
非常に重要な所見です。ご指摘いただきありがとうございます。
いつもありがとうございます。
“縦骨折は、外耳道~鼓膜が損傷し伝音難聴を呈する。一方で、横骨折は内耳道が損傷し、7,8脳神経が障害され、感音難聴を呈する。”とmedu4でも解説があったのですが、逆じゃないの??と思っていました。(縦骨折のほうが錐体骨尖部まで骨折が及びそうなので、内耳もやられそうなイメージが有りました。)
解説動画を見て、外耳道〜鼓室と内耳道が一直線上に並んでいないためにそうならないのか!と理解です。
顔面神経の走行を実際に画像で追うのも初めてだったので、とても勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
>逆じゃないの??と思っていました。
みなさんそう思いますよね。私も最初逆じゃないのかと思っていました(^_^;)
>顔面神経の走行を実際に画像で追うのも初めてだったので、とても勉強になりました。
よかったです。国家試験的には役には立たないかもしれませんが、一歩進んだ深い理解ができますね。
いつもありがとうございます.とても勉強になっています.頭頂部にも気脳症に見える所がありますが,これは気脳症で良いのでしょうか.
アウトプットありがとうございます。
確認しましたが、頭頂部にはなさそうです。