
症例77
【症例】40歳代 女性
【主訴】むかつき、右季肋部痛
【現病歴】2年前から右季肋部痛がたまに出現していた。1年前にむかつきがあり、ファモチジン内服にて症状軽快していたが、7ヶ月前より症状再燃してきた。近医受診にて、AST、ALTの軽度上昇があり、当院紹介受診となる。
【既往歴】なし。
【生活歴】飲酒・喫煙なし、内服・サプリメントなし。
【身体所見】特記すべき異常なし。
【データ】AST/ALT=34/49、ALP 502、γ-GTP 221、T-Bil 0.71、WBC 4000、CRP 0.13
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画像所見から、どのような疾患を鑑別に挙げる必要がありますか?
肝内には境界不明瞭な低吸収を多数認めています。
よく見ると肝臓だけでなく、脾臓にも境界不明瞭な淡い低吸収域を認めています。
また横断像ではそれほど腫大していないように見えますが、冠状断像においては肝臓の上下径=17cm>15cmと腫大を認めており、肝腫大の基準を満たします。
このような肝にびまん性の多発する低吸収域を認めた場合、考えるべきは、
- サルコイドーシス
- 結核
- リンパ増殖性疾患
などです。
生検が施行され、最終的にサルコイドーシスと診断されました。
最終診断:肝(&脾)サルコイドーシス
※サルコイドーシスの場合、全身性疾患であるため、肺や心臓、神経、眼のサルコイドーシスを除外する必要がありますが、精査の結果、他部位には認めませんでした。
その後、画像でフォローされていましたが、3ヶ月後の採血で肝酵素の上昇を認めた為、ウルソが開始されました。
10カ月後のフォローのCTです。
肝臓および脾臓に認めた淡い低吸収結節はいずれも消失しています。
※2018年のサルコイドーシス診断基準では、臨床症状、特徴的検査所見、臓器病変を強く示唆する臨床所見のいずれか1項目以上を満たし、鑑別すべき疾患を除外し、病理学的所見が得られている場合、組織診断群としてサルコイドーシスを診断できる。本症では、肝サルコイドーシスの組織診断群としての診断基準を満たしたが、他の臓器病変は明らかではなかった。肝サルコイドーシスは慢性経過で肝硬変に進展するリスクが10%程度あるので、慎重にフォローしていく必要がある。
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その他所見:少量腹水あり。
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
子宮頸部あたりが少し低吸収に見える気がしたのですが、特に病的意義のない所見ですか?
アウトプットありがとうございます。
そうですね。これだけでは有意とはいえないですね。
肝サルコイドーシス初めて見ました。まだらな感じが、したので急性肝炎を疑いました。
副所見で質問なのですが、
子宮体部の右側に円形状の低吸収域を認めています。
右卵巣嚢胞を疑いましたが、
冠状断像でみると小腸内に脂肪腫があるようにも見えました。
これは何を疑う画像所見でしょうか?
よろしくお願いします。
アウトプットありがとうございます。
>副所見で質問なのですが、
子宮体部の右側に円形状の低吸収域を認めています。
右卵巣嚢胞を疑いましたが、
冠状断像でみると小腸内に脂肪腫があるようにも見えました。
これは何を疑う画像所見でしょうか?
卵巣嚢腫で良いと思います。冠状断像での脂肪腫を疑う所見というのがわかりません。どのスライスですか?
10ヶ月後のCTで、横断像では低吸収結節がすっかり消失して見えますが、冠状断像ではかなり残っているように見えてしまいます。冠状断像だと、こんなもんでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>冠状断像ではかなり残っているように見えてしまいます。冠状断像だと、こんなもんでしょうか。
そうですね。冠状断像だとこんなもの・・・・・ではないです(^_^;)
加療前のものになっていましたので差し替えました。
ご指摘いただきありがとうございます。
肝臓に多発する結節をみれば、脾臓も確認! 以前、書籍で似たような所見を見たことがありました。今回、記憶の定着ができました。貴重な症例ありがとうございまた。
アウトプットありがとうございます。
>肝臓に多発する結節をみれば、脾臓も確認! 以前、書籍で似たような所見を見たことがありました。
そうなんですね。さすがです。
今回脾臓は少し気づきにくいですね。
サルコイドーシスやリンパ腫のような鑑別に思い至れませんでした。勉強になる症例をありがとうございます。
1点質問なのですが、今回の症例の主訴である「むかつき、右季肋部痛」は本疾患に関連のあるものなのでしょうか?
あまり特異的な主訴ではないように思いました。今回の症例は、採血データ異常と主訴があり、スクリーニングの全身造影CT検査をしたら、主訴と関係のない肝サルコイドーシスが見つかった、というような流れという理解でよろしいでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>あまり特異的な主訴ではないように思いました。
特異的ではないと思いますが、右季肋部痛はサルコイドーシスによる肝被膜への刺激によるものかもしれません。
>今回の症例は、採血データ異常と主訴があり、スクリーニングの全身造影CT検査をしたら、主訴と関係のない肝サルコイドーシスが見つかった、というような流れという理解でよろしいでしょうか
おっしゃるとおりです。
肝臓のまだら模様の鑑別はわかりませんでした。違うと思うけど日本住血吸虫、脂肪肝等々わかりませんでした。脾臓まで確認することを勉強させていただきました。
主訴より、上腸管脈動脈による十二指腸圧迫、また、胃壁の浅い欠損で胃潰瘍を疑いましたがいかがでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>上腸管脈動脈による十二指腸圧迫、また、胃壁の浅い欠損で胃潰瘍を疑いましたがいかがでしょうか。
十二指腸圧迫ならば口側の十二指腸が拡張して欲しいですね。
また胃潰瘍ならば潰瘍を起こしている周囲の胃壁の粘膜下層の肥厚を認めるのが通常です。CTで分かるくらいの潰瘍ならばですが。
なんらかの肝炎とかを考えましたがサルコイドーシスは浮かびませんでした
難しいですね
アウトプットありがとうございます。
今回は少し難しかったかもしれません。
肝にびまん性の多発する低吸収域を認めた場合の鑑別を押さえておいてください。
いつも大変貴重な症例をありがとうございます。
今回は少し難しかったです。
ゆえに
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/14003
を頼りに考えました。
上記からひとつひとつ除外していったところ、まさかのアミロイドーシスしか残りませんでした(笑)
の割に歳若いし…肺はclearだし(胸部がUPされている意図をここで間違え)…血管系問題無し…その他関連所見にも乏しいし……撃沈otz
お時間ある時に、ぜひ上記ページに肝サルコイドーシスを追加してくださると幸いです。
本年もよろしくお願い致します!
アウトプットありがとうございます。
今回はびまん性低吸収というよりは、正常肝を残しつつ、低吸収結節が多発しているという状態ですので、リンク先とは少し異なりますね。
微妙なところですが。
今年もよろしくお願いいたします。