【新腹部救急】症例35
【症例】70歳代 女性
【主訴】左下腹部痛
【現病歴】6日前より左下腹部痛あり。昨日近医受診し、腹部CTが撮影され、左腸腰筋血腫疑いで本日当院紹介受診。
【既往歴】糖尿病
【身体所見】意識清明、BT 37℃
【データ】WBC 10900、CRP 22.04
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単純CT
左下腹部に腫瘤影を認めており、周囲に脂肪織濃度上昇を認めています。
同部が疼痛の原因であることが疑われます。
また前後にスクロールすると子宮と連続性があることがわかります。
ですので、付属器の病変の可能性があります。
腫瘤は左卵巣静脈と連続性を認めており、やはり卵巣や卵管の病変が疑われます。
炎症反応が高値であることから、同部に膿瘍を形成している可能性があります。
次にMRIを見てみましょう。
単純MRI
CTで認めた腫瘤は、CTでははっきりしませんでしたが、T2WIでは淡い高信号であり、液体貯留であることが示唆されます。
またCTでは内部の構造ははっきりしませんでしたが、蛇行した管状の拡張構造であることがわかります。
このような構造を見た際に考えなければならないのが、拡張した卵管です。
卵管に何らかの液体貯留があることが疑われます。
内部はDWIで著明な高信号を示し、ADCの信号低下を示す液貯留であることがわかります。
これらから考えるべきは卵管に膿瘍が貯留している、つまり卵管膿腫です。
診断:左卵管膿腫
※手術は施行されず、抗生剤で保存的に加療し、症状及び炎症反応消失しました。
関連:骨盤内感染症・骨盤内炎症性疾患(PID)の画像診断のポイントは?
その他所見:とくになし。
【新腹部救急】症例35の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
T2横断像では多房性嚢胞病変に見えたのですが…T2矢状断が管腔構造を認識するのに役立ちました。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。横断像よりも矢状断像が管状構造の理解に良いかもしれませんね。
卵巣周囲にCTで脂肪織の混濁が見られたので、膿瘍とか炎症の起きるもので考えないといけないですね。私は婦人科系が自分の中でもさらに苦手でしっかり見れるようにしなければと褌を引き締めます。
アウトプットありがとうございます。
>卵巣周囲にCTで脂肪織の混濁が見られたので、膿瘍とか炎症の起きるもので考えないといけない
そうですね。
単純CTだけですとちょっと難しいかもしれませんが、周囲の脂肪織濃度上昇はやはり異常ですね。
そこに気づいて卵巣に何か起こっているのではないかと推測したいところです。
CTとくに単純CTは、婦人科疾患や泌尿器疾患は弱いところですので、難しいですね。
非特異的な所見もしばしばありますが、前回の症例や今回の症例のようにひっかけられる疾患もあるということを覚えておきましょう。
卵巣静脈との連続性があり、腸腰筋や腸管との連続性は無いことまで確認した挙げ句に婦人科疾患が出てきませんでした。膿瘍も多房性ならこのように見えますよね。信号が混在して見え血腫として矛盾しないと考えてしまいました。
アウトプットありがとうございます。
腸腰筋に引っ張られたかもしれませんね(^_^;)
>膿瘍も多房性ならこのように見えますよね。
そうですね。多房性のこともありますし、今回は卵管ですので基本単房性ですが、卵管の場合は管構造なのであたかも多房性のように見える点に注意ですね。
>信号が混在して見え血腫として矛盾しないと考えてしまいました。
CTでは左下腹部に異常があると言うことが分かればよいのですが、炎症反応が非常に高値であることも考慮したいですね。
やはり婦人科疾患は苦手です.
確かに周囲の炎症から感染は考えなければならなかったと反省しています.
アウトプットありがとうございます。
私も苦手です(^_^;)
>確かに周囲の炎症から感染は考えなければならなかったと反省しています.
炎症反応高値から感染はまず疑いたいですね。
尿管と連続していると思ってしまいました。
アウトプットありがとうございます。
確かに近くを走行していますね。
また子宮と少し離れているので余計そう思ってしまうかもしれませんね(^_^;)