【新腹部救急】症例25

【症例】60歳代女性
【主訴】黄疸
【現病歴】12日前から38℃の発熱と背部痛あり、市販薬を内服していた。5日前から解熱していたがその後も倦怠感が持続していた。今朝、皮膚の黄染に気づき近医受診し、当院に紹介受診となる。
【既往歴】なし
【身体所見】BT 36.7℃、BP 130/64mmHg、HR 51bpm、SpO2 99%(RA)、眼瞼結膜:貧血なし、眼球結膜:黄染あり、腹部:平坦、軟、圧痛なし
【データ】WBC 5100、CRP 1.12、AST/ALT=1397/1916、γGTP 311、T-bil 7.51

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門脈の両側に低吸収域を認めています。これは、肝内胆管が拡張しているのではありません。

肝内胆管の拡張ならば門脈の両側ではなく片側の低吸収域として認め、総肝管や総胆管と連続しているはずです。

これは門脈の両側が浮腫に陥っている状態を示唆し、periportal collarと呼ばれる所見です。

このperiportal collarは

  • 急性肝炎
  • 慢性肝炎・肝硬変
  • うっ血性心不全
  • 原発性硬化性胆管炎
  • 移植後肝
  • 外傷

などで見られることが知られています。

また胆嚢は虚脱していますが、壁肥厚を認めています。

急性胆のう炎で見られる壁肥厚は粘膜が肥厚し、全体的に腫大し、緊満感を認めるのが通常ですが、今回はそうではなさそうです。

肥厚しているのは漿膜下であり、これを胆嚢(漿膜下)浮腫と言います。

この胆嚢漿膜下浮腫は、

  • 急性肝炎
  • 右心不全
  • 低タンパク血症
  • 慢性肝炎・肝硬変

などで見られることが知られています。

今回、肝胆道系酵素が上昇しており、これらの所見と合わせて、急性肝炎と診断されました。

 

診断:急性肝炎・肝障害の疑い

 

実は、この造影CTが撮影された後、胆道癌の可能性を考慮され、2時間後にダイナミックCTが撮影されました。

その早期相に所見があるので見てみましょう。

動脈相で肝は全体的にまだらな造影効果を認めています。

平衡相はほぼ均一に造影されていますので、その差をみれば明らかです。

急性肝炎や胆管炎などでは、このように肝全体もしくは一部が動脈相でまだらに造影されることがあります。

ですので、この所見も急性肝炎を示唆する所見と言えます。

 

※急性肝炎として入院の上、保存的に加療されました。入院時採血で、IgM-HA陽性であり、食事歴の摂取から貝類があり、A型肝炎と診断されました。15日後に退院となっています。

関連:

その他所見:

  • 肝嚢胞あり。
  • 腎嚢胞あり。
  • 少量腹水あり。
【新腹部救急】症例25の動画解説

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