【新腹部救急】症例26
【症例】70歳代男性
【主訴】心窩部痛、嘔吐
【現病歴】前立腺癌にて当院泌尿器科かかりつけ。3日前より心窩部痛あり。先ほど嘔吐あり。
【既往歴】前立腺癌
【身体所見】BP 157/83mmHg、HR 72bpm、SpO2 98%(RA)、顔面やや黄色、軽度眼球黄染あり。心窩部に圧痛あり、Murphy(-)
【データ】WBC 4400、CRP 1.94、AST/ALT=173/70、ALP 425、LDH 284
画像はこちら
まず単純CTから見てみましょう。
総胆管に高吸収な結石を認めており、総胆管結石を疑う所見です。
CTでは胆嚢結石および総胆管結石が検出できないこともしばしばありますが、今回は高吸収でわかりやすいですね。
次にダイナミックCTの動脈相を見ると、肝臓全体がまだらに造影されていることが分かります。
このような所見は、急性肝炎や急性胆管炎で見られることがある所見です。
また、肝内胆管の拡張を認めていることがわかります。
今回は総胆管結石がありますので、それが原因で胆道が閉塞している可能性が示唆されます。
また平衡相の冠状断像を見てみましょう。
総胆管結石および総胆管の走行の様子がよく分かります。
総胆管は直径12mm大と軽度拡張をしており、また総胆管壁が肥厚し、造影効果を認めていることが分かります。
さらに、肝左葉にも肝内胆管の拡張を認めています。
身体所見・採血結果に加えて、これらの画像所見から、総胆管結石および急性胆管炎と診断されました。
診断:急性胆管炎・総胆管結石
※緊急ERCPが施行されました。
その他所見:とくになし。
【新腹部救急】症例26の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
今日もありがとうございます。
COだと総胆管の肥厚や造影効果の増強がわかりやすいですね。
今回の総胆管結石はリング状に見えたので混成石でしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>COだと総胆管の肥厚や造影効果の増強がわかりやすいですね。
COとは?・・・・と一瞬悩ましたがcoronal(冠状断像)のことですね。
総胆管の壁肥厚や造影効果は確かに冠状断像がわかりやすいですね。
>今回の総胆管結石はリング状に見えたので混成石でしょうか?
混成石とは、コレステロール石あるいは混合石をカルシウム塩が包み込んだものなので、辺縁がCTでリング状に高吸収に見える。ものなので、今回は違いますね。
カルシウムが中心にあるので、色素胆石でしょうか。
急性胆管炎と記載するかどうか…迷いました。今後、診断基準を参考にしていと思います。
アウトプットありがとうございます。
>急性胆管炎と記載するかどうか…迷いました。今後、診断基準を参考にしていと思います。
そうですね。とくに単純CTだけですと総胆管結石があり、肝内胆管が開いているので閉塞性黄疸はありそうだ。というところまでしか言えません。
ただ今回は造影CTで総胆管に壁肥厚があり、早期相で肝にまだらな造影効果を認めている点からも、急性胆管炎の可能性は記載したいですね。
もちろん、急性胆管炎→ダイナミックCTでこれらの所見が必ず見られる。というわけではなく、症状や身体所見、採血結果などから総合的に判断する必要がありますが。ですので、診断基準が重要ですね。
今回は総胆管結石はあまり見ないくらいキラッとしてわかりやすかったです。腸管の肥厚はかなり提示していただいたのでだいぶ把握できるようになりましたが、胆管はどのくらいから画像上で炎症と判断できるか自分自身まだまだだと思います。反復症例期待しています!ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>今回は総胆管結石はあまり見ないくらいキラッとしてわかりやすかったです。
そうですね。カルシウム成分が多いものはわかりやすいですね。
CTでは見えない総胆管結石もあるので、CTで見えない→総胆管結石はない!とは全く言えないことに注意が必要でしたね。
>胆管はどのくらいから画像上で炎症と判断できるか自分自身まだまだだと思います。
通常胆管壁は見えないくらいが正常ですので、今回のように壁を指摘できる時点で肥厚があると考えていただいて結構です。
冠状断像が全体像が見えてわかりやすいですね。
胆嚢の腫大、総胆管結石から
勝手に脂肪織の濃度上昇もあるかな?
として
急性胆嚢炎だと思ってしまいました。
胆管の拡張所見、早期相での肝臓のまだらな染まりなどは
急性胆管炎を疑う所見なのですね。
覚えておきます。
ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>胆嚢の腫大、総胆管結石から
勝手に脂肪織の濃度上昇もあるかな?
として
急性胆嚢炎だと思ってしまいました。
胆嚢炎を伴っている可能性はありますね。
>胆管の拡張所見、早期相での肝臓のまだらな染まりなどは
急性胆管炎を疑う所見なのですね。
覚えておきます。
是非覚えておいてください。
今回は胆管炎にしては画像所見が多く、まだやりやすかったです。石も見えず、拡張も壁肥厚も肝内変化も微妙だけど胆管炎だったみたいな症例もよく出会う気がして、かといって毎回それを有意とすると拾い過ぎな気もして。
臨床も加味して、胸を張ってやれることまではやりたいですね。
アウトプットありがとうございます。
>今回は胆管炎にしては画像所見が多く、まだやりやすかったです。
そうですね。そのような症例を探していますので(^_^;)
>石も見えず、拡張も壁肥厚も肝内変化も微妙だけど胆管炎だったみたいな症例もよく出会う気がして、かといって毎回それを有意とすると拾い過ぎな気もして。
そうですね。画像上は胆管炎を疑う所見は認めないけど胆管炎と診断されることはよくありますので、腎盂腎炎みたいに画像出ないから否定は決してできないという疾患ですね。
これだけ結石がわかりやすいと安心です.
先生のように一つ一つの所見を拾いながら,納得して診断に至るのには至りませんが,まず見落とさないようにしていこうと思います.
アウトプットありがとうございます。
胆管炎は救急画像診断の中でも、診断が難しいものに分類されますね。
特に胆管炎なのに画像上は異常がないということもしばしばあるので、今回のように所見が揃っていなくてもどれか一つでもないかチェックしていくことが重要ですね。
総胆菅結石による胆菅炎と胆嚢炎と考えました。
動画で胆嚢にも炎症が及んでいるという言葉がありましたが、胆嚢炎も併発しているとかんがえて良いのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように胆嚢炎を併発していると考えて良いと思います。