【新腹部救急】症例24
【症例】30歳代男性
【主訴】腹痛、発熱
【現病歴】1週間前から発熱、腹痛あり受診。
【既往歴】慢性腎不全、アルコール性肝障害
【データ】WBC 16600、CRP 22.0
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肝S8に分葉状の低吸収腫瘤を認めています。
早期相では、内から低吸収域(膿瘍腔)→高吸収(膿瘍壁)→やや低吸収(反応性浮腫)を示しています。
これはdouble target signと呼ばれ、肝膿瘍を示唆する所見です。
さらにその外側にはやや高吸収の造影効果(区域濃染)を認めています。
平衡相では内から低→やや高吸収の2層構造となっており、肝膿瘍で見られる所見です。
診断:肝膿瘍(S8)
※肝膿瘍と診断され、エコー・透視下に緊急ドレナージが施行されました。
※入院時の血液培養は陰性で、(抗生剤投与後の)膿瘍培養からは、Fusobacterium(嫌気性のグラム陰性菌)が検出され、細菌性肝膿瘍と診断されました。
その他所見:腎嚢胞あり。
【新腹部救急】症例24の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
肝膿瘍と転移性肝腫瘍の区別に迷う場合があります。転移性肝腫瘍の場合辺縁部が平行そうでじわっと染まる印象(染まる範囲が壊死部分の外側で転移性肝腫瘍の方が大きい)があるのですが、今回の関連記事に肝膿瘍も中心性の濃染がある場合があると記載されており、アドバイスお願いいたします。
アウトプットありがとうございます。
>肝膿瘍と転移性肝腫瘍の区別に迷う場合
肝膿瘍の初期では、点状に造影されるだけのこともありますので、画像だけでは鑑別困難な場合もあります。
炎症反応の有無や原発巣があるのかなどと併せて総合的に判断します。
転移性肝腫瘍も原発によっていろんなパターンがありますね。
「膿瘍腔が造影されない」という所見を重視しています。淡くても、内部に造影効果を認めると腫瘍性病変を考えたいです。
※ NHさんのコメントとほぼ同時に提出したので、関連のあるコメントというわけではありまん。紛らわしくてなって、すいません…(^^;)
アウトプットありがとうございます。
そうですね。2分差でした(^_^;)
>「膿瘍腔が造影されない」という所見を重視しています。淡くても、内部に造影効果を認めると腫瘍性病変を考えたいです。
そうですね。膿瘍の場合は液体ですので、造影されません。
CTでわかりにくい場合はエコーや場合によってはMRIも有用ですね。
膿瘍腔はDWI高信号、ADC信号低下となりますね。腫瘍によっては同じパターンのものもありますが。
ケースによっては腫瘍と膿瘍で紛らわしいことはありそうですね。丁寧に拾って画像から考察するのは必須だとして、一方で画像診断に頼りすぎず総合的に判断すると割り切ることも大事なのですね。
そうですね。特に小さなものは造影CTでもどちらなのかわからないこともあります。
これだけ大きいと見落とすことはないですが、みなさんおっしゃる通り鑑別には困りそうです。
当然治療に反応したらとか臨床的に判断することが多いのでしょうが
アウトプットありがとうございます。
>当然治療に反応したらとか臨床的に判断することが多いのでしょうが
今回は典型的な肝膿瘍です。
アメーバなのかという問題はありますが。
まずは引っかけていただき、(できたら)膿瘍疑いで消化器内科にコンサルトですね。
脳外科医としては。
駆け出し救急医としては肝臓の領域区分けまでまだ自身をもってできません。
もちろん「S8」とビシッと言えたほうがいいのでしょうが、コツはありますでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
だいぶ前に作った動画で恐縮ですが、私はこれで覚えています。
わかりやすいです!ありがとうございます!
S56とS78を分けるだいたいの高さの目安みたいなものってあるのでしょうか。
>S56とS78を分けるだいたいの高さの目安みたいなものってあるのでしょうか。
門脈を追うということになりますが実際は両者の正確な境目は難しいです。