【新腹部救急】症例22
【症例】10歳代女性
【主訴】腹痛
【現病歴】3日前の昼頃から心窩部痛あり、2日前には痛みが右に移動し、嘔気も出現。昨日より38.8℃の発熱出現し、近医受診した。胃薬を処方された。症状改善しないため当院受診。
【既往歴】なし
【身体所見】BT 38.0℃、P 98bpm、BP 120/81mmHg、腹部:右下腹部圧痛あり、反跳痛あり。
【データ】WBC 10700、CRP 11.44
画像はこちら
ややわかりにくいですが、回腸末端に層構造を保った局所的な壁肥厚を認めています。
冠状断像においても同様で、壁肥厚を認めているのは回腸末端だけで、盲腸や上行結腸には認めていません。
盲腸はやや正中に落ち込んでいる様子が分かります。また虫垂は今回構造そのものがはっきりしません。
回盲部や回結腸動静脈沿いに多数のやや目立つリンパ節を認めています。
- 壁肥厚は回腸末端のみ
- 回盲部にリンパ節腫大あり
- 虫垂ははっきりしない
- 盲腸や上行結腸に壁肥厚はない
と言った所見から、回腸末端炎と診断することができます。
診断:回腸末端炎(腸間膜リンパ節炎)
※保存的に加療されました。
【新腹部救急】症例22の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
横断像と冠状断を確認しながら虫垂の同定を試みましたが…「はっきりしない」ということで良かったんですね(^^;)
ただ、虫垂炎は否定的かなと思いますた。
アウトプットありがとうございます。
>横断像と冠状断を確認しながら虫垂の同定を試みましたが…「はっきりしない」ということで良かったんですね(^^;)
そうなんです(^_^;)
回腸末端炎の症例を探していてこの症例の採用を最後まで悩んだのはおっしゃるように虫垂がはっきりしないためです。
「虫垂は同定でき、腫大がない。回腸末端が肥厚しているのでこちらが原因」と持っていきたいためですね。
冠状断像の14/52で盲腸に接する小さなairがもしかしたら虫垂かもしれませんね。
ただいずれにせよおっしゃるように虫垂は少なくとも腫大していませんので、否定的です。
リンパ節腫大と、回腸末端の以上には気づいたのですが、膿瘍があるのではないかと書いてしまいました。被包化されているのかと言われれば微妙だと思ったのですが、何かないといけないと思ってしまい心理的に所見を足してしまいました。回腸末端炎というのも回盲部リンパ節炎もこういうのがあるというのを知っておかないと疑義的になってしまいます。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
>リンパ節腫大と、回腸末端の以上には気づいたのですが、膿瘍があるのではないかと書いてしまいました。
肥厚した回腸末端よりも口側の回腸はやや拡張をしていて、液体が溜まって粘膜の造影効果を認めていますので、おっしゃるように一見膿瘍のようにも見えますね。膿瘍の場合は腸管と連続性がないことを確認しないといけなくて、今回は連続性があるので、膿瘍は否定的ですね。
回腸末端炎は小児で多いので、虫垂が見つかりにくい時に苦慮することが多いです。今回はリンパ節腫大もこの場所とはいえ目立ち、指摘することができました^^
アウトプットありがとうございます。
>回腸末端炎は小児で多いので、虫垂が見つかりにくい時に苦慮することが多いです。
そうですね。成人の場合は頻度はそれほど多くないですね。
今回のように虫垂がはっきりしない場合は悩ましいこともあるかもしれませんが、虫垂がはっきりしない=少なくとも腫大はないと言えますね。
なんとなく腫れぼったいとは感じましたが断言はできませんでした。反省です。
アウトプットありがとうございます。
実際かなり難易度は高いです。腫れぼったいと感じられたことは素晴らしいです!
虫垂ははっきりしないような…でも他に鑑別も浮かばないし…
病歴は虫垂炎で、骨盤内で腫れてる構造物はあるし…虫垂炎!としてしまいました。
リンパ節の腫大には全然気づけず、回盲部リンパ節炎はもはや鑑別から抜けていたので非常に良い復習になりました。
旧腹部救急でも出てきたはずなのに、やっぱり分かった気になってるけど使えてない知識がたくさんあるなと感じました。
今回のも、以前のも併せて復習しようと思います。
アウトプットありがとうございます。
ちょっと今回は難しかったかもしれませんね。
>回盲部リンパ節炎はもはや鑑別から抜けていたので非常に良い復習になりました。
よかったです。
>旧腹部救急でも出てきたはずなのに、やっぱり分かった気になってるけど使えてない知識がたくさんあるなと感じました。
この疾患は虫垂炎のように日常臨床でよく遭遇するものではないので探すのに苦戦しました。
そして、旧腹部救急でも出てきた疾患ではありますが、虫垂を同定できたと言う点で旧腹部救急の方が画像としては綺麗でしたね。
旧腹部救急症例63
https://imaging-diagnosis.com/view/NMKZTcLF
単純CTでは少し盲腸が長いのかな?と思い虫垂も探しましたが、痩せている方で内臓脂肪が少なく、同定できませんでした…
今の、職場では単純CTしか撮らないので、こういう症例が来たら、何もありません。
ど診察医に伝えそうです…
造影CTでみると、回盲部、盲腸あたりが何かおかしいけど何がおかしいのかよくわ分からず、虫垂炎穿孔、膿瘍形成と考えてしまいました。
難しかったです。
解答を見ると画像に色をつけてくだっているので、とても
わかりやすいです!
こういう症例もあるのだと画像を目に焼き付けておく必要ありますね…
まだまだわからない症例があり、凹みますが、
とても勉強になります。
今回と関係ない質問なのですが
脾臓が少し大きい感じがするのですが10代だと普通でしょうか?
すみません、投稿する場所を間違えてしまいました。
大丈夫です。
アウトプットありがとうございます。
今回は少し難しい症例でしたね。
>今の、職場では単純CTしか撮らないので、こういう症例が来たら、何もありません。ど診察医に伝えそうです…
単純CTでの指摘は難しいですね。
・回盲部のリンパ節が目立つこと(若い方の場合、非特異的なことが多いですが)
・虫垂炎はなさそうであること
に気づければ十分だと考えます。
>造影CTでみると、回盲部、盲腸あたりが何かおかしいけど何がおかしいのかよくわ分からず、虫垂炎穿孔、膿瘍形成と考えてしまいました。
造影CTでもきちんと診断するのは少し難しい症例でした。
膿瘍ぽく見えるかも知れませんがよく見ると腸管と連続性があることに気づきたいですね。
>脾臓が少し大きい感じがするのですが10代だと普通でしょうか?
そうですね。正常範囲です。若年者の肝臓、脾臓は大きいことがありますので、安易に肝腫大、脾腫大と取らないことが大事ですね。