【新腹部救急】症例13
【症例】30歳代女性
【主訴】腹痛、嘔吐
【現病歴】昨日夕方から腹痛を自覚。以降も症状持続して食物残渣様の嘔吐が数回出現した。本日も症状あり、救急外来受診。
【既往歴】子宮頚癌(10年前手術)、穿孔性虫垂炎(1年半前に手術)
【身体所見】意識清明、腹部:平坦軟、全体的に圧痛あり、特に臍部での圧痛が最強点、腸蠕動音:微弱
【データ】WBC 21000、CRP 0.14
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小腸の拡張・液貯留・ニボー像を認めており、腸閉塞を疑う所見です。
では閉塞機転はどこでしょうか?
コロコロとスクロールしていると、臍部直下の正中部〜やや右側の腸管には内部にプツプツとairを認めており、糞便様構造を認めていることに気づきます。
これをsmall bowel feces signと言い、その先(肛門側)に閉塞機転があることを示唆するサインと言われています。
今回はどうでしょうか?
やはり、その先で腸管の口径差を認めており、同部が閉塞機転となっていることが推測されます。
手術歴もあることから、同部での癒着による腸閉塞が疑われます。
診断:癒着による小腸(機械性単純性)腸閉塞
※腸管壁の造影効果不良など、絞扼性腸閉塞を疑うような所見はみとめません。絶飲食、輸液、抗生剤による保存的加療で、徐々に改善あり、食事再開以降も経過良好であり、入院11日目に退院となっています。
腸閉塞・イレウスの分類は以下の様になっています。
今回は、癒着によるもので、血流障害は認めませんので、腸閉塞の中でも機械性、単純性となります。
その他所見:
- 両側豊胸術後。
- 右卵巣のう腫あり。機能性嚢胞疑い。
【新腹部救急】症例13の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
閉塞機転は分かったのですが、
原因を術後で索状物ができて
腸がはまり込んでいると思い、
内ヘルニアと、書いてしまいました。
術後で、癒着を疑うと書けなかったのと
癒着→単純性、
内ヘルニア→複雑性
の分類もあいまいだったので
反省しています。
アウトプットありがとうございます。
>内ヘルニアと、書いてしまいました。
内ヘルニアの場合は、closed loopを形成します。
今回はclosed loopは認めません。
small bowel feces signに気づいて、その先に閉塞機転があることに気づきたい症例ですね。
腸管の造影効果の確認も大切ですね。ついつい忘れがちになってしまします…。
アウトプットありがとうございます。
造影効果はしばしば難しいことが多いですね。腸管の支配血管に着目して比較してみましょう。
small bowel faces signの教科書のような症例ですね。
アウトプットありがとうございます。
確かに言われてみればそうですね。ここに着目すれば閉塞機転同定がすぐですね!
愚直に腸管を追って閉塞部位にたどり着きなんとか正解できました.
small bowel feces signを意識すればもっと早く正解できたのでしょうが・・・
アウトプットありがとうございます。
>愚直に腸管を追って閉塞部位にたどり着きなんとか正解できました.
愚直に追うということも現場では非常に重要です。
ただなかなか時間が取れない場合は、以前紹介させていただいたこの方法も思い出しましょう。
passは、keitouです。
今日もありがとうございます。
オペ歴からも癒着性腸閉塞を第一に考えましたが腹壁直下に好発している気がします。骨盤腔内等でも生じやすいのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
癒着性腸閉塞は腹壁直下以外でもいろんな部位で見られます。
今回は小腸内糞便サインを手がかりにしてその先を追っていくと腹壁にくっついている腸管を認め、手術歴ありから、
癒着かな?と想像することが、できました。
何回かやっていると、閉塞機転も早く見つけられる気がして嬉しいです、ありがとうございます。この講座の凄さを、改めて感じる症例でした。
その他所見なのですが、
胆嚢が大きい感じか、したのですが、このくらいは正常でしょうか?
周囲液体貯留、脂肪織の濃度上昇なとなさそうなので
胆嚢は大きいけど正常なのかなと疑問に思います…
アウトプットありがとうございます。
>今回は小腸内糞便サインを手がかりにしてその先を追っていくと腹壁にくっついている腸管を認め、手術歴ありから、癒着かな?と想像することが、できました。
すばらしいです。小腸内糞便サインはしばしば有力ですね。
>胆嚢が大きい感じか、したのですが、このくらいは正常でしょうか?
胆嚢も個人差がかなりあります。かなり大きく胆のう炎だろうと思って過去画像を見ると毎回同じくらいの大きさの方もしばしばおられます。
今回はサイズ自体はそれほど大きくありませんし、壁肥厚、おっしゃるように周囲の脂肪織濃度上昇を認めていませんが、緊満感はあります。
緊満感のみ認める胆のう炎もありますが、臨床症状や過去画像との比較が重要となります。
いつも大変勉強になっております。今回はsmall bowel feces signを思い出せたのでその先に虚脱した小腸を発見することができました。以前見ていると初見でも印象が違いますね。それがこの講座の強みでもあります。
造影効果については今回あまり意識がいかなかったのでまだまだですが。
別件ですが、今回の患者さんの体の周りの金属物はボタンでしょうか?たくさんついていても、アーチファクトを引いていてもそれほど気にはならないものでしょうか。撮影する側としては気になるところです。
また、今回念のため大腸も追ってみたところ、上行結腸から盲腸にも拡張と液貯留を認めるような気がしますが、これは気のせいでしょうか。ご確認をお願いいたします。
アウトプットありがとうございます。
>今回はsmall bowel feces signを思い出せたのでその先に虚脱した小腸を発見することができました。
閉塞機転を無事見つけられたようでよかったです。
>別件ですが、今回の患者さんの体の周りの金属物はボタンでしょうか?たくさんついていても、アーチファクトを引いていてもそれほど気にはならないものでしょうか。撮影する側としては気になるところです。
確かに言われてみればたくさんあり、ボタンか、服の飾りなのでしょうね・・・。
診断に重要な部位にはアーチファクトはひいていませんので個人的には気になりませんでしたが、見たいところにアーチファクトがあればこの衣類を着たままの撮影は残念ですね。
>今回念のため大腸も追ってみたところ、上行結腸から盲腸にも拡張と液貯留を認めるような気がしますが、これは気のせいでしょうか。ご確認をお願いいたします。
そうですね。これくらいであれば特に記載もしないですかね。
結腸に全体的に液貯留を認める場合は下痢症を反映していることがありますね。