【胸部】TIPS症例53
【症例】50歳代女性
【主訴】右乳房のしこり
【現病歴】半年前に右乳房のしこりに気づき、増大傾向を認めたため、来院。
【既往歴】脂質異常症、高血圧症
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右の乳腺の乳頭直下(E領域)〜C/D領域に境界不明瞭な2.5cm×2cm大の造影効果を有する腫瘤影を認めています。
乳癌を疑う所見です。
乳頭と連続しているようにもみえ、浸潤している可能性あり。
よく見ると両側乳腺には造影効果を有する小結節を多数認めており、背景乳腺に乳腺症があることが疑われます。
また右の腋窩にはリンパ節を複数認めており、サイズ(短径)は1cmを超えており、転移が疑われます。
ちょっと細かい話になりますが、腋窩リンパ節は、レベルⅠ、レベルⅡ、レベルⅢと小胸筋を目安に分けられます。
- Level Ⅰ:小胸筋外側縁より外側
- Level Ⅱ:小胸筋背側および胸筋間
- Level Ⅲ:小胸筋内側縁より内側
小胸筋よりも外側のリンパ節はレベルⅠであり、今回はこれに相当します。
診断:右乳癌+腋窩リンパ節(レベルⅠ)転移疑い
※右乳腺腫瘍に肺生検が施行され、乳癌(浸潤性乳管癌:invasive ductal carcinoma,solid tubular)と診断されました。
※今回は症状もあり、サイズも大きくわかりやすいですが、無症状でたまたま見つかる乳癌も割とありますので注意しましょう。ただし、一般に造影CTでないと指摘できないことが多いです。
【胸部】TIPS症例53の動画解説
乳癌取り扱い規約18版に基づいたリンパ節
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
乳腺や肺はリンパ節の領域が比較的覚えやすくてよいですね。消化管のものは覚えられないですが。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。乳腺は特にわかりやすいですね。肺もわかりやすい部位とわかりにくい部位がありますね。
ただし、原発がどこなのかによって同じリンパ節でも名前が変わったりするので注意が必要ですね。(そこまで区別している人は少ないのかもしれませんが)
両側乳腺内びまん性の結節状の造影効果は、乳腺炎が疑われるのですね。月経周期による造影効果(BPE)と乳腺炎の鑑別というのはできるのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
非常に悩ましい質問ですね(^_^;)
乳腺炎と記載されていますが、乳腺症ですね。
で、そもそも乳腺症というのは、いろんなものを含んだ曖昧な表現ですね。
『両側びまん性の濃染は、安易に「乳腺症の変化」と呼ばれることがあるが、実際には非常に曖昧な表現である。乳腺症自体が、概念、養護、病態、治療の必要性などの面でさまざまな問題を残している用語である。臨床上、病理像、画像との整合性がないことも事実であり、さらに超音波の形態的な「乳腺症」と造影MRIでの「乳腺症」も異なった病態を観察している。「乳腺症もしくは正常乳腺のバリエーション」として報告書に記載している。』
(乳線MRI 実践ガイド 撮影法・読影基準・治療 P152)
と記載がありました。
ですので、正常乳腺のバリエーションとMRI(やCT)のみでは鑑別ができないということですね。
なおBPEは造影MRIで使われる用語ですね。
すいません、(乳腺炎→)乳腺症です…。詳細な解答ありがとうございました。乳腺症の意味合いが理解できました。なお、BPEはMRIでの用語なのですね、混同して記憶しておりました。
今回ちょっと調べてみて私も勉強になりました。ありがとうございます。
リンパ節転移のレベルのことは知りませんでしたが、レベル Ⅰ の部分しか確認していませんでした。
進行度的にも大事な要素ですのでしっかりと段階的に観察していきます。
アウトプットありがとうございます。
>レベル Ⅰ の部分しか確認していませんでした。
レベルⅡ、Ⅲのところにあれば多分気づくとは思います。目立つのはレベルⅠかもしれませんが。
その点胸骨傍リンパ節は、わかりにくくて見落としがちなので要注意ですね。
リンパ節は読影が苦手ですが、こうして存在する場所などを勉強すれば見つけやすいのですね。
背景知識として必要ですね。
勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
>リンパ節は読影が苦手ですが、こうして存在する場所などを勉強すれば見つけやすい
そうですね。
注意すべき点として、今回のケースはあくまで乳癌のリンパ節転移という話になります。
いつも勉強になる症例をありがとうございます。
いくつかコメントさせて頂きたいのですが、
乳癌の規約では
鎖骨下リンパ節と腋窩level Ⅲリンパ節は同義で区別して呼び分けません。
また取り扱い規約18版から、様々な名称変更がありまして
乳房〇〇領域→〇〇区域
傍胸骨リンパ節→内胸リンパ節
と記載が変更されました。
なので、乳癌の所属ハンパ節は、
腋窩、内胸、鎖骨上の3領域になります。
細かい指摘で申し訳ありません。
アウトプットありがとうございます。
>鎖骨下リンパ節と腋窩level Ⅲリンパ節は同義で区別して呼び分けません。
こちらにも記載がありますね。ありがとうございます。
https://ctr-info.ncc.go.jp/?action=common_download_main&upload_id=2322
>また取り扱い規約18版から、様々な名称変更がありまして
乳房〇〇領域→〇〇区域
傍胸骨リンパ節→内胸リンパ節
と記載が変更されました。
なので、乳癌の所属ハンパ節は、
腋窩、内胸、鎖骨上の3領域になります。
そうなんですね。知りませんでした(^_^;)
普段乳癌の術前や術後の読影もしているのに・・・・アップデートできてませんでした。
早速、今Amazonで取り扱い規約18版を購入しました。
ありがとうございます。
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/training/wp-content/uploads/2020/08/kiyaku18.png
今回は乳房のしこりという主訴でしたが、偶然の乳腺の腫瘍にも気付いていきたいです。
ところで、左下葉に縦隔に達する線状陰影があります(41~46/120。同じレベルで右にも軽度あり。
かなりはっきりした線状陰影ですが、これは何でしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>ところで、左下葉に縦隔に達する線状陰影があります(41~46/120。同じレベルで右にも軽度あり。かなりはっきりした線状陰影ですが、これは何でしょうか。
下肺靱帯と思われます。
この2日間適当な文献などを探しているのですが、見つかりません(^_^;)
いろいろ調べていただいて、ありがとうございます。
解剖の本で調べてみました。
肺間膜と同じでしょうか。
同じです。
こちらに記載していました。
関連
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/20461
乳癌の所属リンパ節の説明で、鎖骨上リンパ節と鎖骨下リンパ節の図がありました。
鎖骨上リンパ節は鎖骨下(背側)から鎖骨上窩に出てくるものでしょうから、横断面で鎖骨の下(背側)でも
わかりますが、鎖骨下リンパ節が鎖骨より上(腹側)にあるのが理解できません。
鎖骨の下(背側)にないとおかしい気がしますが、どうでしょうか。
もしかしたら、鎖骨下リンパ節は鎖骨下動脈の下(足側?背側?)のことでしょうか。
いろいろ考えてみたり、調べてみてもわからず、質問させていただきました。
アウトプットありがとうございます。
ご自身の鎖骨を触れていただき、そこから手を下にずらしていくと手は腹側に移動しますよね。
その辺りが鎖骨下です。
もし研修医の先生などに大人気の「CT読影レポート、この画像どう書く?」という書籍を持っておられたら(持っておられなかったら立ち読みでも結構です(^_^;))、そのP224をご覧ください。見れば納得していただけるはずです。
「CT読影レポート、この画像どう書く?」を持っていました!!
鎖骨の走行が胸骨付着の内側から上方へ、しかも背側に沈んでいく、という
走行があり、ああ、そうか。と納得しスッキリしました。
ありがとうございました。